第20話 沸き上がるもの

「!!優太!!!」


目を覚ますと母さんが力強く俺を抱きしめた。


「痛い」


「あっ、ゴメン」


「母さん・・・・・ここは?」


「安心して。家よ」


「優美ちゃんは?」


「ここまで送ってくれて、お家に帰ったわ。・・・・・すごく謝られた」


「謝ることなんてないのに・・・・・・」


「・・・・・・優太?」


「ダサいな・・・・・俺」


自然と涙が溢れ出る。


「・・・・・」


「優美ちゃんが襲われそうになるのを、止められなかった」


「でも、守り抜いたんでしょ?彼女を」


「いや・・・・・・偶然通りかかった女子に助けられた」


「女の子に?」


「うん。・・・・・竹刀持って襲い掛かって来た男達を追い払ったんだ」


「そう・・・・・・」


「力の差なんてわかってた。俺まともに喧嘩したことないし」


「うん・・・・・・」


「でも、優美ちゃんを守れなかったら後悔するって思ったから、前に出た」


「そう・・・・・」


「母さん・・・・・俺って弱い?」


「・・・・・・」


「俺ってまだまだ弱虫の甘えん坊なのかな?」


「そんな事ない」


母さんは再び俺を抱きしめる。


「優太がその時恐怖に打ち勝って前に出て、ボロボロになっても必死に食らいついたから助けが来たんだよ?」


「・・・・・・」


「恐怖に打ち勝つのって凄く難しいこと。痛みを伴うことならなおさらね。私は恐怖に打ち勝って大切な人を守ろうとした優太が凄く誇らしいわ」


「!?母さん!!!」


そのままの勢いで母さんを押し倒してしまう。


「・・・・・甘えん坊さんは確かかもね」


優しく頭を撫でる母さん。すると勢いよくドアの開く音がする。


「優太!」


「おば・・・・・グフッツ!!」


おばさんの力の籠った左拳が突き刺さる。


「ちょっと雪子!!なにするのよ!!!」


おばさんに胸倉を掴まれる。


「あんた!なにカッコつけてんのよ!!まともに喧嘩したことすらないくせに」


「おばさん・・・・・」


「雪子!その場面ではしょうがないんじゃ・・・・・」


「なんで自分の実力をわかってながら新垣を連れて逃げなかった!」


「!?」


「あんたが瞬時にその判断を下していたら、こんなことにはならなかったんじゃなくて!?」


「それは・・・・・」


「あんたが傷ついて悲しむ人がいること少しでも想像したの?」


おばさんの目には薄っすら涙が溜まっていた。


「例えあんただろうと、真理を悲しませるようなことしたら。あたしは許さないから・・・・・・わかった!?」


「うん。ごめんなさい」


「・・・・・でも」


「?」


「自分で困難な状況を打破しようと試みた姿勢だけは評価するわ」


「おばさん・・・・・」


そう言い残して、おばさんは珍しくそのまま立ち去った。

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