第五章 紅楼春雪抄 1

 

       遅日 江山麗しく

       春風 花草香し

       泥融けて 燕子飛び

       沙暖かにして 鴛鴦睡る



 ある者は聞き惚れながら、ある者は談笑しながら、しかしその歌声に耳を傾けていない者はいなかった。年号桔は明けて八年、季節は三月。楽師スキエルニエビツェは砂漠の国葵剣に辿りついていた。葵剣は戦の多い国である。恐らく世界でも一、二を争う戦争国だが、それだけに戦いに勝った時の喜びは大きい。心が荒み、気持ちは苛苛とする。人は戦へ行き、砂混じりの風と共にため息も吹く。だから葵剣では戦争を決して日常のものとして扱わない。あくまで戦争は異端者、突然の祝福されない客として捉えられているのだ。

 スキエルニエビツェがこの国に来ることを決めたのも、そんな風習があるからという理由が大きく位置を占めていたことに間違いはない。

 国王レグノテック・ザファイオンはまだ三十という若さだが、葵剣開闢以来の賢王として世に名高い。 

 つやつやと流れる黒髪、強い意志を表した黒の瞳は、若い娘たちを随分と惑わせたものだが、二十六歳の着位と共に結婚してまた彼女たちを大いに落胆させた。至って真面目な男で、浮いた噂一つ聞かなかったが、そんなところも人々に愛された理由だろう。そう、国王はとにかく人に愛される人間である。これは天性というのか徳というのか、彼には欠点というものが存在しないのではないかと人に思わせるものがある。

 剣の道に秀で、学者も舌を巻きしきりに惜しがるその知力、馬を能くし、ため息をつくほどの絵の才能、楽器を弾かせれば楽師並みで、初めて手にするものでも二、三度手に慣らせば弾きこなしてしまうという。歌声は朗々としていて気高く、戦場でこの声に鼓舞されて力を得る兵士は非常に多い。性格は朗らかで気さくで、誰にでも別け隔てなく接し、何よりも公正を重んじ公私混同を一切しない。

 風流なものにも大いなる理解を示し、着位後の歌会では沈香と鏡の山水に銀の鶴をたて、金の花に銀の葉の八重山吹をくわえさせたものを洲浜の上に乗せたという。気が付くと彼の周りに人が集まっているというのは、もう昔からのことであった。まるで吸い込まれるような魅力的な男なのだ、スキエルニエビツェはそういう評判を聞いていた。この国に来たのも、尋常ならざる雅なところを見込んでのことだ。そしてスキエルニエビツェはそんな自分の選択がどれだけ正しかったかを実感し、満足に砂の地での生活を送ることができている。

 この日もまた戦勝を祝う宴、半年ぶりに帰ってきた将軍たちも交え、広間は和やかな空気に包まれていた。将軍たちはずっと葵剣を留守にしており、当然スキエルニエビツェと

顔を合わせるのは初めてのことだが、国王の雅びな紹介によって彼女は将軍たちに迎えられた。家を長く留守にし、家族や恋人とずっと離れ、死と隣り合わせの恐怖と司令官としての緊張からくる疲れから未だ解放されていない彼らにとって、スキエルニエビツェの歌声が乾き切った砂に甘露な水が沁み渡るかのように感じられたのは言うまでもないことだ

ろう。

 百合(表赤・裏朽葉)の衣装もあでやかに、スキエルニエビツェがリュートを弾く姿は彼らの心慰めになった。

 ホロン……

 とろけるような甘美で優雅な音色が響いた。



       瀟湘 何事ぞ等閑に回る

       水碧に沙明らかにして 両岸苔むす

       二十五絃 夜月に弾ずれば

       清怨に勝えず 却飛して来る


「美しい歌ですな」

「まったく……戦で疲れた心が安らぐ思いだ」

 将軍たちは口々に言いながら杯をかわした。あの美しい声に、お互いの勝利に、そして生き残れたことの幸運に。或いは不運。生命ある限り戦いに身を投じ、真の安らぎは生きている内には得られることはない。それでも戦い続ける、血の匂いと怒号の中を駆け抜けて生命を燃やすしかないのだ。

 そんな中、植物が置いてある中柱に寄り掛かって杯を片手に、じっとスキエルニエビツェを見つめている男がいた。



   五渡渓頭 躑躅 紅なり

       崇陽寺裏 講時の鐘

       春山 処処 行応に好しかるべし

       一月 花を看て 幾峰にか到る



「……」

 高い背丈。黒い髪に黒い瞳。鋭くも穏やかな光を帯びたその瞳……戦の時にはさぞかし敵を震え上がらせるであろう凄まじい慧眼になること間違いなしのその黒き瞳は、達人の常で光が失せ穏やかなものになっている。

「オライオス将軍」

 男に話し掛けた者がいた。

「ラムゼイ将軍……あなたでしたか。随分とご活躍と聞きました」

「いやいや、貴公には及びませんよ。西方では前代未聞の三地方の鎮圧に成功したとか。

 今日の宴はあなたのためにあるようなものだ」

「そんなことはありませんよ」

 少々困ったように苦笑いをして、オライオスは言った。

 オライオス・ヴァンケイオン。葵剣を代表する叩きあげの将軍だ。戦の度に驚くほどの功績をあげてくるが、本人はそれを少しも鼻にかけず、終始謙虚な態度で自分の功績は他の将軍の補佐あってのことだとか、部下がよくやってくれたからだとか言うので評判はすこぶる良い。彼はやろうとしてそういった功績を上げているわけではない、勿論勝つことを念頭に置いてはいるが、驚くほどの功績になるのはいつも戦が終わってからの結果に過ぎない。どこにでもいるのだ、自分はそういう最良の結果にするつもりはなくとも、いつのまにかその采配と度量によって予想以上の結果を生み出す事のできる羨ましい存在が。

 天はそれを「天才」と名付けて世に送った。正にオライオス将軍は戦の天才であった。

 そしてまた優れた器を特別に与えられた人間というのは、等しくではないがそんな自分の才能に対しては謙虚である。そうするつもりがなかったのにそういう結果になってしまったのは自分の才能ではないと信じているからである。一人では戦はできない、他の協力や優秀な部下がいるからこそ天に与えられた才能も発揮できようというもの、自分だけを褒められるのは心苦しいこと。オライオス将軍もその例に洩れない。彼は自分の手柄を部下に平気で譲ることで有名だ。結婚を控えた部下に敵国制圧の手柄を祝いだと言ってぽん

と与え、結局二階級昇進の婚礼祝いを贈ったということもある。ものに執着しない男なのだ。

 ラムゼイ将軍としばらく談笑して別れたオライオスは、またしてもスキエルニエビツェに目を向けていた。折しも数曲目に入ろうとしている。



       鳳城の景色 巳に韶を含み

   人日の風光 俉ます饒わしきを覚ゆ

       桂は半輪を吐きて此の夜を迎え

       冥は七葉を開いて 今朝に応ず

       魚は水の凍れるに狽き 行 猶お渋り

       鶯は春煕らぐを喜び 弄 嬌ならんと欲す

       登高を奉じて彩翰を揺かすを愧じ

       御気の丹霄に上るに逢うを欣ぶ

       


 美しい歌声も手伝ってか、宴はいつにも増して賑やかな盛り上がりを見せていた。それは決して常軌を逸する事無く、誰もが紳士淑女に振る舞う、それは気持ちのよい宴であった。穏やかな笑い声、適度にかわされる杯、美しい王妃と素晴らしい王、勇ましく誠実な将軍たち、そして美しい喉の楽師。すべてが完璧であった。

 ---------彼が来るまでは。

 バタン!

 穏やかな空気を破るための挑戦状のように、その扉はあまりにも乱暴かつ無遠慮に、そして突然開かれた。国王の表情が曇り、わずかに眉根が寄せられる。王妃はそんな国王を見てこれまた心配げに夫を伺い見る。

「これはこれは、兄上。ご盛会ですな」

「ライク様だ……」

「お戻りになったのか……・」

 人々の囁きを耳ざといスキエルニエビツェはさっそく聞いていたが、それらのどれもに共通しているのは、相手に対するあけっぴろげにはできないが明らかに好ましくない感情

であった。

 国王に兄上と……・それでは王弟?

 スキエルニエビツェはリュートの手を止めてその男に見入った。

 微かに灰色がかった銀色の不思議な髪。それがまた微妙に美しい光沢を放っていて、スキエルニエビツェは銀の玉虫色だ、直感的に思った。瞳は明るい青。空色でもない、だからといって青でも水色でもなく、明るい青色をしている。国王と比べて少々瞳が鋭いが、砂漠に生きていれば顔立ちが厳しいのは風土によるもの、またその瞳の鋭さが男を精悍に見せている。鼻筋は通っていて口元は引き締まり、なんとも高貴な額だ。それらが瞳の厳しすぎるのを和らげ、彼の品性をぎりぎりのところで良いものに留めている。なんとも危うい感じの漂うこの顔は巷でも宮廷でも女が放っておくまい。しかし国王と決定的に違うのは瞳の光に刻まれたわずかな悲しみと苦しみであった。なんともいえない苦々しい光。

「ライク……」

 国王が呻くように、これも辛そうな面持ちで呟くのに、ライクと呼ばれた弟は意地の悪い顔でにやりと笑った。

「おやおや、私がいては不愉快ですか。あなたらしくもない顔だ。どうしました? せっかくの楽しい宴でしょう、戦勝を祝う。そうして何度も何度も戦を広げてどれだけ領地を増やせば気が済むのでしょうね、あなたという人は……・」

 国王の眉が寄せられた。これが言い掛りなのは誰もが知っている。戦のほとんどは他国 解放のためにやっていることなのだから。

「ああそれとも、」

 痛烈な皮肉にその口元が歪んだ。

「あなたは人が傷つき死にゆくのを見たいだけなのかもしれませんね」

 国王の拳が人々に見えないところでぎゅっと握られた。それに気付いたのは位置的に王妃タジェンナとスキエルニエビツェだけ。

「ライク……退室を命じる。速やかにここを出ていきなさい」

 ふん、と王弟は鼻で笑った。

「それは兄としての命令ですか、兄上」

「---------いや。王としてだ」

「--------」

 ぴく、とライクの眉が動いた。憎悪に近い光を放っていた瞳からその光が失せ、冬の凍りついた湖のような無表情なものとなった。

「わかりましたよ、国王陛下……せいぜい意味のない宴を楽しんでください」

 ライクは踵を返して立ち去ろうとし、その時目の端に写ったスキエルニエビツェに一瞬視線を止めてから来たときと同じように唐突に出ていった。

 ざわざわと人々がざわめく中、国王は苦々しげに低い声で申し渡した。

「皆の者-------……・済まぬが今日はこれで閉会としたい。今回の戦は本当にご苦労であった」

 言うや、立ち上がって国王は出ていってしまった。残った者たちは少しの間ざわめいていたが、口々に何か囁きあいながら退室していった。

 スキエルニエビツェも小さくため息をつくと控えの扉から出ていき、廊下に出て部屋に戻ろうとしたが、その時後ろから誰かに声をかけられた。

 それは、自分が大広間にいる時からずっと視線を送っていた将軍―――オライオス将軍であった。

「----------何かご用ですかしら」

 スキエルニエビツェは先程あった兄弟間のいざこざの緊張から未だ解放されてはおらず固い表情で彼を見上げた。

「そう恐い顔をするなよ。とって食われそうだ」

「……」

 見かけとは違って随分気さくな男のようだ。スキエルニエビツェはそんな思いと彼の言葉から少しだけ反省して口元をゆるめた。

「そんなに恐い顔だったかしら……ごめんなさい。ところで、」

 スキエルニエビツェは顔に手をやって笑顔になりもう一度聞き返した。

「どういったご用件かしら」

「そうそうそのことなんだけど」

 にこり、笑ってオライオスは言った。

「俺と寝ない?」

「-----------」

 スキエルニエビツェ、しばらく声も出ない。

「……・そういう誘われ方は生まれて初めてよ」

「嫌か」

「情緒も何もあったもんじゃないわね」

 スキエルニエビツェは楽師である。楽師とは人の心の機微と自然の美を歌う歌人、だから非常に情緒と雅を重んじる。直接的なものを厭うわけではないが、だからといって誘い

方の直接さにも限界があろうというものだ。

「軍人の方は普通私のような流れ者を厭われる方が多いのだけれど」

「うん?」

「警戒されることが多いのよ」

「ああ……」

 オライオスはそんなことかとでも言いたげな顔で小さく呟いた。

「俺だって半分は流れ者だ。一年の半分は他国に戦争に行っている。同じ流れ者でも人を殺めるのと人の心を和ますのではお前のほうが俺よりもずっと優れている」

「職業に貴賎はないわ」

 どうやら女が好きなだけの男ではないようだと判断したスキエルニエビツェは、それでも未だ掴めきれないこの男の本質を探るように目を細めて言った。

「人を殺めるのも好きでやっているのではなく国を守るためでしょう? やっていることは大して私と変わりないわ。方法が違うだけ」

 そうかな? と小さく呟き頭をかいたオライオスを見て、ふふ、と笑いながらスキエルニエビツェはさらに言う。

「それにしても宮廷にはあんなに美しい女官が数多くいるのに」

「ん?」

「どうしてお誘いになったの? 引く手数多でしょう」

「声のきれいな女に弱いんだ」

「嘘ばっかり」

「ふふ……惚れたのさ。今度はお前の行った国の話でも聞かせてくれ。色恋抜きでな」

 言うと、彼は背中を向けさっさと行ってしまった。

「俺の名はオライオスだ」

 言いおくのも忘れずに。

「…………」

 彼の……オライオスの不思議な人間性に、しばしスキエルニエビツェは立ち尽くしていた。

「あ……」

 そしてしばらくしてから彼女は一人呟いた。

「陛下と弟君のこと……聞こうと思ったのに……」

 そして誰からも情報を得る機会を得られないままに、スキエルニエビツェは数日を過ごすことになる。

 ようやく女官の一人から国王と王弟の因縁を聞き出すことのできたスキエルニエビツェは、予想以上の泥沼化した状況に、さすがに息を飲まずにいられなかった。

「国王陛下はあの通りの方でございます。天が与えたとしか思えないようなあの器……幼い頃からそれは期待されて育てられ……まったくその通りの方となられました。お父上もお母上も……周囲の人間誰もが陛下一人だけに注目し、期待しておられたのです」

「-------王弟君は?」

「そこが問題なのでございます。王弟殿下は陛下と四つ違い……殿下に凡人としての普通の才能がありましたのならまだ殿下も苦しまれずに済んだと私は思うのです」

「どういうこと?」

「王弟殿下も兄上様に負けず劣らずの才能をお持ちなのです。強いて言えば兄上様が静なのに対し殿下は動……・お二人は同じくらいの能力を与えられ全く反対の性質を持ってお生まれになられたのです」

「……・・」

「同じくらいと申しましてもやはり兄上様には及びません。そのことで幼い頃から随分と比べられ、そのたびに嫌な思いをなされてきたのです。どんなに頑張って人並み以上の結

果を出しても、『兄はもっと凄い』『兄に比べればそんなもの』『兄はこんなに優れているのに』と言われ続けたのでございます」

「はい。人並み以上の才能があるのに認められない……その不満は日に日に募ったように見受けられました。とにかくお二人はそうしてお育ちになりましたが……おかしな事にご兄弟の仲はとてもよろしかったのです。兄上様は弟君をそれは大切になさり、弟君もまた兄上様をとても慕っておいででした。特に兄上様は自分のせいで日陰の身となることを余儀なくされた弟君をいつもお気遣いになり、ひどく心配しておられました。問題はそんなお二人の関係が今も続いているということでございます」

「? ……・弟君は陛下のことを憎んでおられるのではないの? この前だって凄かったわ」

「おわかりになりますか、肉親を愛し、愛しているがゆえにまたどうしても抑えられないほど募る憎しみが……・」

「……・・」

 スキエルニエビツェは爪を噛んだ。

 そうか……愛してはいるがまた尽きもせぬ憎しみもある。愛しているがゆえにその憎しみもまた募る。こんなにも愛する兄なのに-------憎いとは! しかし抑えられない、情愛で片付けられないくらいの辛く苦しい思いをしてきた、理性ではなくもうこれは本能のように……・愛する憎い兄。

「泥沼……」

「お父上が戦死なされ、母君も後を追うようにして亡くなられた後、陛下が王位を継承なされたのですが……・その頃の宮殿の切れるような空気……今思い出しても身体が震える思いでございます」

 女官は身を抱くようにしてわずかに震えた。

「あの頃宮廷内は兄上様と弟君を支持する二つの派閥に分かれておりました。片や正統な王位を継承する兄上様、片やその兄上様には劣るとも常人以上の稀な能力をお持ちの行動力溢れた弟君……ですが結局順番には勝てません。正統な第一位王位継承権を持つのは兄上様でしたから、結局兄上様が二十六歳という若さで王位をお継ぎになられたのです。

 これが四年前のことです。以来弟君は宮廷ではなく離宮の方にお住まいになられ、滅多にこちらにお顔を出されることもありません。時々先日のように突然お越しになられては

あのように陛下を困らせるようなことを……」

「-------」

「ご自分が王なら、とお思いなのでしょう。なまじ将軍が十人束になってもかなわないような優れた才能をお持ちだからあのような苦悩がおありになるのです」

 王になりたい、王になりたい、王になれば、自分の才能を世に認めさせる事ができる。

 あの男は兄の影だ、所詮は二番煎じと言われなくて済む。自分はこんなにも才能があるのに、幼い頃から認められなかったばかりに、どうしてこんなに鬱々とした日々を送って

いる? もっとやることがあるはずだ、どうして、どうして、どうして自分が王ではないのだ! どうして誰も自分を認めてくれないのだ!

 もっと……もっと自分の能力を発揮したい-----!

「……」

 スキエルニエビツェはそっとこめかみに手をやった。

「陛下も弟君のお気持ちはわかっておられるのですが、どうしようもできないのです。誰かの、例え兄上様でも、補佐などをするような方ではありませんし、そういう器ではないのです。人の上に立つような方なのです、ご兄弟揃って……せめて弟君が参謀のような性質であられたなら」

「ふうん……」

「誇りの高い方ですから兄上様に仕事の世話をしてもらうはずもなく-------兄上様もそれをご承知です。でも追放もできない。それは兄上様が弟君を愛しておられるからです。

 愛していればこそ、弟君の傍若無人な振る舞いもすべてご自分のせいと敢えて目を瞑っておられるのです」

「……痛々しいわね」

「はい。端で見ていても辛くて……」

 今まで幾つもの国々を経巡って来たが、ここまで複雑な事情を持つ国はこれが初めてである。普通これだけわかりやすい憎悪が渦巻いていれば、疾うに争いが起こっているものなのだが。-----やはり兄弟間の愛がそれに歯止めをかけているのか。やりきれない思いである。女官に礼を言って下がらせ、スキエルニエビツェは簪をほどいて窓から見える空を見上げた。

 三日月があえかな光を放って紺色の空に浮かんでいる。


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