第9話

小さくなったエルバサを肩に乗せながら歩いている時、ふと左を見ると古びた神殿らしきものが建っているのを発見した。


「なぁエルバサ?あそこに神殿なんかあったか?」


「あったぞ?まぁ、見つけにくいのは分かるが、ここまで整備されないものなのかのう?」


「珍しいのか?」


「うむ、神殿というのは神の御神体が祀られている場所じゃ。そこが整備されていないとなると忘れられたのじゃろう。」


忘れられるか・・・・悲しいことだな。


「中に入ってみるか?御神体が無事だったら御供物でもしようかなと思ってな。」


「良いんではないか?時間もまだあるだろう?」


「そうだな、まだ17:30だから時間はあるから行くか。」


神殿へ向けて歩を進めた。


「中は思ったより綺麗なんだな。」


「うむ、まだ神聖な魔力が充満している証拠じゃ。本当だったらもっと苔が生えているんだがな。」


そのまま進んでいくと、最奥部に全長3mくらいの結構でかい女神像があった。


「これは・・・・地母神の神殿だったか。」


「何で分かるんだ?」


「地母神の手のひらを見てみろ。あそこに草の冠を模した物が置いてあるのが分かるか?」


「確かに置かれているが・・・・。」


「その草の冠が地母神を表しておるのじゃ。他の女神像だと、火の女神は手に松明が、水の女神は水瓶が、森の女神は木の枝が、光の女神は蝋燭が、闇の女神は黒綿を手のひらに乗せておるのじゃ。」


「じゃあ、今言った主にその六神がこの世界の神様なのか?」


「上位神だとそうじゃのう。」


「上位神ってことは上にもいるってことか?」


「そうじゃ、上位神の上に最上位神が一柱いる。時の女神というやつがな。」


「時の女神・・・・。」


明らかにチートくさい名前の神だな。時間でも止めるのか?それとも時間を戻したり、早めたりでも出来るのかな?


「時の女神はあまり信仰されておらん。殆どが神話の中でしか語られん。実際にいるかも分からんが、それでも細々と信仰されているらしいな。」


「いつか会ってみたいな時の女神。」


「主人の運が良かったら会えるかもしれないの。」


「さて、地母神に御供物するか。焼きおにぎりしかないから、2個さっき葡萄についていた葉っぱに乗せて・・・・よし。」


手を合わせて目を閉じて念じた。



















目を開けるとそこは真っ白な空間がずっと奥まで続いていた。


「ここは・・・・?」


『ここは神の空間です。』


神の空間?というか誰が話しかけてきているんだ?左右を見てもどこにも姿が見渡らない。


『後ろですよ。』


「後ろ?」


振り向くと身長が180cmぐらいの顔の整った美人な人?がそこにいた。しばらくボーッと眺めていると、いきなり抱きつかれた。


「うぇ?」


「ふふふ、貴方、私の夫になりませんか?」


ファ?!いきなり何言ってんの!?この人は!?


「え、あ、その、なんででしょうか?」


「その高貴な心、そして、女神好みの顔、百点満点ですよ。それに、他の女神に盗られる前に私が唾つけとけば盗られる心配は無いですし。」


おっと?女神好みの顔とは・・・・?そんなパワーワード出てくるとは思ってなかったんだが?それに盗られるって何や?


「盗られるって・・・・そんな事はないですし・・・・それに、私プレイヤーなんで住んでいる次元が違うと言いますか・・・・。」


「あら?愛の前に次元なんて関係ないじゃないですか?」


く!この女神強い・・・・!


「そ、それに名前知りませんし・・・・。」


「あら、確かに名乗ってなかったですね。私は【地母神エルデ】と申します。貴方の名前は?」


「れ、レンです。」


「良い名前ですね。それで、式はいつあげますか?」


「いやあげませんけど?」


「何故です?」


「いきなり見ず知らずの女神に声をかけられてはいと頷くと思いますか?」


「ええ、思います。なにせ、私は美人ですので。いや、美人ではなく美神ですね。」


上手くない・・・・そ、それより、ここに居るといつか必ず既成事実を作られることになる・・・・そうなるとまずい、ここは穏便に・・・・


「あ、あの、また来ますから・・・・今回はご挨拶だけに・・・・。」


チラッと見ると何か悩んでいるような顔をしていた。


「むむむ、確かに仲はいつでも深められますし、最悪、既成事実作れば良いだけですし。うん、今回は見逃しましょう。」


く、喰われる・・・・!


「じゃ、それでは・・・・またいつか会いに来ます。」


「ええ、いつでも、永遠に待ってます。」


その声を聞くと意識が遠のいてきた。


















「・・・・い、お・・・・い、おい!主人よ!」


「ん?何だ?」


「いきなり倒れるとはどうしたのだ?」


「い、いや、信じるかどうかは分からないが、女神に会ってきた。」


「な、なんと、女神に会えたと申すか!」


「あぁ、それに求婚された。」


「き、求婚じゃと?よく主人戻って来れたの。基本的に女神の要求は絶対じゃからな。断るなんて恐ろしくて出来ないわい。」


まじでやばかった。あんな体験・・・・これから先結構同じ目に遭いそうな気がする・・・・もしかして称号か。この称号のせいか!


称号を恨んでいると声が響いた。


【プレイヤーが初めて女神の元に辿り着きました】

【初めて辿り着いた者に称号『女神に出会いし者』を獲得しました】

【続けて称号『地母神の夫(最有力)』を獲得しました】


「また変な称号を獲得したな。」


特に二つ目、めっっっちゃ不安しかないんだが?詳細見たくないけど・・・・見なくちゃな。と、その前に神殿から出るか。


起き上がって女神像の麓をみると、御供物がなくなっていた。


「あれ?御供物は?エルバサ食べた?」


「食べてはおらぬ。主人が倒れたと、同時ぐらいに消えたのじゃ。」


どこにいったんだ?・・・・もしかしてエルデの元に行ったのか?それしかないか。考えてもしょうがないし、一回神殿出るか。


エルバサを肩に乗せ、来た道を戻って神殿を出た。

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