第25話 フィレンツェダンジョン配信3
悪魔を探して大穴へと向かう。
ちょうど良く1体見つけたので、シスター・アデーレに倒してもらおう。
「それじゃあ、さっそく聖属性変換に成功したかどうか確かめるためにも戦っていただきましょう」
「がんばります~」
シスター・アデーレが爆弾に魔力を纏わせそれを聖属性へ変換する。
「え~い」
ぽいーっと緩やかなフォームで投げつけられた爆弾は、ころころと悪魔の足元に転がり爆発する。
「■■■■!!?!?」
:効いてる!
:すげぇ、足が吹っ飛んでる……
:本当にダメージあるんだ
:比較切り抜き作ったぞ
:はええよ、職人!
:でも助かる
:比べるとわかる、通常爆弾だと全然ダメージない
:聖属性纏わせただけでこんな変わるの?
:悪魔って聖属性以外に完全耐性持ってる代わりに、聖属性はマジで特効らしいからな
「すごいです~、こんなにも私の爆弾が効いたのは初めてですぅ~」
「爆弾の威力すごいですね……」
わたしは爆弾の威力の方に引いていた。爆弾職人なんていうのは、異世界にはいなかったからわからなかったが、これだいぶヤバイのではないだろうかというくらいの威力をしている。
深界モンスターの高い防御力を貫通して足を持って行っているのは、控えめに言ってとんでもなく強い。
これが広範囲でいくつも飛んでくると?
ダンジョン内の素材で加工すれば補充可能で敵を倒せば倒すほど爆弾になる?
「イタリアのトップすごい、真似したい」
良い、最高。
「はぁ、始まった」
「わたしが要求した条件だからね! 爆弾職人のスキル、真似させてもらわないと」
威力があるのは良いことである。真似したくなる技術があるということは良いことである。
世界はやはり広い。もっと周囲に目を向ければ、わたしが真似したくなる技術はたくさんある。
やはりどこへでも行ってみることだ。それがわたしの道を広げてくれる。
「じゃあ、止め刺しちゃいますね~。あっ、ちょっとやりすぎたかもです~」
ぽいっと何やらドジって投げられた爆弾により悪魔はあえなく粉々の憂き目にあった。
:うーん、スプラッタ
:グロイ
:素材がァ
:でも悪魔の素材って何に使えるんだ?
:角は魔術師の杖を作るときの触媒になるという
:角以外は?
:魔石
:魔石以外は?
:肉……食用……?
:食わんだろぉ……
:そもそも皮膚とか使えそうにないしなぁ
:つまり、どんなふうにやってもいいってことか!
:このダンジョン、そもそも探索されてないから何があるかもわからないしなぁ
「はい。これで聖属性に変換した魔力を纏わせて攻撃すれば、悪魔を倒せるということが証明されました。これでわたしのやり方にきちんと効果があるとわかっていただけたかと思います!」
「はい~、ありがとうございます~。これで遺物を使い潰さなくてもすみますね~」
「このやり方を明日、深界の魔力圧に耐えられるイタリアの探索者に教える会を開くので奮ってご参加ください!」
魔術G:うおおおおおおおおお! 行くぞイタリアあああああああああああ!
:行くな、待てぇえええ!
:落ち着けえええええ!
:国際問題不可避だからまてぇぇ!
:この爺フットワークが軽すぎるんよ
:まーたあらぶってらっしゃる
:マネさーん! 早く来てー!
池田:お騒がせしました。今、昏倒させましたので
:昏倒させられとる
:良かった! マネさん流石!
魔術G:わしは、諦めんぞおおおおおお!
:復活はええよ!
:どうしてこうなるまで放っておいたんだ
:仕方ない、魔術Gだぞ?
:新しい定型出てきた……
「さて、それじゃあ本番行きましょうかー!」
:本番?
:え、何すか?
:何やる気でござる?
:あっ(察)
:嫌な予感が
:おーい、止めた方が良いのでは?
「フィレンツェダンジョン、攻略しちゃいましょう!」
「まぁ~」
「!?」
「せっかくのいい機会。わたしたちである程度先に進んで情報を発信した方が、後に続く人たちに良いと思うんですよ。もちろん、イタリアのダンジョン探索協会には許可をとってます」
「アンタ、いつの間に!? あっ、イタリア語で何か話してた時!?」
「一花ママは英語だけじゃなくてイタリア語もマスターすべきでしたねぇ」
「ふふふ、悪い子ですね~。ですが、確かに攻略するなら今かもしれません。私だけでは全然探索も足りていませんし、るみるみ様とイチカ様がいる現状はこれ以上ないくらいの好機ですから~」
シスター・アデーレも賛成。後は一花だけだ。
「…………はぁ、問題にならないならOKするしかないじゃない」
:ありがとう一花ママ
:わーい!
:やったぜ
:未踏破ダンジョン攻略配信とか、いつぶりでござるか?
:くうぅ、楽しみだなァ!
:同接が100万こえてっぞー!
:すげえ、どんだけ見てんだよ
:そりゃ見る、これから未踏破ダンジョン攻略しようってしてんだから
:これで何かやばいもの発見したらもっと伸びるな、これ
:チャンネル登録者数も100万行った!
:海外勢に見つかったな、こりゃ
:トレンドもるみるみの話題ばっかだし、いいぞぉ
:行けるとこまで行っちまえ!
「同接すっご。チャンネル登録ありがとうございまーす。これからも頑張りますねー」
ゴーサインも出たので、わたしたちはフィレンツェダンジョンを進む。
「私が進んだのは第1エリアと呼んでいる場所までになります」
悪魔しか出現しない深界ダンジョンであるため、奥へ進むのは困難を極める。むしろ遺物頼りでも1エリアの最後まで進んだのは驚愕すべきことだ。
なら今回はそこより先を目標に進もう。
深界の濃密な魔力は、わたしにとっては懐かしさすら感じさせるレベルで調子が良い。
「あ、悪魔2体来ますね」
「は〜い。あ、使う爆弾間違えちゃいました~」
ぽんぽん聖属性魔力を纏った爆弾が投げつけられ爆発。悪魔は爆散スプラッタを量産する。どう見ても過剰威力である。
今まで足りなかったのは聖属性だけと言わんばかりの無双っぷり。確かにこれはイタリアトップだ。
「悪魔を倒そうと威力を高めに高めてよかったです〜。私、よく投げる爆弾を間違えるので~。おかげで仲間がいると巻き込んでしまって使えないんですけど〜」
そして倒した悪魔を爆弾に加工して補充。爆弾の収支はプラスである。
わたしは鮮やかな手並みに感心するばかり。シスター・アデーレの流麗な指の動きばかりを注視している。
「綺麗だなぁ」
「また悪魔が来てるから惚けてないで対処!」
「はーい、一花ママ」
いつの間にか悪魔が爆破の音によって来ている様だ。
聖属性魔力を行い風属性魔術【西風の鷹】を起動。
鷹状になった白い風が竜巻を纏い悪魔に突っ込んでいく。
竜巻に触れた悪魔は切り刻まれて白い炎となり消滅する。
「まあ〜、すごい魔術ですね〜」
「鷹出してる間はオートで攻撃してくれるから、このまま第2エリアまで行きましょう」
「出しっぱなで魔力持つわけ? こっから先も行くつもりなら節約すべきじゃない?」
「シスター、第2エリアまでどのくらいですか?」
「そうですね〜。ゆっくりの行軍でしたから正確にはわかりませんが、まっすぐ最短で行って3時間ほどでしょうか〜」
「なら問題ないですね」
もしもの時は周囲の魔力を使うか、髪に溜めた魔力を使えば良い。
「このまま行きます」
「相変わらずの馬鹿魔力量ね」
「魔力量なら、魔術Gがわたしの3倍ですよ」
「そこまで行くとさすがEX、怖いわ。羨ましい」
一花の強みは魔力量ではないからそこまで悲観することではないと思う。魔力量は、スタミナとも言えるから多ければ多いほど良いと思ってるのは良いけれど、最終的には運用効率がものを言う。
わたしは量も運用効率も高いから魔力切れはほとんど起きないと言っても良い。これを言うと一花が怒るから言わないけど。
「私の魔力量はどうですか〜?」
「教会で測るのでは?」
「最近測っていないので〜。どれくらいなのか教えて欲しいなって〜」
「まあ、アンタの計測は最新式の測定器より正確だし、やってあげたら?」
「一花ママが言うから測定しちゃいまーす」
:うーん、ほのぼの
:ここ深界ダンジョンなんだよな?
:かわいいでござるな〜(目逸らし)
:目を背けるなみろ
:悪魔がゴブリンみたく虐殺されていくっす
:風魔術もすごいけど、ぽんぽん飛んでく爆弾もやべぇ
:なお、爆弾選択は常にミスっている模様
:うーん、ドジっ娘かわいいね♡
:かわいい、威力じゃないんだよなぁ(白目)
:これが世界か……
魔術G:うおおおおおお!! 魔術ぅぅぅ!
:魔術Gも叫んでるなー
:近所迷惑だなぁー
:あはは、見てー悪魔が木っ端微塵だよー!
:イタリアを壊滅させかけた存在がゴミの様に飛んでいく……
:ポジティブに考えよう、イタリアは救われたのだと
:救世主るみるみ!
:今後も海外の攻略困難ダンジョンの攻略法伝授配信とかしてくれないかな
:るみるみなんか色々知ってるからなー
:どこで身につけた知識なんだろな
:辞書?
:その辞書アカシックレコードって背表紙に書いてない?
「ここが第1エリアの最奥です〜」
いかにもボスが出て来そうだな思っていたら一際大きな悪魔が出て来た。
「よーし、それじゃあエリアボス討伐と行きましょう!」
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