間話:堀内翔馬的ラブコメのすゝめ
ラブコメというものは、現実世界、つまりはこの三次元において、恋人がいる者、いない者の関係なしに、俗に言う「青春」を提供してくれる。「青春」は、この際「理想的生活」と言い換えてもよい。
現実的に、これは主観ではなく、客観的に見た現実的で、それではあり得ないシチュエーションや、設定で織りなされる、主人公と周囲の人間の絡みは、孤独に生きる俺からすると、羨ましい限りである。
俺が河内原学園に入った当初は、こういった青春モノの類はまるで受け付けなかったが、今となっては、精神安定剤の役割を果たしている。可愛い女の子こそ、世界を救うのだ。
決して俺は、大げさなことを言っているわけではない。奇譚ない表現を以ってして、そう言うのである。
ラブコメに限らず、大体の、多種多様な、漫画やライトノベル、アニメには"ヒロイン"が登場するわけだが、これまた多種多様である。
その意外性というか、非現実性(この場合は容姿や性格)も、その作品においてヒロインの人気を集めるための、一つのポイントである。
昨今の作品では、俺好みのキャラクターが多数登場していて、まったく、嬉しい限りである。
話が脱線してしまった。
この際、もう少し脱線させてもらおう。
脱線した先に、新たな線路があるかもしれないし。
「脱線」 といえば、俺は真っ先に、トロッコ問題の新たな答えを思い出す。去年にTwitterで有名になった、あれである。
それは、電車を脱線させるというものなのだが、果たして、それは正解なのだろうか。
電車には当然、運転手がいるわけである。
仮に乗客がいなかったとしても、だ。
運転手が飛び降りられるスピードで電車が走っていたら、そもそもこの問題は成り立たない。流石に、誰しも轢かれる前に気づいて逃げられるだろう。
どうしようもない状況になったら、犠牲を払うのは仕方がない。
そういうことだとして、俺はこの考えを咀嚼して、飲み込むこととする。
飲み込む。
飲み込むといえば、ラブコメを読んだり見たりしていて、舌の根のほうが、「ギュワーン」となることがあるのは、俺だけだろうか。その時はよく、つばを飲み込む。
ほら、新しい線路が見つかった。
せっかく見つかった線路だが、話を戻そう。
体感としてはずっと前に、「ラブコメは精神安定剤だ」とかなんだとか言ったと思うが、例外が存在する。
「主人公とヒロインが、作品の最初もしくは途中で付き合い始めるパターン」だ。
恋人がいない悲しい男の僻みだ、などと言われるかもしれないし、それが良い、それが見たい、という人もいるかもしれない。いや、きっといる。
確かに俺は、今まで誰かと交際に至ったことはない。
つまりは片思いより先のことを知らないわけだ。
人間は未知を恐れるとは言うものの、これは僻みからくるものなのだろうか。
数日前に、朝山と霧嶋のリアル青春ラブコメを目撃してしまった俺だが、あれほど気分を害されたことは、入学以来で始めてだった。
もっとも、都合の悪い記憶は消えてしまうから、もっとひどいものがあったかもしれないが。
とりあえずは最悪な思い出の一つということにしておく。
ラブコメの件のパターンも、その感情に起因する。
うん、僻みだ。
うーん、否定しようがない、僻みだ。
俺の人生も、ここからラブコメ展開に入っていくわけだが、それも、他人から僻まれるようになるんだろうか。
もしそうなら、誤解されたくないな。
そっか。
ラブコメの主人公たちも、色々抱えてることが多いもんな。
所詮、人は他人の一部分しか見えない。氷山の一角しか、見えない。
その部分を着飾ることで、人は自分磨きをする。研磨して、研磨して研磨して、自分を作る。
勿論、その過程は簡単じゃない。
他者の介在で、研磨が促進されたり、台無しにされたりする。
その過程を、俺の人生よりはマシに映るように、あまりひどすぎるものにはならないように、丁寧に丁寧に錬成してできたものが、ラブコメなのではないだろうか。
ラブコメは、主人公だけでは作れない。
ヒロイン、友人、先生、家族等、様々な人脈を以て作り上げる。
それはもう、人生だ。
俺は、その人生を傍観する独りに過ぎないが、自らの内に秘めたる思いと重ね、主人公と自分を重ね、人生を重ねていくのだ。
思ったより、長くなってしまった。下手をすれば本編より長い。
何かいい感じのまとめの言葉を……。
思いつかないな……。
拓人なら「デュフフ我が同士よ『萌え』を世界共通語にするが為日々邁進して行きましょうぞ!」だとかいうのかな。
まあ取り敢えず、俺の言葉としては、
ラブコメ最高!!!!!!!!
とでも言って、締めくくろう。
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