終わりと始まり⑩

「えぇ‥どうしたらいいんだよ」


一つ前の画面に戻り、ひょういこみゅにけーしょんと書かれているボタンを開くと、二つの名前が表示される。


ガイドにもあったアイとテツヤという名前とアイコン画像がある。


「これは—」


戸惑いつつもアイのアイコンをタップ。

大きく画像が表示される。


わぉ。


グレーのタートルネックのセーターを着ている女性。

首から下の画像なので顔は分からないが、とても強調的なモノがあるので、間違いなく女性だろう。

そのセーターは、胸元を見せるかのように大きく開いていた。


こ、これは。

童貞の俺には刺激が強すぎる!


俺は息遣い荒くそのままアイと書かれた名前を開く。


切り替わった画面は、コミュニケーションツールアプリLICEによく似ていた。チャット形式でやり取りができる作りとなっており、大きく違う点は通話機能がない事か。


物は試しだ。


『初めまして』と送ってみる。


数分経ったが、なんの反応もない。


時刻は深夜0時30分を過ぎている。


今度はテツヤの画面を開く。

テツヤのアイコンは、漢、と筆文字で書かれた力強い文字だった。


分からないけど、多分名前とアイコンからして男だよな。

同じようにテツヤにも『初めまして』と送るが何の変化もなかった。


ホーム画面に戻り、今度はひょういえーあいちゃっとを開く。


同じく、チャット形式でメッセージを送れるみたいだ。

なぜか全ての背景が黒だというのが気になるが。


『使い方が分かりません』と送ってみると、直ぐに返事が来た。


【possessionボタンを押して、アイかテツヤのどちらかを選択して下さい】と先程のガイドの内容が返ってくる。


言われるがまま、一つ前の画面に戻り、

possessionのボタンを押す。


アイとテツヤが左右に表示されるので、俺は迷わずアイを選んだ。


中心に四×三cmほどの枠があり、その下にはファイルをアップロードとあった。


タップすると、写真のアクセス許可が出てくるので『はい』を押すと俺の写真フォルダに飛んだ。


えーっと。‥‥あ。


そこで俺は気づく。


個人を写している写真がまるでない。


おかしいな。藍良の個人写真無かったか?


いや、でもそうだ。彼女でもないのにあるわけないだろ。

明日写真を撮らせてもらって——

と、そこまで考えた所で「いや、いやいやいや!」と首を横に振った。


「何考えてんだ。あくまでも遊びとして、暇つぶしだとしても駄目だろ」


俺とした事が、もう少しで黒歴史を作る所だった。

写真を撮らせて、なんてどんな理由で言えばいいのか。


全く馬鹿馬鹿しい。

よく分からない旧友の悪ふざけに付き合い過ぎたようだ。

でもまぁ、これであいつが満足したのなら、いいか。


俺はアプリを閉じ、そのまま就寝した。


---

--

-


数時間後、けたたましい音と振動で目が覚めた。


『ヴゥー、ヴゥー、エマージェンシー!!!エマージェンシー!!!ヴゥー、ヴゥー、プリーズヘルプハー!!!』


「ち、ちょ‥」


まだ覚醒しきっていない頭で鳴っているスマホを手に取り開く。


画面にはお知らせとして、上の方に何かが表示されている。

それをタップすると、憑依アプリが開かれ、アイという名前の画面に切り替わる。


音はピタッと止まり、代わりにメッセージが届いた。


『‥じ、ま、て』


という電波が届いていないかのように途切れ途切れのメッセージが届いていた。


時刻は朝の4時51分。


続けてメッセージが来る。


『‥し、ま、え、ア、と‥』


「こ、怖ーよ!!!」


目覚めて一分も経っていないのにも関わらず、大きな声が出た。


本当に、呪いのアプリじゃねーの、これ。


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