第2話 宇宙人の目的

 

「――誰だオマエ」

「いやこっちが聞きたいわ‼︎」


 突然大声を出した多田に、ビクッと肩を震わせる宇宙人。多田はそれから大きく息を吸って言葉を続ける。


「大体、なんで俺が家に帰ったらこんなことになってるんだよ⁉︎ これじゃあ寝れないだろーが⁉︎ しかも半壊した家の修繕しようにも、費用とか今の俺の貯金じゃ足りないし、親からお金を貸してもらおうにもこの状況をどう説明すれば良いんだよ⁉︎ 突然、UFOが家に突っ込んで来たから壊れましたってか? いくら俺の家族がフリーダムだからってそんなの信じるわけねえだろ! そもそも、UFOが家に突っ込んだ状態が他の人に見られたらどうするんだよ。マスコミやら報道陣がキテレツ荘ここに押し寄せてきて大問題だぞ⁉︎ 加えて――」

「お、落ち着けヨ」


 家が半壊したのと、仕事で疲れまくっているのに寝れないという二つの要素が合わさったのか、多田は怒り心頭だ。一方、宇宙人は突然のことに呆然としていたが、取り敢えず怒っている多田を宥めようと声をかける。

  

「あ゛あ? 誰が落ち着いてられるんだよこの状況! 全ての原因はお前だろうが!」

「ア、スイマセン」


 全くもって多田の言うとおりだ。宇宙人がそれを言ったところで、逆に多田を怒らせるだけだった。宇宙人は、この状況をどうすれば良いのかとおどおどしている。その様子を見ていた多田は、怒っていても話が進まないと心を入れ替え、宇宙人に対して質問を投げかけた。

 

「それで? なんで俺ん家に落ちて来たんだよ?」

「それは――」


 全ての発端は一週間前のこと。星々の偵察が任務の宇宙人はその日、偵察を終えて自分の住む星である惑星“ルプネス”に帰還している途中だった。

 第六偵察隊の隊長である宇宙人を先頭に、数万光年先の故郷ルプネスへ向かうためにワープしようとしたその時。先頭にいた宇宙人が突如として、隊員たちの前から機体ごといなくなってしまったのだ。

 そう、宇宙人は事故に巻き込まれてしまったのである。気づいた時には宇宙人は見知らぬ空間に飛ばされていた。


「その飛ばされた空間が、地球のある太陽系だったのか?」

「そうだ。というかこの惑星はチキュウという名前なんだナ」

「え、今気づいたの?」

「ああ。なんせずっとわけも分からずさまよっていたからナ」


 まさかこの惑星の名前も知らずにさまよっていたとは思わず、多田は驚きながらも取り敢えず続きを聞こうと宇宙人に話を促した。


 それからというものの、ワープの影響で通信機能がやられた宇宙人は、ひとまず偵察もかねて太陽系の中を数日間動き回っていた。帰還途中だったので、機体の燃料もあと少ししか残っていない。そんな時に見つけたのが地球だった。

 

 こんなに綺麗な星を見たのは初めてだったので、宇宙人は興味本位で地球の偵察をし始める。それが日本時間の午後十一時のこと。そこから一時間ほど偵察をしているうちにたくさんの生命がおり、それなりに文明が発展していることが分かった。通信が回復するまでしばらくこの星に身を寄せるのも良いかもしれない。宇宙人がそう思った時にそれはやってきた。

 偵察のために低空飛行していると、後ろからものすごい速さで長細い棒状のものがこちらに迫ってきたのだ。


「この星の発明品おっかない……‼︎」


 それはいわゆるミサイルというもので、それに気づいた宇宙人は慌てて避けようとする。しかし、ミサイルがぶつかってくる方が遙かに早かったので、そのまま衝突してしまい多田の家に見事落下してしまったのだ。



「というのが事のあらましダ」

「だからって、なんでこんなピンポイントに俺の家に墜落してくるんだよ⁉︎ てか見事ってなんだよ。こっちは良い迷惑なんだが?」

「偶然そこにオマエの家があったからダロ」

「おい」


 一連の出来事を聞いた多田は、あり得ないと言いたげな表情を浮かべた。兎にも角にも、UFOがここに突っ込んできたという事実は覆すことはできない。そうなると、問題はただ一つ。この先どうするかだ。ひとまず、目の前にいる宇宙人の意見を聞いてみるか、と思った多田は尋ねてみる。


「この機体はミサイルとオマエの家にぶつかったせいでしばらく動かないし、通信を取ろうにも気のしていないからナ。住むところがないからオマエの家に住まわせろ」

「いやなんでそうなるんだよ⁉︎」


 宇宙人の返答に光の速さでツッコミを入れる多田。何食わぬ顔でとんでも無いことを言い出した宇宙人に、何がどうなったらこういう思考になるんだと、多田は頭を悩ませるのだった。

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