第3話 住むための条件


「この機体はミサイルとオマエの家にぶつかったせいでしばらく動かないし、通信を取ろうにも機能していないからナ。住むところがないからオマエの家に住まわせろ」

「いやなんでそうなるんだよ⁉︎」

「だって他にアテがないからナ」

 

 それを聞いた多田は、即効で無理だと返事をする。しかし、宇宙人は他に頼れる人はいないのは事実で、このまま放っておけば問題になるのはほぼ間違いない。

 

 今よりもさらに面倒なことになるのはごめんだし、この宇宙人放っておいたら何するか分かったもんじゃないからな……。

 

「お前を野放しにしておくと、さらに面倒なことになりそうだからな。住んでも良いぞ」

「やったー!」 

「ただし、条件が三つある」

「条件? なんだ?」

 

 多田の言葉に喜ぶ宇宙人だが、彼はタダでは住まわせてくれないらしい。

 それもそのはず。宇宙人に勝手に動き回られて、更なる問題を持ち込まれては厄介極まりないからだ。加えてこれ以上ストレスが溜まれば、多田の胃に穴があきかねない。


「まず、一つ目。そのでっかいUFOを何とかして隠せ。このまま俺の家ここに突っ込んだままじゃ問題になるからな」

「分かった。なら、どこか人があまり立ち寄らないとこってあるか?」

「立ち寄らない場所か……。それなら裏山だな。窓の外から見えるだろ? あれだ」

「なるほど。あそこか」


 多田は壊れた窓の方向を指さす。宇宙人は多田の指さす方角を見て、裏山があることを確認すると、念力を使ってUFOをそこへ移動させた。

 

「え、何? そのいかにも宇宙人が使いそうな能力は」


 目の前で起きたことに呆然とする多田は、宇宙人は本当に超能力が使えるのかと思ってしまう。

 

「物を浮かして操れるんだ。ああ、迷彩機能はオンにしてあるから誰にも見えないゾ」

「いや凄っ!」

 

 が、そのまさかだった。本当に超能力は存在したのである。それを知った多田は感嘆の声をあげた。ならばと、多田は宇宙人に対して再度注文する。


「ってことはこの半壊した家も直せたりするのか?」

「できるゾ」

「マジか! てか、それが出来るんだったら早く言えよ」

「あー、すまん。この星の生命体もそういうの使えるのかなって思って、つい言うの忘れてた」

「なんかムカつくなおい」

 

 でも、直せるんだったら親に修繕代頼む必要もなくなったし良いか。


 面倒ごとが減るならそれでいいと、安堵したのも束の間。宇宙人が残りの条件を聞いてきた。

 

「それで、他の二つはなんだ?」

「二つ目は他の人にお前の正体が宇宙人だって知られないようにすること。何があっても誤魔化せよ。三つ目は二つ目と直結してるが、正体がバレないように家からは絶対に出ないことだ。この二つが守れるんなら住んでもいいぞ」


 それを聞いた宇宙人はしばらく考えてから分かった、と返事をする。これで宇宙人がこの家に住むことが決定した。やっと寝れると思い息を吐く。だが、多田は一つ聞き忘れていたことがあったのを思い出した。


「あ、そういやお前の名前聞いてなかったな」

「ナマエ? なんだそれは」

「え? もしかして名前っていう概念がないのか?」

「ああ。いつもワタシたちは役職か番号で呼び合っているからな。ナマエというのは初めて聞いた」 


 まさかの返答にギョッとする多田。自分たちには名前があるのが当たり前だと思っていたが、宇宙人の暮らす星ではそうでもないらしい。多田は取り敢えず、名前というものがなんなのか説明する。


「なるほど……。名前ってのはその個体を表すものだ。例えば俺の名前は多田太郎。名前がないってのは色々と不便だからな。この際決めておいた方が良いだろう」

「分かった」


 とは言ったものの、名前をつけるったってどうしたらいいんんだ……。


 回らない頭で考えること三分。宇宙人は名前をつけられるのが初めてなのか、キラキラした目で多田を見ている。若干のプレッシャーを感じた多田。何も思い浮かばずにぼーっと宇宙人を見つめる。見つめられた宇宙人は、若干顔が硬くなっていた。


「――う・ちゅうじん」

「ん? なんか言ったか?」


 宇宙人には多田の呟いた言葉が聞き取れなかったようで、宇宙人は訊き返す。


「だから、“う・ちゅうじん”がお前の名前だ。まあ、安直すぎるからそっちが嫌だったら別のを考えるけど――」

「良いな! う・ちゅうじん。今日からワタシはう・ちゅうじんだ!」

「いやそれで良いのかよ⁉︎」

「なんか響きが良いからナ」


 あまりにも安直すぎるため却下されると多田は踏んでいたが、宇宙人は気に入ったらしい。

 

 まあ、そっちがそれで良いなら何でも良いか。何はともあれ――


「――それじゃあこれからよろしくな。ちゅうじん」

「ああ! よろしくオータ」


 握手を交わした二人。今この瞬間から、多田の家に住人が一人増えることになる。ちゅうじんには空き部屋の掃除が終わるまではリビングで過ごしてもらうことになるが、別に大丈夫だろう。そう踏んだ多田は、仕事用の鞄を手に持つ。


「んじゃ名前も決め終わったことだし、もう寝るわ。あ、ちゃんと家は元に戻しといてくれよ」

「分かったゾ」


 家に帰ってからいろんなことがありすぎて、眠気がピークを迎えていた多田。ちゅうじんにそう言い残して、多田はギリギリ壊れることのなかった自分の部屋に戻っていく。こうして宇宙人と多田は一緒に住むこととなった。



───

ここまで読んでくださり本当にありがとうございます!

ここから先のお話はちゅうじんが地球での暮らしを堪能するお話となっております。

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