第8話 猟師

あれは海外ドラマで、ゾンビサバイバルの類だ。髭のイケメンがボウガンで狩りをしてた。うさぎだったかな。


こうなっては思い出しても確認のしようがない。日本ではボウガンでの狩猟は禁止されてるんでそれが描写として正しかったかわからない。なんせやったことないからな。


人間、食っていくには農業をするか、狩猟をするかだ。原始人の頃から変わらない。狩猟は山でやるが、海なら漁業だな。あのドラマだと、飯のほとんどが拾ってきた缶詰か、獲ってきたうさぎだか鳥だった。人間食ってる奴らもいたな。気色悪い。魚釣りしてるシーンが無いあたりガイジンらしいや。


終末にサバイバルといえば狩猟だって、ドラマじゃそうなんだが、現実というのはナントカより厳しい。山が無くなってんじゃないか。あれが起きてるとき、俺は害獣駆除が副業で、猪を狩りに山へ入ってた。飼ってた猟犬も、猪もいつのまにかいなくなってたよ。見かけない連中が徒歩で山に入ってって、重機もないのに、翌日になると禿山になってる。本業の製材所に戻ってみれば木が食い尽くされてんじゃねえか。俺にどこでなんの仕事しろっていうんだよ。


なんやかんやあって九頭類浄水場にたどり着いて、今は町だった場所に缶詰を拾いに行ってた。そうだな。行ってた、だ。


山の動物と違って、人間もどき共はこっちは当然、ショットガンもナイフも恐れない。なにせ意味がないからな。実際、タッチされたら終わりだってんで、死角から接近されたとき、心臓のあたり狙って5mくらいからズドンとヒグマ用の弾をぶっ放したがケロッとしてる。あの時はえらい目に遭わされた。山より町の方が恐ろしくなるとは思わなかったよな。


まあもうそんな日々も今日で終わりで、狩をやめさせられたかと思えば、とうとう人間までやめさせられた。缶詰ももういらねえと来てる。明日から何しようか。


霧山正一


名前を書いとけと。自分の名前を忘れるなんて馬鹿息子でもありえんよ。


ただ、まあ書くべきなのはわかるよ。俺、息子いたんだって、今書いて気がついたよ。

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