第6話 お馬さんも...


貯金をしなくて良いから気は楽だわ。


とはいっても、和也の給料だけじゃ厳しくなるかも知れない。


だからと言って、しっかり働いてしまうと義実家を腐らせられないし、植木部長の奥さんの所にも顔を出せない。


色々悩んでいたのだけど…投資の本を読んで思いついちゃったのよ。


これから儲かる株なんて知識は無いけど…駄目になる会社は沢山知っているわ。


だって、これから先の未来、確実に不況になるんだから…


だから、株の勉強をして空売りを覚えたの。


実際にやって見ると、面白い位に今の所儲かっているわ。


稼いだら、手元に少し残して義実家や旦那の贅沢につかう…もし失敗して溶かしても、和也の預貯金なら私は痛くないわ。


うん、やってみた方が良いわ。


もし、本当に失敗しても『義実家や和也の為にお金を増やしたかった』そう言えば強くは責められないでしょうしね。


和也はっていうと少しだけ変わってきたわ。


前の時は外食なんて滅多にしないでお給料日だけだったんだけど、今じゃ平気で外食するようになったの。


尤もまだ歯止めが効いていて、回転寿司やファミレスだけどね…


でも、お義父さんやお義母さんは高級外食が好きだから、きっとそのうち感化されるわね。


趣味も持つようになったのだけど、残念な事に釣りなのよ。


出来たらゴルフとかが良かったんだけど、植木部長の趣味が釣りだったのよ。


奥さんの所に顔を出したかいがあったわ。


「夫が釣りが趣味」って言っていたので、すかさず「夫が無趣味で困っていて、何か趣味を持って欲しいんです」と言ったら「だったら、旦那に誘ってあげる様に言ってあげるわ」ですって。


部下は私1人だけど、すっかりボスママ気取りになってきて、用事をやらされる代わりに色々相談に乗ってくれるのよ。


勿論、付け届けは忘れない。


嫌味にならない程度に果物やお菓子を持参している。


この間は奮発してカニを持って行ったわ。


『親戚から貰った』そういってね…


『貰った』がミソなのよ、買っただと生意気に取られかねないから。


あくまで謙虚。


これを忘れたらいけないわ。



◆◆◆


「此処が競馬場ですか?お義母さん凄いと思いませんか?和也さんも馬ですよ! 馬が居ます」


「そうね」


「確かに凄いな」


「いやぁ、そこ迄感動してくれると連れてきて良かったよ」


実際に車の運転をしていたのは私だけどね。


「私達は初めてなので、馬券の買い方や競馬新聞の見方とか教えて下さいね」


「仕方ないなぁ~券売機の使い方と競馬新聞の見方だけ教えてあげるよ…だが予想は自分で考えるんだ、そうしないと楽しくないからな」


「はい、お義父さんに教わりましょう」


「そうね」


「そうだな」


義両親はギャンブル好きだが、お義母さんはパチンコとスロットしかしない。


出来る事なら色々なギャンブルに和也に嵌まって欲しい私はお義父さんをおだてて、競馬場に遊びに行く計画を立てたのよ。


和也もそうだけど、お義母さんも嵌まってくれれば、毒親度も上がってバッチリ。


「それじゃ、お義父さんに券売機の使い方と競馬新聞の見方を教わりましょう…お願いしますね! 今回も家計から皆には1万円ずつ渡します。すいません足りない分は各自でお願い致しますね」


「それじゃ、教えてやるから行こう」


口ではぶっきらぼうだけど、お義父さん嬉しそうだわ。


「「「はい」」」


お義母さんはどうかと思ったけど、笑顔だし問題無いわ。


教わりながらやってみたんだけど…


楽しいのが良く解る。


特に直接競馬場に来たから馬が見れるのが楽しいし…


途中で食べた煮込みも美味い。


そして結果は…


博打だからやっぱり偶には儲かるのね…


ビギナーズラックでお義母さんが万馬券をとったのよ。


とはいえ賭けていたのは400円だから5万円ちょっと。


「凄いわ、これが5万円」


「凄いですね、お義母さん」


「やるな」


「お母さんすごいじゃないか?」


「偶々よ、偶々…それじゃ今日は居酒屋行こうか?お母さん奢っちゃうから」


この人達、気がついたんだけど、出し汚くは無いんだよね。


尤もギャンブル依存症に片足突っ込んでいるんだけど…


「お義母さん、御馳走になります」


4万円が5万円ちょっと、家族で考えたらちょっと黒字なだけ。


軍資金は我が家の家計なんだけど…いう必要ないわね。








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