第5話 騙し合い

手品の種を見破られると「改竄者」は諦めたのか、血液サンプルは1つだけ、電子カルテは霧山と織田根川の日付だけ本日9月15日の検査結果になっていた。


一昨日、9月13日の記録をコピーしたのかと思ったが、9月14日のファイルを確認すると霧山と織田根川の記録だ。昨日の2人は車両整備で外に出ていない。こうなると9月13日の2人の記録が9月13日に作成された保証もないのではないか。さらに遡る。


9月12日、9月11日、9月10日。


3日遡ったところでもうそれ以上見たくなくなった。全部霧山と織田根川の、血球数まで同じ記録だった。


一体、血液検査と称して私は何人と接触した。そして私が接触した調達班は誰と接触したのか。今できることは隔離だが、誰が病人形か把握するより、生存者を探して隔離する方が早い。


だが、この血液検査において示されたように、人形の思考は私の認識を歪め、思い通りに操って目的を遂行させる。人間の私が生存者を探し出したら最後、人形の私が身体の制御を奪って生存者を同化させる可能性が高い。裏をかかなくては。この人形には意味がわからず、生存者にだけ汲み取れる情報で危機を知らせるのだ。

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