第9話 非解剖学研究
序論
21世紀半ばアフリカ発の流行性疾患が全世界に拡がった。臨床症状は多臓器不全による心肺停止で、致命率は100%、潜伏期間は推定で最長でも5分。遺体は広範な有機物を摂食し・非特異的に代謝する。
この疾患は、WHO等当局による正式な名前が付く前に社会が崩壊したため、本試験を行った九頭類浄水場コミニュティでの呼称として、以下では疾患名を人形病(にんぎょうびょう)、罹患者の遺体を病人形(やみにんぎょう)と呼称する。
病人形には感染性が残留しており、罹患以前の罹患者の行動や精神活動を限定的に模倣する。
本記録の作成は罹患した遺体の模倣反応により行われており、著しい場合は医学調査まで模倣できることがわかる。
しかし、多くの場合において、病人形の認知機能は急激に、かつ不可逆に低下し、社会生活を送れる水準をはるかに下回って安定する。
病人形になった遺体の認知機能低下を抑止する方法、または伝染の予防法が開発されるまで、生存者への伝染を抑止するために危険な遺体を安全に処理する方法の確立が急務である。
そこで、本調査は予備研究として病人形の腕を切開し解剖学的所見を得ることとする。
材料
油壺権太
実施者
油壺権太
結果
既存の器具による切開不能。採血不能。非破壊検査用設備なし。
以上
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