第14話 缶詰泥棒

田嶋所長から缶詰泥棒の発見経緯を聞くと、滝山さんはトマト泥棒もいると告げた。

それで興奮した人間の数を考えると、私達に残された時間は多くない。ここで決めたことに協力してくれる人数も少ない。


缶詰泥棒とトマト泥棒の発生時期がずれていれば各々の勘違いの可能性もあったが、話を聞けば2つの事件の犯人は恐らく同じだろう。なんなら2人以上いてくれてもいいんだが、1人だった場合の方が状況が悪いので1人として考える。


誰なのか確定させるのは危険だ。確定させたら行動を読んで誰かが同化させる恐れがある。


田嶋所長の推測では缶切りを使えないので中高年の可能性は低い。トマト泥棒の手際の良さと素早さから10代〜20代くらいだろう。


彼なのか彼女なのか、何人いるのか。

ただ、彼らはコミニュティを出て廃墟で生きていくスキルはないのだろう。自動車の運転も恐らくできないからここに残って隠れている。


今の我々にできることは、缶詰泥棒を探さず、徹底的に無視して、彼らが盗みやすい環境を作り、未だに残る生きていく知恵を、遠回しに授けることなのだ。


前途多難ではある。一緒に組んでいた霧山さんは猟師でこういうサバイバルは得意だったんだが、今は町で他の奴らと歩いてる。

私も最近、織田根川家の庭と浄水場の駐車場を混同する。時間がない。

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