波乱②
翌日の22時。
早速テツヤから電話がかかってきた。
丁度、俺の部屋でアイと明日のデートプランについて作戦を練っていた時だった。
「誰からですか?」
俺は画面を見せると「あ、昨日の」と何故か嬉しそうにアイが顔を綻ばせる。
俺は躊躇いながらも通話ボタンを押す。
『あ、アニキ。夜分遅くにすみません。テツヤっす』
「あ、ども」
どう聞いても相手は子供なので、俺はどう接していいのかが分からない。
でも、中身はイタイオッサンかもしれないんだよなぁ。
『もう少し早く連絡出来たら良かったんですが、コイツのお袋が寝なくて‥』
「そう、なんだ。テツヤ、さん?は身体は大丈夫?」
『テツヤさんなんて、よしてくだせぇよ。テツヤって呼んでください』
口調に一貫性が無いやつ‥。
得体の知らない相手に距離を詰めるのは抵抗があるが、そうも言ってられない。
「じゃあ、遠慮なく。色々とこれからの事についても話したいんだけど」
『それは俺も思ってやした。ですが、ちょっとお待ちを。このキッズフォン、長く通話は出来ねぇらしくて。ご迷惑でなければ、明日会えませんかね?』
「明日‥そうだね、明日会おう」
「え!」とアイが驚きの声を上げる。
「ご主人様、明日は‥」
『そうですか。明日はお袋も一日仕事なんで、17時頃までなら行けやす』
「そしたら、朝集合しようか。場所は近くのコンビニにしようか。メモ取れる?」
『はい、少しお待ちを。コイツ、手が小さくて、筆を握るのも楽じゃねぇ』
言いながらも口調は優しい。
このテツヤ、アイと違って前世の記憶が所々あるんじゃないか?
俺は近くのコンビニの住所を教える。テツヤは『では、明日またこの場所で』と電話を切る。
「‥よし」
これで、何か進展があったらいいのだが。
「よしっ、じゃ無いですよ!酷いじゃないですか!私はどうなるんですか!」
取り乱しながら、俺の枕を手に持ちボフボフと叩いてくる。
その目は涙目だ。
「さっきも言ったろ?とにかく行くしかないって」
「その場で告白されたらどうするんですか!」
それは、俺も考えたくないけど。
「その時は、少し考えさせてって返事を先延ばしにするしかないな」
「そんなの、無理です!」
「どうして?」
「だって‥そんな‥」
言葉に詰まりながらモジモジと身体を揺らしている。
「ご主人様も付いてきてくださいよ~」
「馬鹿。そんなことして見つからったらどうなる?男一人で遊園地に遊びにきているイタイやつになるじゃないか」
「いいじゃないですか~。周りの評価なんてどうでも」
「無茶苦茶いうな。駄目なものは駄目!」
そういうと、アイは立ち上がって「ご主人様の分からずや!」と枕を顔に投げつけてきた。
勢いよく部屋を出て、「梅雨葉ちゃーん」と隣の妹の部屋に転がり込んでいく。
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