第4話 レオ・デュラン

 レオ・デュラン

 今は、ゆっくり休めばいい。早くリョウの身体が目覚めればいい。


 絶滅危惧高位種の者は両性。種の保存のために男性の場合、出産が出来るように男子宮が直腸奥にある。リョウの中のそれを覚醒させて、出産できるように身体を変えることが今回の目的。

 僕は、絶滅危惧種最高位だけど両性で生まれなかった。男性としての機能しかない。僕は美しいタヒチヒタキの生存を守りたい。この豊かな自然で暮らす綺麗な生命を守りたい。僕が産めるなら産みたかった。小鳥たちを守る存在を。同じ種族の鳥同士の者が性交すれば、同じ鳥をもつ者が生まれやすい。僕は、リョウに産ませる。

 会った瞬間に相性がいいことは分かった。なぜ番が僕じゃない? 先に鳴き合った相手が居るなんて。リョウには可哀そうだけど、番の相手とは番わせたくない。ずっと僕との子供を産み続ければいい。

 タヒチヒタキの分身鳥を持つ子を産めるのは、この世でリョウだけだから。


 フランスに来た初日から、リョウの身体を刺激した。睡眠薬で眠らせたリョウを裸にする。背中の赤黒い共有痕。白い肌にくっきりと大きく浮かぶそれにキスを落とす。綺麗な肌が、可哀そうに。

 ベッドに運び、若く固い後腔をゆっくり開く。指で男子宮をさぐる。奥壁に、指で触れる。内腔の刺激にリョウの前が緩やかに反応して、腰を揺らす。紅潮する幼い顔。上がる息。どきりとする艶めかしさ。立ち上がったリョウの性器を手淫し、指で前立腺を刺激する。小さな悲鳴と共に果てる可愛いリョウ。これから後ろを犯される気持ちよさを本能に刻み込んでいく。リョウが自ら求めたくなるように。

 早く奥の子宮が覚醒して成熟してほしい。子宮が覚醒して両性ホルモンを分泌し始めるまでは、刺激を繰り返す。早く僕の子を孕んでくれ。早く覚醒してくれ。そっと願いを込めて、薄い白い下腹部にキスをする。

 六日間、ずっと刺激した。やっと子宮門がくぱっと小さく開いた。心が歓喜に躍った。傍で控える管理局の者にも確認させる。僕の他に医師免許所有者が二名、指で男子宮の開口を確認した。管理局の許可が出る。やっと、やっとこの時が来た。リョウ、強制的に両性に目覚めさせてしまうけれど、これは仕方ないよね。僕たちのように絶滅危惧種最高位だと、性交は義務なんだよ。意識のないリョウの額にそっとキスをする。

 管理局の者が見守る中、リョウの中に僕の熱棒を挿れる。

「っあ、あ~~」

 意識が無いまま、悲鳴のような声を上げ身体を痙攣させている。苦痛にゆがむ顔も可愛い。同じように寝入っているリョウの幼鳥が右羽を震わせている。

「どうですか? 男子宮に、当たりそうですか?」

 事務的に聞かれる。締め付けに、気持ちよさに打ち付けたくなる腰を抑える。

「まだ、奥壁にしか行けません。少し刺激してみます」

 緩やかに腰を動かし、熱棒を抜き差しする。小さな悲鳴と、細い身体のビクつきを見下ろす。あ、あった。奥壁の、ややお腹側。切っ先が当たると受け入れるように吸い付く部分。本能で分かる。ここだ。

「見つけました」

「では、そこで射精して五分間抜かずに固定してください。どう動いて射精してもいいですが、今の場所で子宮の中に精液を入れないと意味がありません」

「はい」

 今回のリョウの訪問は、二週間の予定。日本では成人前の両性覚醒行為は禁じられている。この、フランス滞在期間しか時間がない。外すわけに行かない。リョウの身体は拓いたばかりで僕のモノが全部入りきらない。抜き差しすれば外してしまう可能性もある。切っ先をソコに当てたまま、奥をグイグイ突き上げる。固い部分が少し開いて先端がほんの少し潜り込む。今だ、と直感で分かった。一気に射精した。感覚として、少しは入り込んだはず。

「多分、全部は無理ですが、少し中に入りました」

「十分です。少しでも入れば、男子宮が反応して急速に両性ホルモンを分泌し始めます。成功していれば、明日にでも発熱や倦怠感の増強といった身体的変化が始まります。ホルモンバランスが安定するまで、場合によっては数か月かかります。その間は子宮の成熟のため性交をしないで、傍で支える存在になる事が大切です。通常女性は年数をかけて身体と共に子宮も成熟しますが、男子宮は外的刺激で目覚めさせて急激に成熟させることになるので、苦痛を伴う時期になります。分身鳥、本人ともにパートナーに心を寄せれば、その後の性交による妊娠確率がぐっと上がります。この時期のサポートは重要です。妊娠可能になるのは、早くて翌年の春先からの繁殖期です」

 リョウの中から熱杭を抜かず、固定している時間で管理局の者から再度の説明を受ける。

「分かっています。リョウが僕だけに依存して僕の子を自ら望むように、精一杯頑張ります」

 タイマーの音が鳴り、五分経過が知らされる。そっとリョウの中から抜き出る。その刺激に身体を震わせ、うなり声を上げるリョウ。

 後口から溢れる精液を、綺麗にふき取る。管理局の者が清めを交代すると申し出るが、すべて断る。大切な世界で一人の僕のパートナーだ。無駄に触らせるものか。ふと、リョウの可愛い分身鳥を見る。性交をして両性として目覚めることは、成鳥へのきっかけになるだろうか。リョウが意識を落としている間、同じように倒れ込むように眠っているオレンジの幼鳥。その傍に僕の黒灰色のタヒチヒタキが寄り添っている。寝ている幼鳥の口には、黒い羽が添えられている。愛の給餌か。お前も僕と同じだね。

 僕は、僕の愛おしいタヒチヒタキのためにリョウに尽くそう。今日が成功していれば、ここからしばらくは、リョウの身体に触れられない。全身を拭き清め、若く綺麗な肌のいたるところにキスを落とし、リョウの味を脳に刻み込んだ。

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