前のエピソード――終わりと始まり⑧

何度画面を見ても鴨居が消えたという内容は変わらない。

「何なんだよ」

アプリを閉じホーム画面に戻ると、先程インストールをした【憑】というアイコンのアプリが妙に目立っていた。

俺はそれをタップし起動させる。

一瞬画面が暗くなった後、テンテレーン！という明るいBGMが流れた。

画面が切り替わり真っ黒な画面に、ひょういあぷり、と何故か平仮名で記された文字が大きく表示される。

そのすぐ下に【すた〜と】という文字もあり、それが主張激しめに点滅を繰り返している。

丸文字系のポップなフォントと安っぽいBGMが簡素な作りのホーム画面をより際立たせていた。

すた〜とボタンをタップすると、また画面が切り替わる。

「‥なんだこれ」

その画面には四つのボタンがそれぞれ横並びになり点滅していた。

一つ目は、【ひょういがいど】

二つ目は、【ひょういえーあいちゃっと】

三つ目が、【ひょういこみゅにけーしょん】

四つ目が、【possession】

このアプリを作った奴は小学生かそれともまだアプリ自体が完成していないのか、と思うくらい文字が平仮名で読みにくい。

そして最後が何故か英語なのも腹が立つ。

がいど、これはガイドだよな。

えーあい‥AIチャットのことだろうか。

コミュニケーション？よく分からない。

ぽ、ぽぜっしょん？‥英語は苦手なんだ。

とりあえず、一つ目のガイドをタップする。

テンテレーンという明るいBGMが消え、タン、タン、タンという大人しめなBGMに変わった。

【憑依アプリの使い方。

　①このアプリには二つの魂が宿っています。名前はそれぞれ、アイとテツヤと言います。

　②possessionボタンを押して、アイかテツヤのどちらかを選択して下さい。選択し終わった後は、写真をアップロード出来る画面に切り替わります。憑依対象者の画像をアップロードし、すた〜とボタンを押すとアプリから憑依対象者への魂の転送が始まります。successと表示された場合は見事憑依成功です。不可能だった場合はerrorと表示されます。

　③アプリ内に魂が宿っている間は、毎日二人からひょういこみゅにけーしょんに連絡が入ります。アイは4時51分。テツヤは17時32分です。それを無視する事はオススメしません。

　④稀に半径五km以内の範囲に憑依対象者が現れる事があります。その時はアプリ内にてお知らせる事となります。

　以上が基本的な使い方となります。二つの成仏出来ない哀れな魂をどうか救ってあげて下さい。尚、分からない事はひょういえーあいちゃっとにて質問をして見て下さい。

　※注意事項

　このアプリはアンインストール出来ません。削除しても4分44秒後にまた自動的にダウンロードされます。】

「‥呪いのアプリじゃねーか！！！」

一通り説明を読んで沸き起こった素直な想いだった。