第18話 ご近所さんと一緒! ーみやび編ー (前編)
多田が保健所に行って二週間が経った。あの後、犬を保健所に引き渡すついでに、多田が里親候補として立候補したようだ。このまま多田たち以外に引き取り手がいないようなら保護犬を引き取っても良いということらしい。
今日までに様々な手続きをしてきたわけなのだが、里親になれるかどうかが決まるのが今日らしく、ちゅうじんはとてもそわそわしている。結果が連絡され次第、保健所の方に行かなければならないのだが、ちょうど今その電話がかかって来たようだ。多田はすぐに電話に出ると、何やら話し始めた。
しばらくすると、通話が終わったのか多田がちゅうじんの方にやってくる。
「どうだった?」
「良かったな、ちゅうじん。無事、里親になれるぞ」
「おお! やったー!」
多田からの報告を聞いたちゅうじんは喜びのあまり飛び上がった。多田はそんなちゅうじんに、早く準備しろと声をかける。里親になる以上保健所にはちゅうじんも行かなければならない。ちゅうじんの保有している能力で戸籍は予め作ってある。もし、それを問われたとしても問題ないだろう。
多田とちゅうじんは準備を終えると、さっそく保健所に向かうのだった。
◇◆◇◆
諸々の手続きを終えて、家に帰って来た多田とちゅうじん。さっそく多田がゲージを床に下ろして、それの扉を開けてやると犬が出てきた。前に見たときは全身が汚れていたので気づかなかったが、どうやら犬の犬種はビーグルらしい。性別は雄、毛は白と明るめの茶色で、とても可愛い見た目をしている。
「このビーグルってやつ可愛いぞ!」
「まあ人懐っこいことで有名だからな」
「へえ〜! そうなのか!」
「ああ。にしても、いざ飼うとなるとペット用品とかも必要だよな。どこかにペットショップとかないもんかな……」
多田がさっそくパソコンを開けようとすると、家のチャイムが鳴り響いた。突然鳴った音にビーグルが一瞬、びっくりする。だが、少しするとまたちゅうじんと戯れていたので大丈夫だろう。
それにしても嫌な予感しかしない。また大家じゃないだろうな。
そう思い、玄関の扉を開ける多田。開けた先には大家ではなく、いつかの中野院みやびが立っていた。突然の訪問に驚いていると、みやびが挨拶をしてくる。
「やっほー! 多田くんに会うのはお花見以来ね」
「ど、どうもお久しぶりです。……それで何の用ですか?」
「あー、実は大家さんからちょこっと耳にしたのよ。多田くんが保護犬を引き取ったってね。だから心配で様子を見に来たのよ」
「な、なるほど」
多田は犬を飼ったことがなかったので、みやびがこのタイミングで来てくれたのはとても嬉しいことだ。
しかし、毎度毎度タイミングが良すぎやしないか? 葵祭のときと言い、今回と言い。でも、今回は来てくれたことに感謝だな。
などと多田が思っていると、リビングの方からビーグルを抱っこしたちゅうじんがやって来た。ビーグルは初めて見る人に対して少し怯えているようだ。
「あ、みやびさん! 今日はどうしたんだ?」
「保護犬を引き取ったって聞いたから、何か困ってることがないか様子を見に来たのよ」
「なるほどな!」
「あー、それでしたら良いペットショップとかご存じありませんか?」
そう多田が尋ねると、みやびは少し待ってと言って考え始めた。見た感じ何か心あたりがありそうなので、彼が口を開くのを待つ。少しすると、再び彼が話し始めた。
「ここから少し離れたところに私の行きつけのペットショップがあるから、二人が良ければ案内しましょうか?」
「はい! 是非ともお願いします」
「お願いするぞ!」
「なら少し準備するから待っててちょうだい」
みやびはそう言うと、急いで自分の部屋へと戻っていった。出かける準備があるのだろう。帰って来たばかりだが、これもビーグルのためだ。多田とちゅうじんもペットショップへと出かける準備を始めるのだった。
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