第21話 決意

「すげーな。その顔」


翌日クラス中が俺の状態を見て、注目してきた。


「・・・・・ほっといてくれ」


「優美ちゃんおはよー。珍しいね1人でなんて」


遅れて優美ちゃんが登校して来ると一部の女子達が普段とは違う光景にすかさず声をかける。

「うん。寝坊しちゃって・・・・・」


「神谷くんボロボロだけど、なんかあったの?」


「・・・・・・」


何かを察したのか一部の女子達はそれ以上の追及を避けた。


「はーい。皆おはよう」


おばさんが普段通り教室に入ってくると、一瞬俺と優美ちゃんに視線を送ったように感じた。だがそれだけで何事もないかのようにHRを始めた。



学校を歩き周るたびに視線を集めた居心地の悪い1日が終わる。優美ちゃんがクラスメイトと帰宅したのを確認すると俺はとある場所を探し始めた。


(確か格技場だったよな・・・・・)


威勢の良い声のするもとに足を運ぶ。格技場では胴着を着た男達が組合をしている。


(違ったか?)


「どうした1年。柔道部に入部するなら声をかけねば始まらんぞ?」


その声・・・・・あんたを待っていたと内心呟く。


「・・・・・お前あの時の。随分なザマだな」


「昨日はありがとうございました」


「気にするな。・・・・・それを言いにきたのか?」


「えぇ。・・・・・剣道部は今日はやってないんですか?」


「格技場はローテーションでな月水は剣道部。火木は柔道部。金曜は交互に時間を区切って活動している。丁度入れ替わりの時間というわけだ」


「そうなんですね」


「なんだ、剣道に興味があるのか?」


「いや、まあその・・・・・」


「ハッキリしろ。みっともない」


「はい。俺強くなりたいんです!今度はちゃんと守れるように」


「なぜ剣道なんだ?強くなるなら他の方法はあるはずだ」


「えっ」


「格闘技でいえば、ボクシングやKー1、キックボクシング・・・・・最近ムエタイのジムも見たな。それこそ柔道でもレスリングでも自分の力をつけるならそちらの方がより現実的ではないか?剣道はあくまでこの木刀がなければ何の役にも立たない。それはお前の目指す力とは関係が無いのでは無いか?」


「・・・・・相手を傷つけたいわけじゃないんです」


「ほお。だが木刀は言い方を変えれば武器だ。使えば格闘技とは比べ物にならない傷を簡単に負わすぞ」


「貴女に助けられた時。朧気ですが貴女はその存在感だけであいつらを退散させた」


「美化し過ぎだ。一太刀浴びせている」


「その一太刀だけだ。俺達2人を後ろに抱えながら最終的には誰一人怪我させることなく追い払った」


「・・・・・・」


「喧嘩や格闘技のような傷つけ合うことはどうしても性が合わない。ならせめて俺がいたら手出し出来ない。そんな風に相手に思わせることが出来るようになりたいんです」


「・・・・・色々剣道を美化しているようにも思えるが、まあ及第点だろう」


「じゃあ・・・・・」


「剣道もあくまで古来から脈々と受け継がれる武の道から派生したモノ。その本質は力だ」


「・・・・・・」


「だが、お前が掴もうとしている本質がこの木刀にあるというのなら。見つけるがいい」


「はい」


「歓迎しよう1年。私は剣道部主将の『剣持薫(けんもちかおる)』だ。よろしくな」


「よろしくお願いします」


こうして俺は自分を鍛えることにした。今度こそ誰も悲しませない為に


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