第五章 紅楼春雪抄 4

「くそっ誰だこんなことしやがったのは」

 忌ま忌ましげに言いながら、オライオスは短剣を引き抜いた。目の前には長く引かれた導火線があって、その先には先程と同じ金属の箱、導火線には火が点けられていて、シュシュシュシュ、という音で彼を焦らせ、物凄い速さで箱を目指している。オライオスは箱から程遠い場所で短剣を導火線に突き立て道を断った。それと同時に部下が箱の中の火薬に溢れるほどの水を注ぐ。

「今ので幾つめだ」

「二十七個です」

 オライオスは短剣を仕舞い、立ち上がりながら舌打ちをした。

「ちっ……一体いくつ仕掛けたんだ。一個でも爆発すれば大変なことになるぞ。おい、地図だ」

 オライオスは宮殿の縮図を部下に広げさせた。

「こことここと始末してこっちは別隊が行ったからいいとして」

「将軍こっちにもあります!」

「こちらにも二つあります!」

「二人一組でやれ! まさか俺の下にいてそんなこともできないなんて言う奴はいないだろうな」

 オライオスは命令を与えてから地図を見つつ側近を探した。側近もまた汗みずくになってあちこちの火薬を処理していた。

「閣下」

「いくつあった?」

「三十ほども……・」

「場所を示してくれ。大体の規則が見えてきそうだ」

「はい。第二回廊脇、第二回廊中庭先、南の凰回廊に三個、北階段四つ、北回廊碧の通路と青の通りにそれぞれ五つ……」

 側近が次々に言う場所をオライオスは爪で印をつけていき、その内あることに気が付いた。

「なんだこりゃ……広間を取り囲むようにして仕掛けられてるじゃねえか」

「とするとほとんど除去したことになりますね」

「もう一度点検しないとな。この規則性が間違いだったらコトだ」

「はっ」

 オライオスは騒ぎにらならないよう細心の注意を払いながら、しかし敏速に行動した。

 使った人数が多かったからよかったものの、そうでなかったら今頃はどうなっていたかもよくわからない。とにかく一時間ほどもして、時間差で点されていた導火線の火も全て消し、オライオスがホッと一息ついた頃だった。

「うん?」

 彼は地図の道の中で、気が付かないほど細い道を発見した。広間のすぐ側である。

「おいこれは?」

 側近に聞くと、しばらくわからなそうな顔をしていたが、やがて、

「ああ、確か昔王族の方が広間に入るのに使っていた道だそうです。今はほとんど使われていません」

「ここから発見したか」

「いいえ」

「…………」

 オライオスの沈黙に側近もようやく気が付いたようだ。

「!」

「参ったな……!」

 バタバタバタ……二、三人が慌ただしく走る音が回廊に響いた。



 その時スキエルニエビツェは、王妃に教わった小さな廊下から自分の部屋に帰るところだった。今の王の先々代くらい前までは使っていたそうだが、あまりにも細く、王の両脇に護衛がつくことができるのはいいとして、抜刀できないほど狭いので、危険だからという理由で最近は使われていない。人目を忍んで退室するのには絶好だと考え、スキエルニエビツェはそこから帰ることにしたのだ。

「?」

 なにかきな臭いな、と思ったが、気のせいだろうと思った。宴の後というのは、広間の食事や熱気、酒の匂いなどが充満しているせいか嗅覚が狂う。これもきっと気のせいだろう。シュシュシュ、という早い音がした。空耳だろうか。それにしては随分と長くはっきりと聞こえる。自分の衣擦れの音だろうか。立ち止まってみる。

 しゅる、しゅる、しゅる。

 変だ。さっきよりはっきりと聞こえる。空耳ではない、なにかある。スキエルニエビツェは道からそれて柱の方を見てみた。もっと先にあるようだ。暗がりを行くと、小さな火花がちりちりと奔っているのが見える。音の正体はこれだ。その先に何か光るものがあるので、何かと思って屈んで見ると、小さな金属の箱だった。

「?」

 そっと開けて見て仰天した。この黒い粉が火薬だということくらいはわかる。

 シュルシュルシュル……・。導火線の火がこちらへ迫ってくる。

「あら……」

 スキエルニエビツェは周りを見た。何もない。

「困ったわね……」

 さして困ってもいないように、彼女は呟いた。



「急げ! 時間差で言えばまだ間に合うかもしれん」

 オライオスは叫んだ。

 オライオスは目指す小さな通路に辿りついてきな臭いのに気付き焦った。柱の影に決まっている、誰があんなものを見つけやすい場所に置くものか。

「あったぞ」

 呟いたオライオスだったが、思わず目を凝らした。

「? ……」

 導火線の真ん中辺りで、導火線は切られていた。近付いてみると、短剣でもなく仕掛け針でもなく、それは平打ち簪だった。

「閣下……? ―――――それは……」

 ざっくりと突き刺さった簪。これが導火線の火を食い止めたことは子供でもわかる。

「……・一体誰が……・・」

 呟く側近の声を聞きながら、しかしオライオスは簪を見て思った。

 この簪……見覚えがある。



 窓から庭を見ると、誰かの笑い声が聞こえてくる。宴はまだやっているようだが、自分が退室してそんなに時間が経っていないのは、月の位置を見ても明らかだった。髪を梳かし終わり、鏡の前でふう、とため息をつくと、スキエルニエビツェは月明かりと側の燭台の灯りだけに照らされた部屋を見た。蒼い光が秋の訪れを告げているかのようだ。砂漠だから庭の緑は大したこともなかろうと思っていたが、案外砂漠の街というのはどこも緑が多いようだ。その代わり街でない場所には本当に砂しかないのだが。鏡台の前でもう一度

ため息をついたのは疲れからではない。暑い暑いと思っていた砂漠の秋の訪れ方に感心してのため息なのだ。部屋に戻ってまず最初に普段用の襲に着替えたし、後は湯を浴びるくらいかとスキエルニエビツェが考えていた時だ。

 誰かが部屋の扉を静かにノックした。

「…………」

 スキエルニエビツェは一瞬考え、それからすぐにはい、と答えて扉を開けた。

「-----------」

 そこにはオライオス将軍がいた。背の高い将軍が扉の外にいるとは知らず、彼の首が目の前に突然現われて少々面食らったスキエルニエビツェであったが、顔を上げてすぐに彼だとわかり、笑顔になって言った。

「ご機嫌よう。何か?」

 珍しく固い顔をしていた将軍がサッと手を差し出した。そこには簪が握られていた。

「---------」

「これはお前のだろう」

「……そうよ」

「やっぱりな……じゃああれはお前が」

「助けを呼ぶには知られていなさすぎた廊下だったし、騒いでも陛下の面目がたたないかと思って。大丈夫だったかしら」

「だから今俺が生きてる」

 ふふ、とスキエルニエビツェは笑った。その笑顔を眩しそうに見て、オライオスは簪を差し出した。

「とにかく助かった。これは返すよ」

 受け取り、スキエルニエビツェも、

「ありがと。この簪はお気に入りなの」

 と言った。

「それにしてもよく私のだってわかったわね」

「好きな女が見につけてたものは覚えてるさ」

 そういえば彼と初めて話した日に指していた簪はこれだった。スキエルニエビツェは苦笑して、もう一度礼を言った。

「お礼にお茶でも、はないのか?」

「二回も言ったしそんな時間じゃないわ」

「不粋だなあ。襲うとでも思ったのか」

 廊下で微かに身じろぎする気配があった。鋭く気が付いてスキエルニエビツェは、にっこりと笑って言う、

「部下の方もご一緒にお茶を飲むのに?」

 オライオスは一瞬自分の脇を見たが、唇を尖らせて答えた。

「ちぇっばれたか……まあいいや、またな。本当に助かったよ」

 くすくすと笑いながらスキエルニエビツェは扉を閉めた。閉めようとした。お、という声がして、

「?」

 と思っていたら、

「お前は葛の花だ」

 と扉を押さえて男は言った。

「え……? 葛……」

「紫紅色。おれの知っている紫と紅色の花だ。葛の花」

「------------」

 じゃあな、と男は言った。その顔は、とても得意げであった。なにかを成し遂げた子供のようであった。

 スキエルニエビツェは今度は、ちょっと呆気に取られてその背中を見送った。こんな男は初めてであった。

 スキエルニエビツェは簪を引き出しにしまい、バルコニーに出て大きく息を吸った。

 もう秋の匂いがした。



 ライグゥアラック・ザファイオン。不運の男。

 その人生の多くは不遇に満ちている。と言っても彼は何の才能にも恵まれなかったわけではない。むしろその逆だ。豪快な剣の技は既に十五歳で完成し当時の将軍たちですら手合せを嫌がったほどだ。砂の上でも埃の立たない見事な乗馬術、色に対する感覚が鋭く、冬の歌合わせの会の際自分の女官に紫・紅、縹(青)・青(緑)、山吹・紫のそれぞれ三種類の襲を纏わせ、雪の上を歩かせた時の美しさは、今だもってして語り継がれている。

 豪快で大胆なのに雅を愛し、出掛けようとしてふと窓を見た時、かさりと葉が一枚落ちたのを見て、落葉に行くなと言われたので出掛けるのは取りやめにすると言ったこともあるという。空色の瞳は知性と勇気とに溢れ、幾つになってもじっとしているのが嫌とでも言いたげな熱いものに包まれている。少年のような無邪気さと紳士のような優雅さを備えた物腰は、女たちを魅了しつづけてやまない。

 それでも、ライクの人生は不遇に満ちていた。

 小さい頃から何をやっても褒められた記憶というものがなかった。

 砂漠の教育というのは他国とは少し違っていて、王族の子供も他の一般の子供と共に教育を受ける。厳しい環境の元での協調性を幼少時より育てるためだ。

 父親は立派な人だった。公平で、誰からも尊敬され、勇ましい父親だった。男の子ならそんな父親に褒められたいと思うのはごく当然のことだろう。ライクはいつも、なにをやっても一番だった。どんな作品を造るのだって彼の年齢にそぐわぬ精巧さと緻密さは群を抜いていた。それでも彼は、父に褒めてもらったことなどなかった。

「父上、見て下さい学年で一番だったんです僕の彫刻」

 しかし父は答える、お前の兄は学年で一番だったぞ、同じ一番でも歳が上なだけ兄のほが大変だった。レグノテックは本当によくやった。

 それだけである。兄の引き立て役で終わってしまった瞬間。年齢が違うのだから比べても意味のないという矛盾、歳が上なだけ一番も難しいという訳のわからない理由。ライクの不満は毎日毎日降り積もっていた。母にしても同じだった。

 ライク、どうしてあなたはそんなに落ち着きがないの、兄上を少しは見習いなさい。ライク、どうして兄上みたいにしないの、兄上はあんなにできるのに。ああもうあなたを見ていると苛々するわ、少しは兄上みたいに心を落ち着かせてちょうだい。

 そしてしまいにはこう言う、

 まあいいわ、将来王になるのはあなたではないのだから。

 彼の幼少時代がいかに不幸かは両親の態度を見ていれば一目瞭然だ。子供というのは無条件の愛情を与えてくれる親に認められてこそ他人に認められる自分に納得がいく。そうでないと、親にも愛されず認められていないような自分などを認めるのは、同情しているだけに違いないと思ってしまう。憐愍だと。本当は認めてはいないのに可哀相だからそう言っているのだ。そう思い込んでしまう。

 ライクもそうだった。なぜだろう。どうして自分は親に愛してもらえないのか。その理由は長い間わからなかった。あれだけ兄と比べられ、落としめられる対象とされているのに、彼がそんなにも長い間気が付かなかったのには理由がある。

 兄弟の仲がとても良かったからだ。理想を絵に描いたような仲の良い兄弟だった。一緒にいない時などなく、片方が笑えば片方が幸福に、片方が泣けば片方が悲しみ、そして悲しませた相手に怒りを感じる。いつもいたわり合い、支え合ってきた。だからライクは、自分が愛されない理由が兄にあるということになかなか気が付かなかった。気が付いても、心は曇ったように鉛色で、相変わらず重苦しいことに変わりはなかった。兄が愛されるのは当たり前だったから。兄ほど素晴らしい人間はいないと掛け値なしで思えたから。

 そして、そんな兄がいたとしても、もう片方の弟に愛情を注がないのは、兄が悪いのではなく親の方がおかしいのだということに、賢いライクは気が付いていた。だから兄を憎むなどできなかった。しなかった。兄をこよなく尊敬し、また愛してもいたから。兄はいつも落としめられる自分を気遣い、そんなことはないよ、お前は凄いよと心の底から言ってくれた。それだけが彼の救いだったといっても過言ではなかった。

 心寒い幼少時代……。間もなく青年期を迎えた二人の周囲には、二人の意志に関係なく二人を対立させようという人間が多く群がっており、二人は否応なくその渦に巻き込まれたこともあったが、それでも相手を信用し、愚かな真似だけはすることがなかった。互いに賢いゆえの平和であった。

 しかしなにをやっても、言うなればいくら努力をしても報われないという燻った煙は確実にライクの心を荒ませてもいた。本能のように植え付けられた劣等感。兄を愛しながらも、その兄を疎ましく思う自分が確実に存在する。やりきれなかった。ライクの不幸は、人よりもあらゆる面で抜きんでた才能を持っているということだった。これでまったくできない人間ならば諦めもつくし、兄の片腕に撤しようとも思うだろう。しかしライクは非常に優れた才能を持つ男である。たまたま、そうたまたま偶然に、それ以上に才能ある兄を持ってしまったというのが彼の不幸なのだ。いや、そんなことは彼の不幸ではなかったのかもしれない、兄弟で稀有な才能を持つことはむしろ幸せなことだ。彼の真の不幸は愚かな両親を持ったことに他ならない。殲滅寸前の部隊を救援に行って見事勝利しても、よくやったの一言もない、そんな親と名乗る権利すらないような者たちの息子として生まれてしまったことに彼の不幸があるのだ。父が死に、続いて母が死んだ時、はっきり言ってほっとしたのを記憶している。やっと解放されたのだ、と。自分を認めないような愚直な親をさっさと捨て、認めたくなければ認めなくてもいい、自分の価値は自分で知っていると思う事が出来ればよかったものの、いつまでも認められたい、そんな親が死んで解放されたと思っている彼は、実は今だ親に呪縛されているという事に、一向に気が付いていなかった。

 兄のレグノテックと弟のライグゥアラック。

 どちらを王位に即けるかで両方の支持者が揉めたことがあった。愚かな支持者たちはライクを利用することで自分たちがより利益をもたらされるようはからいたかっただけだった。しかしライクはそれに一縷の希望を見い出した。

 国王。葵剣の国王ライク。

 なんと甘美な響きなのだろう。今まで欝屈してきた気持ちが初めて晴れ、救われたような思いがした。自分の実力を発揮し、人々に慕われ、愛されたい。そう、今まで何をやっても一向に認められなかった自分の実力、他人より優れていて恵まれているはずの自分の燻っていた実力を、国のために生かしたい。初めて自分の才能を生かすことができるかもしれない。ぜひやりたい。ライクは張り切った。王位継承権の優位など、とっくに頭から消え去ってしまっていた。賢いライクの目を濁らせるほど、彼は今まであまりにも恵まれなさすぎたのだ。

 しかし運命はまたも彼を裏切った。どうやら兄に優位な方向で話が進み始めた頃、ライクはたまらず兄の元を訪れた。変わらず賢く、変わらず愛する兄。

「兄上……俺は王になりたい。王になって自分の実力を生かしたいんだ」

 兄はしばらく答えなかった。まだ目の醒めないライクは、兄が承知してくれるものだとばかり思っていた。今までライクの頼みはなんでも聞いてくれ、そして自分のせいでこんな扱いを受けるライクを、なにより気遣っていた兄だから。

 しかし兄は、見たこともないほど苦渋に満ちた顔で答えた。

「ライク…………それはできない」

 目の前が真っ暗になった瞬間だった。平衡感覚が失われ、床が突然口を開いて底無しの闇へ落ちていくような感覚に襲われた。

「兄上……」

「……・・済まない。お前が王になれば素晴らしい王になると思う。しかし長兄で継承権一位の私が何の理由もなく王位を捨てれば周囲が黙ってはいないのだ。ライク、私は王にふさわしくないと思うか?」

「そんな! 兄上は国王になるために生まれてきたような人だ」

 兄は苦笑する。いつも謙虚で……できるなら王位を弟に譲ってやりたいとまで考える優しく才能溢れる兄。

「私がせめてうだつの上がらないだめな男なら。普通以下のどうしようもない男ならお前にそれをすることも可能だったのに……済まない。私は天才でもないかわりにどうしようもない男でもない……ライク……私を押し退けて王になり、私の支持者を従えることはできるだろうか。立場が逆として、私がお前に王位を譲ってもらったとしても私にはそれは無理だ。それほど彼らの影響力は強い……下手をすれば……内乱になるだろう」

「!―――――」

 そんなこと……考えもしなかった。だがそうだ。

 内乱の起きた国の内情の惨めさは、千の書物をもってしても語り切れない。民は飢え、疲れ果て、絶望する。そくんな国に決してしてはならない。本を読みながら、少年であった頃のライクは唇をかみしめてそう痛感した。

 ライクはどれだけ自分がのぼせていたかを思い知った。全身が熱くなり、それによって恥を感じることでますます痛感した。

 利用されていた……。

 自分はどうしていつまでたってもこうなのだ。

 ライクは王宮を離れ、離宮に移り住んだ。兄に会うのは年に一、二度がいいところ。燻り続けて黒い煙を上げた心は次第に捻じ曲がり、心の底で慕っていながらにして国王になった兄を困らせ、憎まずにはいられなかった。憎むことが筋違いだとは思いながらも、そうでもしなければ自分のやり場のない怒りと苦しみと悲しみと憎しみが自分の心を蝕んでしまいそうだった。

 そしてもう一つ―――――どうしても許せない事実。

 兄は心の底から彼女を愛し、負けないくらい彼女も兄を愛している。王でなくとも彼女は兄を選んだだろう。

 兄に初めて心底憎悪を感じた瞬間だった。 



       十月小春梅蘂綻び

       紅楼画閣 新装遍し

       鴛帳の美人 睡りの暖かきを貪り

       梳洗懶し

       玉壺一夜 軽漸満つ

       楼上四垂して簾巻かず

     天寒くして山色偏えに遠きに宜し

       風急にして 雁行 字を吹いて断え

       紅日晩る

       江天雪意 雲 繚乱たり



「……」

 昔を思い返してバルコニーに出ていたライクであったが、今いる離宮からも紅楼にいるのが誰かがよくわかった。長椅子に横たわるようにしているのは王妃、愛する義姉タジェンナだろう。


 金の髪が一瞬きらめいた。側にいる黒髪は楽師だ。タジェンナは楽師と紅楼で話す内眠ってしまったに違いない、ライクは思った。あの楽師もやるものだ、正にあの歌と今のタジェンナの状況が重なっている。最後の余韻のリュートの響きが消えた少し後、楽師が眠ったままの義姉に一礼し紅楼を後にしたのを、ライクは見ていた。

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