第24話 フィレンツェダンジョン配信2
「あれ? 配信止まりました? もう1度言いますね。魔力を聖属性に変換するんです」
:いや、唖然としてるだけだよ!?
:?????
:魔力を聖属性に変換? そもそも聖属性とは?
:属性って火、水、風、土だけでは?
:るみるみが最近それ覆してるから、雷とか氷とか
:そんなことできるんすか?
:そもそも魔力に属性なんてあるんでござるか?
:魔術G!
魔術G:わからん……わからねば……!
「えーっと、じゃあ一花ママ。ママは魔力を使って武器を強化できるよね?」
「ええ、できるわ。近接探索者なら初歩の初歩よ」
近接をする探索者が上位ランクになるために覚えることとして、魔力を操作して体内を循環させることで身体強化をすることと、武器に魔力を纏わせて強化するの2つがある。
「上位ランクの探索者だと、炎の剣とか使ったりするよね?」
「そうね、炎を纏わせる技使ったりするわ」
:確か、兼業リーマンが得意だよなそれ
:ああ、ビジネス鞄に炎纏わせて殴る奴な
:なんでビジネス鞄に炎纏わせて戦ってんだ、あいつ
:やっぱおかしいな、あいつ?
:判断が遅い
「それと原理は一緒です。アレは魔力を炎の属性に変化させて剣に纏わせているだけなんで。だから、こう木の棒でもいいんで、適当なものに魔力を通してそれを炎属性にすると」
炎を纏った木の棒が出来上がる。
「で、魔力を聖属性にすると」
木の棒を包んでいた炎は消えて、木の棒が白くなる。
「こういう状態になるわけです」
「なるほど~、でも私、魔力変換のスキル持ってないんですよねぇ」
「大丈夫です。魔力操作と纏わせのスキルさえあれば。変換を1度でも成功させればスキル習得できると思うので」
:なるほどー、属性剣ってそういう原理だったのね
:知らなかったわ
:スキル任せでしか使ったことなかったわ
:スキルって後天的に習得できるんだ、初心者ワイ知らなかった
:できるゾ
:めちゃくちゃ鍛錬積まないとできないけどなァ!
:魔力操作と魔力纏わせは探索者必須スキルよ、だから日本だと講習で覚え込まされる
:完璧にできたと思うと、スキル習得してるのよな
:スキル習得できないなら才能ないってんでライセンス発行されないのよな
:まあ、最低条件だからその2つって
:ないのとあるのじゃ身体能力と武器攻撃力、防御力に明確な差がでるからなぁ
:てか、なんで思いつかなかったんだろう、火、風、土、水以外への属性変換
:だって魔術が4属性しかないんだぜ?
;発見された当初は火だけだったもんな
:4属性になったのもここ20年のことだし
:どうやったってそれ以外できなかったなら、ねぇ……
魔術が生まれてまだたったの45年。属性への理解も甘いし、そもそも魔術自体の研究もそこまで進んではいない。まだまだ見つかっていない法則も多い。
だから、属性がそれだけしかないと思い込んでいたというわけである。
:属性剣って、スキル効果で炎出してるのかと思ったでござるが、そうじゃなくて魔力がその属性に変化してたでござるか
:それができるからスキルになるのか、スキルがあるからそれができるのか
:卵が先か、鶏が先か、みたいだな
:るみるみの説明だと、それができるからスキルになるみたいな感じだな
:ほかにもそういうのありそうだな
:油とライターで剣を燃やしてなんとか習得しようとしていた俺の努力……
:お前は何でそんなことやってるんだ
:かっこいいから
:仕方ないっすね、かっこいいなら……
「じゃあ、さっそくやってみましょうか」
再び地獄の入り口付近に戻ってきたわたしたちは、さっそく魔力変換の訓練にとりかかる。
本来は適性を調べたりするところであるが、そこはわたしの目でカットだ。
「一花ママは既に魔力変換を覚えているから、それを聖属性にするところから始めましょう。シスターは、魔力変換を覚えるところから」
「は~い」
「で、どうするの?」
「シスターの方は、わかりやすい炎への変化を覚えてもらいましょうね。この木の棒を持って、魔力を操作して纏わせる。その纏わせて魔力が燃える炎になるようなイメージをしてみてください」
「わかりました~」
シスター・アデーレが座って木の棒を片手に魔力変換の訓練を始めたのを見てから、一花の指導に入る。
仮にもイタリアトップの探索者だ、魔力操作は熟練のそれであるし、魔力纏わせにも熟達している。
あとはイメージの問題。纏わせた魔力を炎に変えるイメージ。
ちなみに渡した木の棒は、わたしがダンジョンで見つけた魔力変換練習用にちょうど良い遺物である。
魔力に反応してちょっとした感覚を使用者に返すというもので、変換した後の感覚を返して感覚を覚えてもらうのだ。
「じゃあ、まず一花ママには聖属性の魔力を感じてもらいます。この聖属性の感じがわからないと変換もなにもないですからねー。はい、ここに座って」
「ん」
「じゃあ、ちょっと背中触りますね」
「うひゃっ、ちょ、ちょっと!」
背中に手を突っ込んだら驚かれてしまった。
「魔力本源に近いところにふれた方が良いから我慢我慢」
「その割にはニタニタしてるじゃない」
「してないしてない。かわいいからとか思ってないない」
「むぅ~」
「はいはい、やるやる」
「はぁ……」
というわけで再び背中にぴとり。
「ん……」
「じゃあ、聖属性の魔力を流すから感じて」
「ちょっと耳元で言わないで……くすぐったい」
「我慢我慢、ほら感じて」
「んん……」
耳が弱いようである。これは実にいじめ甲斐があるというものであるが、今は配信中である。
しっかりと成果を出さなければならないので真面目にやろう。
ゆっくりと一花の身体に魔力を流していく。
「んっ……なんか入ってきた……」
「それがわたしの魔力。今から聖属性に変換するからその感覚を覚えてね」
一花にいれた魔力を聖属性へ変換する。
聖属性の魔力は、教会などで感じる神聖な感じをイメージすればいい。色に例えれば白色だ。ただし、そこに輝きを足してしまうと光属性になるから注意が必要になる。
見えているとわかりやすいのだが、見えないと感覚でやらなければならない。大変である。
「うわ、すご……こんなのはじめて……」
:なんか、えっちぃぞ!?
:これ見ても大丈夫な奴?
:大丈夫だ、見ろ
:魔力流してくれてるのか
魔術G:うおおおおおおおおお、わしもおおおおおおおおおお!
:落ち着けジジイ
:このままイタリアに跳んでいきそうっす
:マネさんがんばってとめてー!
「どう? つかめた?」
「……もう1回頼むわ」
「はーいよー」
何度かやれば一花ならコツを掴んでできるようになるはずだ。これでできなかったら割と困るわけだから、頑張ってもらいたい。
何度かやっていると、だいたい感覚がつかめたらしい。
「それじゃあ、次は一緒にやってみましょうか」
一花が目を閉じて魔力を木の棒に流す。それから魔力変換に入る。わたしは、そこに手を添えて聖属性に変化させてやる。
「ふぅ……」
多少荒いが、属性変換はできた。
「今度はそれを1人でやってみてね」
「わかったわ」
「じゃあ、わたしはシスターの方を見てくるんで」
シスターの方へ行くと、ちょうど木の棒が火に包まれるところであった。
「どうですか、シスター」
「ああ、るみるみ様。ちょうどできたところです。イメージしたらすぐでしたね。この木の棒、遺物では? やりやすかったです」
流石はイタリアトップ探索者。これくらいは簡単にやってのける。
「じゃあ、聖属性への変化をやってみましょう」
一花と同じように魔力を流してから聖属性へ変化させるのを体験させる。
「ふむ……なるほど……なるほど~こうですね」
1度、魔力を流して聖属性に変換を体験しただけでシスター・アデーレは感覚を掴んだようで、聖属性への変換が1発で成功した。
:1発かよ
:一花さんでも何度もやったのに
:これが世界か……
:イタリアは、壊滅しかけてから平均レベル上がってるって話だからな
:必死だとこうなるのか
:といってももう数時間経ってるし
「では、それで悪魔が倒せるか実戦やってみましょう!」
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