第7話 それぞれの道

 それぞれの道

 流れるように季節が過ぎ、色々な経験をした高校生活が終わる。宮下君は国内最難関の大学経済学部に合格した。さすがだった。森本君と石井君は有名私立大学医学部に進学する。それぞれが別の道に向かって行く。寂しさに、こみ上げる何かに心がキュッとする。


 僕とルイは同じ大学に進学する。絶滅危惧種は番鳥ができることと結婚で管理が緩くなる。卒業と共にアメリカのルイの籍に僕が伴侶として入る。保護国がアメリカと日本の両国になる。これまでより自由が増える。結婚式とか恥ずかしいしやらない。だけど、家族に紹介された。

 ルイの家族全員に、申し訳ない事をしたと頭を深く下げられた。どうしていいか分からず、緊張で固まっていた。家族総出で僕の一生を支えます、と宣言された。僕の鳥は、偉そうに藤原君の分身鳥の頭の上に乗り、皆を見下ろしていた。なんでそんなに態度がデカいんだよ。

 藤原家は、ワシの一家だった。大型肉食猛禽類に囲まれて、僕は冷汗が止まらなかった。藤原家の皆さんに小さい可愛いと構われて、それにも汗が止まらなかった。


「怖かった?」

「あんなに沢山の猛禽類は初めてだよ。メチャメチャ怖かった」

 帰り道。車の後部座席。

「入籍するし、エッチしようか」

 こっそり囁かれて身体がビクリとなる。お風呂に一緒に入っているし、何度も裸を見ている。でも、顔が赤らむ。

「うん。あの、避妊、してください。大学も行きたいし」

「もちろんだよ」

 ちゅっと触れるだけのキスをして頭を撫でられる。ふと僕のタヒチヒタキを見ると、ルイの鳥の毛づくろいしていた。気持ちよさそうなオウギワシ。

 僕たちは、ずっと、一生寄り添うことが出来るね。僕の鳥の幸せな気持ちが流れ込んだ。幸せな気持ちに任せて、僕からルイにキスをした。ルイが漏らした「幸せだ」つぶやくような一言に、笑みがこぼれた。


 部屋に戻ると、抱き上げられてルイにベッドに運ばれた。

「嫌なら、やめるから」

「いいよ。僕、どうやら初めてじゃないみたいだし、大丈夫じゃないかな?」

「初めてだよ。涼の初めては、今日だ」

 ふふっと笑いキスをする。丁寧に裸にされて、腕サポーターだけは着けられる。

「なんでコレ外さないの?」

「夢中になってしまったら、左腕を気遣えるかわからない」

 なるほど。

「考えてるね」

「何度もシュミレーションしたからね」

 むっつりだ、と笑う。ルイも裸になる。

 ふと分身鳥を見ると、定位置になった机の上で愛の給餌をしている。二鳥の傍には、ピンクのインコのキーホルダーとカモメのキーホルダー。嘴で咥えてキラキラきれいだ。

「よそ見しないで」

 ルイの手に頬を包まれて、濃厚なキス。ルイの素肌が触れる。ルイの舌を少し食む。そうすると上あごをゆっくりゾワリと舐められる。これが最高に気持ちいい。喉の奥で、う~、と上がる音。耳奥に響いて、背筋がブルブルする。

「舐めていい?」

 コクリと頷く。フェラかな。そう思ったけれど。ルイは僕の全身を舐めつくした。肌をはい回る舌に、大きな手に抑えきれずに声が漏れる。腰が揺れる! 肝心な起ちあがった僕のモノは触ってくれない。耐えられない! 自分で触ってしまおうと右手を動かすと「ダメ」と手を捕らえられてしまう。涙を流して

「もう触って! 出したい!」

 声に出していた。途端にルイが僕のを口に含んだ。吸い上げられて、舌でなぞられて、悲鳴を上げて達していた。目の前がチカチカして息が整わない。

「可愛い」

 ルイの厚い身体に抱きしめられる。僕に当たる固いモノ。腰を揺らしているルイ。

「もっと、して」

 手でそっとルイのを触る。優しいキスを一度して、ルイがそっと僕の後ろを触る。ぐいっと入ってくる指に、全身に力が入った。

「大丈夫?」

「うん。痛くは、ない」

 正直、気持ち悪いようなゾワゾワする感覚。奥に進む指が、僕の中の何かに触れる。触れたとたんに「いぁあ!」と身体をそらして悲鳴を上げていた。毛穴がブワっと開くような感覚。心臓が跳ねる。

「え? え? 何?」

 感じたことのない刺激に逃げ腰になる。

「ここ、男子宮っていう場所らしいよ。ペニスよりすごい快感の場所だって」

「こ、怖い……」

「もう少し、触っていい?」

 いいよ、とすぐに言えない。でも、指がトントンそこを突く。その刺激に高い悲鳴を上げて何も考えられなくなる。気づいたら、必死で腰を動かして泣き叫んでいた。僕のペニスが液を垂らしている。指がずるりと抜けて、荒い息を繰り返す。目の前がチカチカ弾けている。身体が震える気持ちよさに浸っていた。その時。

「あ~~!」

 メリッと裂けるような圧迫に悲鳴を上げていた。息が出来ない! 身体がビクビク痙攣したようになる。

「すごい、気持ちいぃ」

 降ってくる言葉に、視線を向ける。心臓がドキッと跳ねる。色っぽい紅潮したルイ。湿った肌が、密着する下半身が、ルイの快感を伝えてくる。すごい。満たされる。一瞬、見とれて力が抜けた。

「動くよ」

 コクリと頷く。奥の壁をトントンたたく動きから、大きなスライドに。全身を駆け抜ける鳥肌の立つ震えに嬌声が抑えられない。気持ちいい。それだけが僕を支配する。突如、ぐちゃり、とあの場所にルイが到達する。強烈な刺激に、高い悲鳴と精液をまき散らしていた。「そこ、だめ、だめ、だめぇ!」必死で言葉にしていたと思うけれど、あまりの快感に意識が途切れてしまっていた。


 気が付いたら、ルイに身体を洗われていた。一階の浴室だ。

「大丈夫?」

「うん。思ったほど腰とかお尻が痛くない」

「良かった」

 軽いキス。

「一階まで管理人さんに見られなかった?」

「細心の注意を払いました、と言いたいところだけど俺の鳥に下見してもらってから移動したよ」

 そうか、とぼんやり考える。

「涼、エッチして確信した。涼の男子宮は成熟している。本来なら番の相手の精液を中に入れることで、番相手としか妊娠しなくなる。けれど妊娠の危険があるから、中では出してない。意味わかる?」

 しっかり頷く。ルイ以外と性交したら妊娠する危険があるってことだ。

「両性は人を惹きつけるフェロモンがある。これから何があっても涼を守っていく。だけど、涼も気を付けてね」

 これにもしっかり頷く。

「あれ? 僕の鳥は?」

 見えなくて不安がよぎる。

「あそこ」

 濡れない場所に、バスタオルが数枚山になっている。その上に僕の鳥と、守るように陣取るオウギワシ。

「お姫鳥か」

「俺にとってもお姫様だよ」

 抱きかかえられてお風呂に入ると僕の鳥が目を覚ました。

 優しく寄り添う二鳥が綺麗だった。


 僕とルイは入籍した。夫婦別姓が選べると聞き、小坂のままにした。両親の顔も知らないけれど、この名前を手放したくなかった。藤原家からは資産分与で生涯困らないお金を送られたけれど、管理が分からず全てルイにお願いした。

 初めて国の保護局が管理しない場所での生活。大学近くにマンションを購入した。借りればいいと言ったけれど、賃貸より安全性が高いとルイが言い張った。

 ずっと憧れていた外の世界。支えてくれる人もいる。

 高校生活は色々あったけど大切な日々になった。必死だった日々も、通り過ぎてみると愛おしい。友達も出来たし、ルイにも出会った。心に残る時間を過ごした。大学はどんなことがあるだろう。ルイがいるから、どんなこともきっと大丈夫。羽が少し黒色に変わってきた鳥を撫でる。

 僕の鳥も僕も、幸せだ。

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