第31話 ミケランジェロ広場の魔術師ダンジョン①
ミケランジェロ広場の魔術師ダンジョン。ここに出現するモンスターは、その名の通りその全てが魔術師モンスターというダンジョンだ。
巨大な図書館のようなダンジョンで、その書1冊でも魔術史が覆る発見があるのではないかと言われている。言われているだけなのは、誰も持ち帰ったことがないからだ。
何故なら書を持ち出そうとした瞬間、恐ろしいモンスターが現れるからである。
「奥の棚を目指すぞー! 魔術書を持ち出す最初の男にわしはなる!」
:元気すぎるジジイだなぁ!
:なんでそんな不可能にチャレンジしたがるんだこいつは
:でもイタリアのトップさんも一緒だし、るみるみもいるしでワンチャンないでござるか?
:ありそうなのが、怖いんだよ
:世界が確実にひっくり返るっすね!
¥500
あっ! スパチャできる!
¥1000
マジやんけ!
¥10000
収益化おめでとー!
¥50000
美味しもの食え……
¥50000 ござる侍
貢ぐでござるー!
¥50000
好きな本をお読み……
「わわっ、スパチャありがとうございます!」
イタリア来る前に収益化通ったの忘れていた。フィレンツェダンジョンでは流石に案件?配信だからと自粛していたが、今回は二宮金三郎が勝手に設定したからスパチャオンになっていたようだ。
「読み上げは配信終わったらやるねー」
赤スパが飛び交っている。投げたくなる気持ちはよくわかるので、ありがたくもらっておこう。
わたしの収入はダンジョン探索で得た素材と天岩戸の手当てでかなりの額になるから正直に言って今は困っていない。それでも使えるお金が増えるのは良いことだ。
織野華に貢げる。
「さて、それじゃあ進みますか」
広大な図書館の最奥目指して階層を降りていく。上層の敵は二宮金三郎の相手にはならない。
暗く澱んだ虚んで顔を見ることのできないローブ姿の魔術師モンスターたちは、魔術を放つ前に二宮金三郎の魔術でやられてしまう。
「流石最初の魔術師ですねぇ」
改めて見ても45年の研鑽には感嘆を覚える。異世界ならもっと凄かっただろう。
故に残念だ。もっとこの世界に魔力が馴染み、法則が発見され尽くした時に生まれたのならあらゆる魔術は彼の下に頭を垂れたはずだ。
特にイレギュラーも発生せず、平穏そのものな探索は和やかに進む。
:るみるみの配信にしては穏やかだなぁ
:貴様るみるみのいつもの配信が穏やかでないと申すでござるか
:穏やかな配信はイレギュラーやダンジョン犯罪者に出会わないんですよ
:今日は痴女服でもないし
:どう見ても寝巻きだけどな
:いつぞやの中学時代の体操服だな
:穏やかだな!
:いやいや穏やかな配信ってのは、なんだかよくわからないふわふわしたものを食べてそうな、ふはふはとした柔らかな乙女がやる配信なのよ
:なんだその配信は……
:お姫様の配信やんけ!
:誰だ
:ここの奴ら探索ガチ勢が多いからかお姫様知らんのか
:誰よだから
:調べろよ。とりあえず、お姫様、ダンジョンで検索してみ
わたしも気になったので調べてみる。
「Eランクの探索者さんなんですねぇ」
本人は至極真っ当な探索者っぽいが、性格や行動がとんでもなくふわふわしている配信者のようである。
容姿はまさしくアイドルやプリンセスといった感じでとても可愛らしい。
ハープを武器にしているようだ。
チラッと見た感じ、Eランクとは思えない攻撃をしていて興味が湧いた。弦を弾いた時に生じる音撃で敵を蹴散らしている。中々珍しい。
「興味出て来た」
「ワハハハハハハ! 魔術か? 魔術だな? わしも興味出て来たぞ!」
「魔術じゃないと思いますけど?」
チラ見しただけだから詳しくは言えないが、音に魔力を乗せているだけに見える。
「魔術も音を使う技術じゃし、音階で魔術使えたら音楽家とか強くなると思うんじゃよ。わし、ベートーヴェン弾きながら魔術発動したらクソかっけーと思うんじゃ」
「発想力がすげぇ」
「よし、今度一緒に会いに行くぞ!」
:お姫様逃げてぇぇぇ!
:変態が2人、来るぞお姫様!
:やばいのにロックオンされたお姫様の未来はどっちだ!
:なんでEランク探索者に興味持つんだ……
:わからん……
:お姫様か、2人が興味持つなら見に行ってみるか
:俺も見に行こっと
:上層ピクニックしてるだけの穏やか配信だぞ
:たまに寝落ちからのお昼寝配信だぞ
:ええやん、こってりラーメンも良いけど、あっさり蕎麦もたまには食べたくなるからな
:探索ガチ勢の配信は濃いからなぁ
:メイドお嬢様に、兼業リーマンに、るみるみに、織野華に
:濃いなー!
:お姫様のチャンネル登録者数が爆増してDXでお姫様が混乱してるぞ
:かわええーなー
:もっと増やしたれ
:るみるみと魔術Gに見つかったのが運の尽きや
お姫様DX『ひぇぇ、何!? なして何もしとらんのに登録者数増えとるん!? うち覚醒した!?』
わたしもDXでフォローしておこう。
「わしもフォローしておこう」
お姫様DX『あわわわ!?!?!? るみるみさんと魔術Gさんにフォローされた!? なんで!?!? あっあっあっ通知が!?!? あわわわ、きゅぅ……』
:ムゴイ……
:あのふわふわが慌てるのヤバいな
:慌ててるのかわいいね
:魔術Gとるみるみにフォローされるとかヤバいだろ
:お姫様かわいそう
:お姫様がトレンド入りしたゾ
:かわいいお姫様でござるなー!
「ワハハハハハハ! 楽しみが増えたぞー!」
「あらあら〜、良いですね〜」
「あっ、宝箱」
和気藹々と進んでいたら宝箱を発見した。
「開けるのだ!」
「わたしが?」
「ごめんなさい〜。私、シーフの技能はなくて〜」
「わしもない! 小娘はあるじゃろ?」
「わたしは便利屋じゃないんですけど」
「できんのか?」
「できるけど」
:できるんかーい!
:ほんと多芸だなるみるみは!
:さするみでござる〜
:鍵開けと罠解除の技能ってどうやって身につけたんや?
:どうせ施設
:魔境か何かなのか???
「シーフ技能はもちろん施設で覚えたよー」
より正確に言えば、そこでシーフのスキルを使えるように訓練したというのが正しい。
「わたしって目と髪がこんなだから、施設でいじめられてて。よくものが取られてかくされたりしたんだよ。それを探したり鍵のかかった箱とか部屋からの脱出で覚えたの」
:辛っ……
:掘れば掘るほど闇が出るんですけどこの子ぉぉぉ!!
:ぶわっ
:それなのにこんな朗らかに育って……
:良い子や……
:良かった良かった。いや、よくねぇ!
:やっぱ魔境だってその施設!
:かなりのスキルを覚えられる施設……
:違う、覚えないとやってけない地獄の間違いだろ
:悲しみ……
良い訓練になると思ってたことは言わないほうが良いかもしれない。
「施設はそこまで悪いとこじゃなかったから大丈夫だよー」
:施設のことまで庇える良い子に育ちました
:優しい子だ
:おじさんこんなのに弱いんだ
:最高でござる
¥50000
おやつ代
¥50000
ほら持っていきな
¥10000
優しいるみるみに!
¥500
おやつ代真
¥1000
貢げる喜びや
「あっ、そんなに投げなくて良いからね!?」
¥50000
まかせろ!
¥10000
やってやるぜ!
¥100
とりあえずなんか投げろ
:石油王多すぎだろ
:楽しくなって来たー!
:るみるみが闇深いのが悪い
:それで笑ってるのが悪い
とりあえず反応するとまたスパチャが飛ぶから宝箱の方を優先することにする。お金はいくらあっても良いのだ。
さて、宝箱であるが見た目は普通。魔力反応に引っかかるものはない。感覚的にも引っかからないからたぶん罠の類はない。
サクッと鍵を開けてしまう。
「たぶん罠はないかな」
「そうか! ガチャ!」
「躊躇なく開けたな!」
「おお、これは!」
宝箱の中に入っているものは完全にランダムだ。上層よりも下層の方が良いものが出やすいと言われているが、上層でも良いものは出ることはある。
宝箱から出る良いものは魔力のこもった遺物や武具だ。
二宮金三郎が宝箱から取り出したのは、球体であった。
「なんじゃ?」
「遺物でしょうか〜?」
「おお、これは」
どうやら今回はかなり運が良いらしい。
「知ってあるのか?」
「もちろん、これは小世界だよ」
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