第三章 指環の女 7

 カストリーズは夜の道を歩いていた。繁華街を少し抜けて行くと国立の公園がある。そこからは海が一望でき、緑も深く静かで、もの思いに耽るには最適の場所なのだ。カストリーズは一人になりたい時よくここへやってくる。静かな波の音を聞きながら空と海とを見ていると、恋ゆえに焦燥する己れの心が小さく感じられる。小さく感じ大したこともないのだと思うだけで心は軽くなり、俗界へ戻ってまた彼女は、疲れた頃にここへやってくるのだ。

 ベンチに座って足を伸ばし、カストリーズはふう、と息をついた。

 ここへ来るたび嫌でも思ってしまう、この天地の下でいかに自分が卑小な存在かを。しかしそれでよい、卑小だからこそ懸命に生きていけるのだ。

 ……ザ……

 白い息を吐きながら、カストリーズは海に見入った。冬の海は厳しい。厳しいからこそ美しくも感じられる。自分はいつになったらこの永遠に続く苦しみから解放されてこの海のわずか十万分の一でも美しくなれるのだろうか。

 ガサ。

 背後で気配がした。職業柄カストリーズは即座に剣の柄に手をやった。

「カストリーズ殿」

「! ……その声は……」

 カストリーズは絶句した。振り返り自分の過ちを確認しようとして、そして自分の正しさに茫然とする。今日の昼カストリーズはこの男の解任決議に賛成したばかりなのだ。

「アミーン伯爵……」

「お一人ですかな」

 カストリーズ言葉を失った。この男……今日の議決を知っているのか? ならば今自分は非常に危険だ。どこに誰がいるかもわからない。退路を確認しながらカストリーズは油断なく伯爵と向き合った。ところが伯爵は寸鉄もその身に帯びていない。

「いったいこんな所でなにを? 護衛もつけずにあなたほどの方が」

 カストリーズは不審に思いながらそれでも警戒を解かずに言った。

「実は貴女を尾けてきたのです」

「私を……?」

 この男―――――まさか昼間のことを

「こうでもしないと貴女に逢えないのでね」

「……」

 真意を掴みかね、カストリーズは言葉を慎んだ。寒いのに汗がふつふつと額からにじんでいる。

 とく、とく、とく、とく……心臓がひどく高鳴る。

「実は私の想いを伝えにきたのだ」

「……」

 茫然とする己れをカストリーズは自覚していただろうか……。

 この男は今いったい何を?

 立ち尽くすカストリーズをよそに、伯爵はカストリーズが座っていたベンチに静かに座った。

 ……ザ……ァ……

「―――――」

 伯爵は目を細めた。

「貴女が見ていたのはこの海か―――――……ならば私は海に嫉妬しまた空に嫉妬する。 貴女が何を見ているのかを知りたいし何を考えているかを知りたい。私の目に見えないところで貴女が何をしているかを―――――……知りたい」

「―――――」

 カストリーズは目を細めた。

「いつも貴女を想い、側にいたいと願い空や太陽を見ては貴女が同じものを見ていることを切に願う。……私の願いは聞き入れられないのだろうか」

 カストリーズはこの男は、昼間のことを知らないということをほぼ確信していた。知っていれば確実にそれをカストリーズ自身に知らせ知らせた上で刺客を向ける恐ろしい男である。

「貴女の見るものすべて、貴女の聞くことすべてを知っていたい」

「―――――」

 この男は私と一緒だ―――。

 カストリーズは痛感した。

 私はこの男を拒むことはできない。この男を拒むことは今まであの人に寄せていた私の想い、私自身を否定することだ。

「……何が望みです」

「そう聞いた時点で貴女はわかっているはずだ。それでも何が望みと私に聞くのか」

「……伯爵……。

 ―――――お気持ちはよくわかりました。

……―――……・ですが私は立場上あなたと敵対とまではいかないまでもそれに近い位置にある。だからあなたと共にいられる夜は一度だけ―――……・たった一度だけ。 それでもよいと?」

「たった一度でも真実は変わらない。貴女と一晩共にいられるという真実は。できれば私の妻に迎えたいところですが……陛下はそれを許さないでしょう。あなたは古い貴族の生まれだ。貴女自身も軍人をやめて伯爵夫人などという退屈な生活は望みますまい。

 そしてまたそれは私の愛した―――旗袍を纏い剣を下げ戦場で猛る貴女ではない。だから私の気持ちに区切りをつけるために、諦める材料としてこうしてお頼みしているのです。……お怒りか」

「いえ……あなたが―――あなたほどの人物にそこまで想われて本望なだけです。あなたがそうおっしゃるのなら……私を愛し私を手に入れられないがために私を諦め、その為に私を抱きたいとおっしゃるのなら……私はあなたを拒むことはできない」

「…………それでは」

 カストリーズは同意を表すため瞳を閉じた。

 そしてそのまま……二人の影は夜の闇に消え―――――すべての目から逃れた。


 すべての人間にとっての不幸は、ノトスがそれを見てしまったという事から始まった。 ノトスは才能はあるが了見の狭い男である。

 カストリーズのように、公としての伯爵は確かに目障りだが、「私」としてのアミーンという男は、それとは一切関係がないという考えの一切できない男なのだ。そう言われても、いや、しかしお前は公であ奴を罵声したも同じなのだぞ、とノトスはそう思うだろう。物事に対して厳密な区別ができない男なのだ。当然ノトスは嫉妬した。よりにもよってどうして伯爵なのだ。確かに自分は彼女の恋人というわけではない、だからどの男と関係しようが声を高くして責めることはできない。しかし伯爵だけは。あの男だけは嫌だ。どうして、どうしてそうなるのだ。本当に誰とでもいいのか。

 私ともそうやって寝たというのか。ノトスは嫉妬した。そして憎悪した。あの伯爵と肩を並べるのだけは嫌だ!

 嫉妬と憎悪に駆られ―――――男は破滅の道を選んだ。この時、まだ彼は気が付いていなかった。愛した人間を破滅に導くことこそが、己れにとって一生拭いきれない苦痛を伴う汚点になるということを。まだ彼は気が付いていなかった。嫉妬と憎悪に駆られ、自分が落としめられたという妄想につきまとわれている今は……。



 噂はあっという間に宮廷内に広まった。

 何者かによって、カストリーズとアミーン伯爵が関係した事実を詳らかに記した紙を何百枚と刷ってばらまかれたのだ。それは国王から侍女女官、将軍の面々、伝達兵から下等兵や料理人、洗濯女にまであますところなく広まり、大問題となった。

 冬がその力を猛らせるように寒い、一月のことであった。

 またカストリーズの動じないいつもと変わらぬ態度にも拍車をかけた。

 あれだけ堂々としているのは否定しようのない事実だからということではないのかだいたいあの女はいつも生意気だ陛下に気に入られているからといってふてぶてしい

 カストリーズの生まれやその天賦の才能を普段から心密かに妬んでいる者たちの流した根拠のない噂が一層彼女の立場を悪化させ―――――……ついに翌月二月、カストリーズは告発された。政敵とも言える男と寝たという倫理問題もさることながら、実はカストリーズ将軍は敵方に寝返ったのではないかという推測も無視できないものだった。無論そんなことはないのだが、カストリーズは何一つ弁明しない。弁明することは伯爵の純粋な気持ちを言うことであり、それに自分が納得した理由を―――ひいてはかの人に想いを寄せているということを話さなくてはならない。カストリーズはそれだけはやめようと心に決めていた。あの国王、数少ない理解者の国王にですら、詰問されてとうとう言えなかったというのに、保身のためとはいえどうしてそんなことを裁判で言えるだろうか? 保身のため誇りを捨てるような真似はしない―――カストリーズは嫌になるほど軍人で、嫌になるほど貴族の娘なのであった。

 私はあの人に対する想いを言うことはないだろう―――――それで一生を棒に振ることはあっても、それはそれで運命。仕方のないことなのだ。

 それにもういい加減疲れた……。自分の人生はここいらが潮時なのかもしれない。

 ああ今……あの人は何を? 海を見ているだろうか山を見ているだろうか空を見ているだろうか。逢いたい。

 向こうがこちらに気が付かなくてもよい、一目見たい。一瞬でいい、あの人に逢いたい!

 カストリーズが左手の指環にそっと触れた時、国王直属の兵士がやってきて、一礼した後書簡を広げ、非常に残念そうに、しかし低い声でそれを読み上げた。

「カストリーズ・イゾンツォ将軍。

 訴状により貴殿を告発致します。内容は謀反の疑いと宮廷内倫理法違反。裁判は翌日朝十時、場所は玉座の間にて」

「……」

 カストリーズは瞳を閉じた。

 潮時か―――――。

 そして瞳を開けて顔を上げ、カストリーズは震えを必死に押さえている兵士に向かってしっかりとした声で言った。

「承知した」



 カストリーズは、裁判で何も弁明しなかった。

 アミーン伯爵と寝たのは事実ですなぜかと言われたらそれは―――そうしたかったから。 ですが謀反だとか寝返ったとかそういうのだけは否定する。カストリーズは穏やかに言った。自分が忠誠を誓ったのはアレクサンドロフスコエ・ゼヴェイエⅥ世陛下ただ一人であって、例え陛下に必要とされなくても自分はその忠誠を忘れることはないと。

 しかし分が悪かった。

 カストリーズの普段の態度は、悪くはないがいいとも言えない。

 元来お世辞や愛想笑いなどというものに無縁の彼女は、大抵いつも無表情で何を考えているのかわかり辛く、敬遠する者は少なくなかった。しかも彼女は貴族の出でありながらその地位を国王に返上し、なのに功績はいつも群を抜いている。あんなに無愛想なくせにどうしてあんなに功績がいいのか、訳のわからぬ嫉みを胸に抱いている者は多かった。また彼女の私生活に眉を顰めていた者も多数で、将軍としての倫理問題もその場で追求された。カストリーズは、そのことについては眉ひとつ動かさず沈黙を守った。

 言うまい。決して言うまい―――言えば今まで守ってきたあの人への想いが、純粋さが、汚れる―――――。

 ノトスを筆頭として多くの者がこの問題を大きく取り上げ、さしもの国王も彼女を庇うところまでいかなくなった。裁定は公平を期すために国王ではなく裁判官が下すというのが劉深の法律である。

「カストリーズよ、これが国王としての最後の質問だ。頼むから答えてくれ。答えてくれなければそなたの弁護もできない。――――そなたは、なぜ伯爵と」

 耳が痛いほどの沈黙が辺りを制した。

 氷のような瞳で氷のように黙っていたカストリーズは……長い沈黙を破って顔を吃と上げた。

「陛下…………貴方は本当に心から尊敬できる方です。生まれ変わって別の人間になったとしても、私は貴方に忠誠を誓うでしょう。あなたは本当に素晴らしい主君です。

 ですが―――――……これだけは言えません。でもわかっていただきたい。どれだけ私が貴方を尊敬申し上げているかを」

「……カストリーズ……」

 国王の痛々しい呟きが響き、そしとて彼は沈痛に眉を寄せ瞳を閉じた。

「……言うことは本当にそれだけなのか……・・何も弁明することはないと?」

 そしてカストリーズは動かず喋らず、じっとしていた。

 それが軍人の肯定の仕方であり、カストリーズがそんな肯定をしたということが、国王には悲しかった。すべては裁判官に任せられ、カストリーズの運命は委ねられた。

 そして下ったその裁定は―――――

「―――死刑……」

 馴染みの女官にそれを聞いたスキエルニエビツェは茫然とその言葉を繰り返した。

「そん……な」

「ギュイアンクール将軍や陛下も大分尽力なされたようなのですが、何しろ十数名の人間が告発に名を連ねていたようで……国王陛下も庇い立てできなくなったようで」

「―――――」

 突然何の予告もなく体の半身を切り取られたかのような痛みだった。胸が重く息をするのも口をきくのも辛い。

「死刑……現役軍人の、しかもカストリーズ様のように優秀な軍人を死刑だなんて。実際施行されるのはまだ未定だそうです」

「それで……彼女は?」

「地下牢に」

 地下牢! あの誇り高い彼女が日もろくに射さぬ地下の冷たい石の上にその身体を横たえているというのか。カストリーズは優秀な軍人。劉深にとって彼女を失うのがどれだけの損失か……わかっているのだろうか? それともわかっていながら、それでも病巣として切り落とすというのだろうか、痛みを承知の上で。

「……」

 スキエルニエビツェは身を翻して身仕度を始めた。氷重(表鳥ノ子色・裏白)の襲を纏い、

「……国王陛下にお目通りの許可を伺ってきて」

 鏡に向かいながら、固い表情で女官にそう告げた。



「来たかスキエルニエビツェ……だいたいの予想はついておるが、そなたの口から聞こうと思う」

 沈痛な面持ちで国王は言った。

 しばしの沈黙の後、

「……カストリーズ将軍の命乞いを……―――――」

 スキエルニエビツェは椅子に座る国王をすがりつくようにして見上げ、そして言った。

「そのためなら、私は一生劉深にいても構いません。選択を許される立場ではないということはわかっております。ですが陛下は私を一生ここに留めておくおつもりもないとおっしゃいました。私は一生この国にいます。ですからカストリーズ将軍を……せめて減刑してくださいまし」

「スキエルニエビツェ……」

 国王は悲痛な瞳でスキエルニエビツェを見た。

 自分の感情をあまり出したがらなかったこの楽師が、こうして椅子に座る自分にすがってまでカストリーズの命を乞っている。

「……そうしたいのは私もやまやまなのだ。死刑……そんなにもカストリーズを邪魔にしていた人間がいたとは。私も減刑のために奔走した。しかし無駄だった。いかんせんあれは口を開かない。

 なぜ政敵と関係したのか、それさえわかれば、いや、私生活でどうしてあれだけ乱れていたのか、それだけでも私に話してくれれば、私だけでもよい、それだけで庇う理由はいくつでも浮かぶというのに……カストリーズはわかっていて言わぬのだ。そしてもし私が知っていたとしても、減刑や撤回は非常に難しい。なぜなら宮廷の人間がすべからくこのことを知っているからだ。公然と言えもしない理由のために減刑したところで誰も納得できないのだ。……せめてカストリーズが話してくれさえすれば、抜け道はいくらでもあるのだが」

「……それは……―――」

 スキエルニエビツェは視線をそらした。言ってはならない、あれだけ純粋に強烈に一人の人間の魂と愛を乞う人間の想い、他者の自分が言うべきではないのだ。本人が言いたがらないのなら言わないままが良いに決まっている。しかし、その代償はカストリーズ自身の生命。

 そこまで―――……そこまであの指環に想いを? 生命をかけてまで言いたくないほど愛していると?

「……そなたは知っているようだな」

 国王は悲しそうに言った。一番の理解者、一番の相談役であったはずなのに、どこからか生まれたすれ違いと微かな誤解から、カストリーズは自分の手から離れていってしまった。その責任の一端は自分にあるのだ。

 国王は瞳を閉じ―――――……無念そうに言った。

「今回ほど国王であることを負担に想ったことはない。

 劉深にとっても私にとっても……・大きな損失だ。決して埋めることのできない」

 そして彼は目を開け、顔を上げて言った。

「わかってくれスキエルニエビツェ」

「……―――――…………」

 スキエルニエビツェは悲しみのあまり顔を背けた。

 ああ……。

「―――――失礼致します」

 国王も悲しみのあまり、一言も口がきけなかった。なんという悲しいことだろう。

 絶望の内にスキエルニエビツェは一夜を過ごした。そして朝一番で国王からの書状を受け取った。一晩よく考えたが、その書状が昨夜の命乞いに応じるものではないということはわかっていた。宮廷の人間すべてが知っているのでは無理だ。

 国王というのはすべからく万人に公平でなければならない。スキエルニエビツェは大して期待もせずに書状を開いた。

「…………」

 カストリーズが死刑という現実の前では、カストリーズとの面会はいつでも自由と言われたところで、大して心はずむものではなかった。だからなかなか行くことができなかった。

 彼女を失うという、辛い現実を受け入れるのが嫌で―――。



 年が開け、桔五年、四月。

 ノトスは地下牢を訪れ、少しだけ悔いの見られる、そしてすがるような顔でカストリーズと格子越しに面会を果たした。彼女は石の床の上に座り、片膝立てて壁によりかかり、不敵な面持ちをしていた。何事にも動じない性格、それが最も反感をかう材料であったことは否定できない。

「…………」

「……お前か。まあ告発の時点でだいたいわかってはいたが――わかりやすい男だ」

「な……っお、お前が! お前が伯爵と関係したりするからいけないのだ!」

「お前に言われる筋合いはない。政敵ではあるがそれは宮廷の中でだけ。表に出ればただの男と女でしかない」

「それで―――――寝たというのか」

「そうだ」

「俺と寝たのと同じように」

「ああ」

 ノトスはカッとなった。了見の狭い男ではあるが充分優秀な男である。自分の価値を知っているのだ。アミーン伯爵がまったくの能無しだとは彼も思っていない。やはりそれだけの人物であるからこそ、宮廷も問題視したのだ。

 しかしやり方がいけない。伯爵のやり方は騎士道に反する卑怯なことであり、同時にノトスの信条にも反することだ。

 あんな男と自分は一緒にされたのだ―――――!

「……取り引きしよう」

「……」

「噂を広めたのは俺だ。今からなんとかすればあれは間違いだった、嘘だったと取りなすこともできる。裁判もそうすればやり直しだろう。疑いをかけられるのはそれだけの原因があったから、それは自分の過失だったからとでも言えば、沈黙していた理由も通る」

「―――何を条件に言う。取り引きだろう。その代わり?」

「その代わり―――――……」

 ノトスはごくりと唾を飲んだ。

「……もう一度…………もう一度だけ―――――そして」

「そして? 一生お前のものになれと?」 

 カストリーズは嘲笑を含んだ、吐き捨てるような口調で鼻先で笑い、言った。

「馬鹿なことを」

「生命が助かるんだぞ! 一生でなくともいい、たった一度だけ……それで俺はふんぎりがつく」

 この男も伯爵と同じか。―――――いや違う。

 伯爵は真っすぐに自分の想いをあますことなく伝えた。護衛も連れず寸鉄も帯びず、それは彼の誠意だった。

 この男は、取り引きの材料にしているのだ。私を愛しているというが……ならばそんな真似をしなくともよかろう。

「死んだ方がましだな」

「……!」

「伯爵と一緒にされたのがそんなに悔しいのか? 安心しろお前はそれ以下だ。どうして私が伯爵と寝たか―――――お前には一生わかるまい。私を死刑に追いやったことを死ぬまで悔やむがいい」

「カ……」

「出ていけ」

 カストリーズは顔を背けた。ああもう疲れた。すべてのしがらみから解放されたい。

 ノトスは―――絶望の内に立ち尽くし、そして最後の誇りを保って毅然と歩きだした。

 その誇りのせいで……お前は私の愛を勝ち得なかった。

 伯爵は誇りも立場も捨てれ私にぶつかってきた―――――差はそこにあるということを、お前はわかるまい、一生……公で卑怯な人間はすべてにおいてそうであると思い私も伯爵も見下しているお前には……



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