第6話 南国の海
「ヤッホー!!」
透き通る海を目の前にはしゃぐ8歳と34歳。
「優太はまだしも、なんで雪子まではしゃいでるのよ?」
「あら?こんな綺麗な海を見てはしゃがない方がおかしいわよ。ねぇ優太?」
「お母さんも早く!早く!!」
「あっ優太!1人で先走らないで!!」
「……………それにしても、なによその水着」
「えっ?どこか変?」
「あんたね…………まぁいいわ」
「?」
お母さんの姿を見て溜息をつくおばさん。何故溜息が出るのか僕にはわからなかった。
塩辛い水を掛け合い、ギラギラの日光に焼かれた砂で城作り、お母さんの声を頼りにスイカを割りに向かう。あんなにハジャイでいたおばさんは、パラソルの下でのんびりして、迫り来る波に抗うように泳ぐをひたすら繰り返す。
気づけば僕は、刺激的な水着で優雅に泳ぐおばさんを目で追っていた。
「雪子〜。優太がスイカ割ったけど食べる〜?」
パラソルに戻ろうとするおばさんにお母さんが声をかけた。
「…………随分歪ね」
「まぁ、スイカ割りで割ったスイカだから」
お世辞にも綺麗に割れたとは言えないスイカにお母さんはフォローをしてくれた。
じーっとこちらを見るおばさん。
「………甘いもの食べたかったし、いただくわ」
何故か無性に嬉しかった。
パラソルの下でスイカを頬張る僕達。
「真理。久しぶりにアレやらない?」
「えっ!?アレやるの?」
「アレ?」
「スイカ割りした時のお遊びよ」
恥ずかしそうにするお母さんを余所に、おばさんは勢いよくスイカを頬張る。
「どっ、どうしたのおばさん!?」
おばさんの口から勢いよく黒い弾丸が飛んでいく
「おーーー」
黒い弾丸の飛距離に僕は目を輝かせた。
「やっぱり久しぶりだからかしら?衰えたわ」
「…………お母さんもやるの?」
「わっ、若い頃の話よ」
顔を真っ赤にして慌てふためくお母さん。
「ノリ悪いわね〜真理」
「あのね。昔は若気の至りでやったけど…………」
「ってことは、今はおばさんってことを認めるのね?」
「……………」
お母さんも勢いよく頬張り出した。
「おっ、お母さん!?」
相反する感情が行ったり来たりする。そして…………
「はい。あたしの勝ち〜」
羞恥心に抗っていたお母さんに勝ち目は無かった。
「罰として3人分のジュース買ってきて」
「え〜」
「あら、あの頃に比べたら優しいゲームじゃなくて?」
曇るお母さんの顔
「…………なにがいいの?」
「そうね〜〜シャンパン!」
「そんなの売ってる訳ないでしょ!?」
「じゃああんたのセンスに任せるわ」
「えっ!?」
「今あたしが飲みたい物。当然親友のあんたならわかるわよね?」
「おまかせにして勝手にハードル上げないでよね!………優太は何がいい?」
「う〜ん。コーラ!」
「わかった。じゃあ買ってくるから、優太のことよろしくね」
「ハイハーイ〜」
駆け足で飲み物を買いに行くお母さん。
「優太〜悪いんだけど、拭くものとってくれない」
「どうしたの?」
「スイカの汁が飛び散ったのよ」
よく見ると際どい部分に確かにスイカの汁が飛んでいる。
「おっ、お姉さん………はい!」
「ありがとう〜優太〜〜!」
「ウグゥ~」
タオルを渡そうとすると、おばさんは僕を自分の身体に引き寄せた。
「ホントはあの時羨ましいって思ったんでしょ?」
「あっ、あの時?」
「あんたの友達がテニスボール返してくれた時」
「〜〜〜!!」(やっぱりあの場にいたことバレてた〜!!)
「そっ!そんなことないよ!?」
「あらそう。今も仕切りに私の胸を見てたりするからそうかな〜って思ったけど」
(視線送ってたこともバレてる〜〜!?)
「ほらほら、甘えられるチャンスだぞ優太」
「〜〜〜!!」
おばさんが水着ということもあり、僕の顔が谷間に埋まる。
一進一退の攻防がここに幕を開けた。
「お待たせ〜…………どうしたの優太」
少ししてお母さんが戻ってきた。
「ナンデモナイヨ」
「そう…………ならいいけど」
「さぁっすが真理。わかってる〜」
美味しそうにお母さんが選んだ飲み物を飲むおばさん。
その後眠るまで、おばさんの一挙手一投足にドキドキする自分がいた。
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