第5話 反省
(あ〜〜暑い…………クーラ効いてないのかな)
とある日のこと、暑さでうなされる僕。
(なんで身動きがとれないんだろう…………)
うっすらと目を開けると…………目の前におばさんがいた。
(うぇっ!?おばさん!?なんで!?)
「スゥー…………スゥー…………」
僕に腕を回しながら、起きていることを気にも止めず寝息を立てるおばさん。
(ちょっ、おばさん!)
腕を振りほどくと身体は上を向き、おばさんにしては珍しい無防備な姿になる。
(どうしよ〜〜〜)
それから僕は、一睡も出来なかった。
「おはよう〜」
お母さんが起きたタイミングで僕も寝室から出る。
「おはよう優太。早いわね、よく眠れた?」
「う〜ん、あんまり」
「そう…………昨日あんなにハジャイでたから、気持ち良さそうに寝てるなって思ったけど、いつもと違う環境だと優太は寝れないタイプなのかな?」
なんとなく理由を述べるのは止めた方がいいかもと思った手前お母さんの推察に話しを合わせる。
「流石、南の島ね!優太もいつもと違う陽射しを浴びてみなさい」
そう。僕達3人は今、南の島にいる。おばさんの別荘で1周間リゾート気分を満喫している。
「雪子ったら、いつまで寝てるつもりかしら………」
先に朝食を済ませたが、おばさんはまだ姿を見せていない。
「僕、起こしてくるよ」
「あら優太。悪いわね」
「お母さんはゆっくりくつろいでいてよ」
「ありがとう」
僕に用意された寝室に戻る。おばさんはおヘソを出してまだ気持ち良さそうに寝てる。
「おばさん………起きて」
「!!」
「ワッワッ!おばさん!!」
いきなり目を見開くとおばさんは僕に襲い掛かってきた。
「お姉さんでしょ?優太?」
寝起きだからか、いつもよりキツめの拳骨グリグリをやられる。
「痛い、痛いよ!!おっ………雪子姉さん」
「よろしい。…………まさか私がそう呼ばれると反応すると見越して…………やるわね優太」
おばさんらしくない考察に相槌を打ちリビングに誘導する。
「くぅ~。たまの家庭的な味は滲みるわね〜」
「貴女いったいどんな物食べてるのよ?」
「選りすぐりのシェフ達に作らせる。一流料理よ」
聞いた自分が馬鹿だったと言わんばかりに溜息をつくお母さん。おばさんの呆気からん顔がより一層その思いを強くさせたみたいだ。
「さて、私も朝食食べ終わったし。今日はどこに行く?」
「まずは優太の宿題よ」
「えぇ〜!後で〜」
ダダをこねる8歳と34歳。
「やることさっさと終わらせて、心置きなく遊びましょ」
「…………それもそうね。優太頑張りなさい」
「えぇ〜」
「じゃあ私はフラフラしてるから、終わったら教えてね〜」
「おっ………お姉さんも手伝ってよ!」
「あんたね。目の前に教えることに関してプロフェッショナルな人物がいるじゃない。プロから教わりなさい」
こうして起きて早々、学校の課題に取り組むという、バカンスとは程遠いイベントが始まった。
「…………優太。余所見しない!」
「だってー、おばさんコレ見よがしに見せつけてくるじゃん!」
庭にあるプールで浮き輪に浮かびながら、読書をするおばさんが羨ましい。
「あれでも雪子は勉強してるのよ」
「ホントに?」
「…………多分」
「聞こえてるわよー」
自分に関する事にはとことん地獄耳なおばさんは、プールから上がり部屋に戻ってきた。
「あんた達には一生かかっても理解出来ない内容よ」
「……………」
「なによ?」
「バスローブくらい羽織ってよ!優太の教育上良くないじゃない」
「まだそんな年頃じゃないわよ」
おばさんは僕を見ながらニヤリと微笑む。その見透かされているような視線に僕は思わず目を逸らす。
「優太〜。早く終わらせてね〜」
「あのね〜。雪子からしたら簡単かもしれないけど、優太には優太のペースがあるのよ!」
「その程度の問題に躓いていたら、これから学んでいくことなんて大変よ〜」
「雪子!!」
「まっ、それをどうにかするのがあんたの仕事なんだけどね~真理」
「……………」
マズい……………。急に汗が止まらなくなる。ただ暑いからだけでは無い、これは…………
「優太…………。必ず雪子を見返すわよ」
「ハッ………ハイ!」
この日の半分は学校の課題に追われた。
「…………あんた半日も缶詰めにするなんて……………鬼ね」
空がオレンジ色に差し掛かる頃。ようやく地獄から開放された。
(こうなったのはおばさんのせいでしょ〜!?)
一瞬そんな事が過ったが、頭の中はそれどころじゃ無かった。
「優太が本気になれば、こんなものよ!ねっ優太……………優太!?」
お母さんが必死になにか話しかけている、お母さんがどうしてそんなに慌てているのかが、僕にはわからなかった。
「ウーン〜」
「気がついた?」
おばさんが、グラスを片手に窓の外を眺めている。何故か僕は寝室にいた。
「あれ?僕リビングで勉強してたはずじゃ…………!?」
隣では僕の手を握りながらベットに伏せて寝るお母さんがいる。
「お母さん、どうしたの?」
「ちょっと誂うつもりが、やりすぎたわ」
おばさんは、こちらをみようとはしない。
「?」
「あんた覚えてない?今日丸一日勉強してたのよ」
おばさんに言われて思い出す今日の出来事。
「終わった直後にあんた、詰め込み過ぎて気を失ったのよ」
「そうだった…………」
「あの後真理…………やり過ぎたって大泣きしてね。私のせいであんたがって…………死んだわけでも無いのにね」
「お母さん……………」
「あんたのせいじゃないって何度も言い聞かせたけど、こういう時の真理ってホント頑固だからね…………あんたをベットに寝かせてずーとその状態よ。まぁ寝たのはついさっきだけど」
「……………」
「心配してたしあんた起きたなら真理も…………」
「おばさん。お願いがある」
「なに?」
「お母さんを起こさずに、このベットに寝かせてあげて欲しい」
「嫌よ。重いもの」
「……………」
「……………わかったわ」
おばさんはお母さんの腕を自分の肩にかけると、丁寧にベットに横たわらせた。
「これでいいかしら?」
「ありがとう。おばさん」
「…………んじゃあたしも寝るわ。おやすみ」
「おやすみ。おばさん」
おばさんは、返事をせずに扉を閉める。
僕は再び布団を被り、お母さんの寝顔を見ながら再び眠りについた。
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