第二章 紫星の風 6

 琳藍は正月を迎えた。

 古くからの習慣に、一月の一日から七日までを占うやり方がある。

 一日から六日までがそれぞれの動物の日とされ、晴雨によってその日に該当の動物の繁殖を占う。最後が人の日で、この日も同様、晴れれば吉、雨が降れば凶と出る。

 一月一日 鶏日 晴

 王宮ではこの日、早朝から庭に鶴を放つ。昨年からの積もった雪の中を、美しい声で鳴く鶴が遊ぶ様はこの上なく美しい。こんな中、鶴と楽師とどちらの声が美しいかなどと競わせるのはつまらないもの、人は人、鶴は鶴、種が違ければまた声も違う。

 スキエルニエビツェはこの日、いかにも冬らしい雪の下(表白・裏紅梅)という出で立ちで、琳藍で最初の正月を迎えた。早いもので、あたらしい年号桔は二年目を迎えようとしている。今頃、この新しい年号にした張本人は、その金髪をさざめかせ故郷にいるに違いない。

 一月二日 犬日 晴

 この地方独特のならわしだが、正月二日に赤米を食すという。一年の息災を祈り、何事もないようにという思いが込められているのだそうだ。スキエルニエビツェは赤米というのは初めてで、赤飯のようにほんのりと赤いに違いないと思っていざ挑むと、本当に赤いのでひどく驚いた。他にはめでたい時にしか食べないので、あまり作られることもないが、その代わりに欠かせないものでもあるという。

 一月三日 羊日 晴

 この日、国中で花を飾る。どんな花でもよい、部屋いっぱいでも、たった一輪でもいいのだ。これは花の美しさとはかなさに人の一生を重ね、いつも美しくただ懸命に生きることを忘れないための教訓であるという。山に囲まれた国のせいだろうか、こうした風習が多く残っていて、普段こういうものにあまり接しないスキエルニエビツェとしては少々肩がこる。

 一月四日 豚日 晴

 四日から俗に職人と呼ばれる職種の者たちはいっせいに仕事を始める。職場なり工房なりに皆で集まり、小さな小さな杯に満たした酒でこれから一年の仕事をやっていこうという儀式を行なうのは、どこの国でも一緒である。

 一月五日 牛日 曇

 商売人はこの日から仕事を始める。初競りといって、一年の最初の競りのことを指す言葉だが、この日だけはいつも締める黒い帯を赤にして市に向かうという。その日は一日中赤い帯を身につけて福を呼ぶ。

 一月六日 馬日 晴

 正月を迎えてから等しく人々が働いているのがこの日である。農夫や医者、その他の直接人の生命にかかわるような仕事をしている者たちは、この日が仕事始めである。これで国中どこを見ても働いていない者はいないということになる。街も王宮もこの日から気分一新、門や入り口裏口、窓などの飾りを外し、また魔除けにしていた札も全て取り払う。

 一月七日 人日 雨

 先祖に無事正月を迎え、全ての人間が障りなく仕事を始められたことを報せるためどこの家からも赤い布を棹に結び、午後まで高々と掲げる。この日は、空を見上げると色々な赤い布がひらひらと風に舞っているのを見ることができる。喪中の人間は黒い布を庭から掲げる。そして六日に取り外した札などを午後以降から各家庭で燃すのだ。一月七日は午前も午後も、空がにぎやかな一日となる。


   花信 梅風の後

       菜香 人日の前

       東郊 三十里

       吟歩して春妍を弄す

       煙淡くして樹を遮らず

       水流れて自ずから田に入る

       閑遊 何ぞ興を限らん

       千古 斜川を憶う



 さて一月も七日を過ぎれば通常の日々の落ち着きを取り戻す。この日は晴れていて、雪が河のような音をたてて溶けていくほど陽射しも強かった。だからといっていつも着ているような冬の服を着ないと寒いのはどうしたわけだろう、そんなことを思いながら、アスンシオンは池の固い蓮の蕾を見ていた。その円い葉の上には真っ白な雪が降り積もっている。

 女性の場合の衣装は小袖、唐衣、ごく限られた上流の、もっと限定して言えば貴族と王宮の人間しか着ることを許されない襲など様々なものがあるが、身分の上下に関わりなく共通しているのは何度も説明する通り色である。たとえそれが小袖でも、襲の色目で女たちはおしゃれを楽しむ。翻って男性の衣装は簡単なもので、旗袍とよばれるものがこれである。国王も農夫も、商売人もこれを着る。身分によって違うのは素材や柄で、絹か綿かの違いくらいだろう。柄も、凝っていたり刺繍がしてあるものから、無地のものと幅が広い。

 旗袍はまず、襟がひどく詰まっている。見ているだけでは息が苦しくないのかと思うこともあるが、見かけほど苦しくはない。だから、国王も農民も、必ず採寸をして身体にあった旗袍を作らないと、首元がとても苦しい。形としては身体にぴったりと沿っており、線がくっきりと見える。そして歩きやすいように裾が好みの長さに切られる。これが基本的な形である。裾の長短にもよるが、これだけでは女の衣装のようなので大抵の男たちはこれを上半身に着、下半身はそれこそ戦に行くときに鎧の下に着るような、短衣がそのまま長くなったようなものを着ている。特に決まった名称はないようだが、受と呼ばれているようだ。

 しかしどれだけ裾が長くとも、彼らは受なしの、旗袍だけで外を歩くようなまね決してはしない。女でいうなら下半身裸で歩くようなものなのだ。男性用の衣装だが、男性限定というわけではなく、貴族が狩りをするときなど女性が着たりすることもある。女性が着るとまた違って見え、新鮮ということもあるが、ほどよく切られた裾から足がすらりと見えたり、身体の線がくっきりと見えたりするので色気がある。また数少ないが女で軍人をしている者もたいていは女の格好を嫌がるため旗袍を着る。

 基本的に男性の衣装の場合は女性のそれほど色にうるさくない。女の方は夏に冬の色を着たり、春に夏の色を着たりすることはかたく禁じられている。葬式を冗談にするのと同じくらいの禁忌だと思えばよい。瞳の色とよく似た萌葱色の服を着るアスンシオンは、溶け始めとはいえ雪の白の中でよく目立つ。彼の着る萌葱と萌黄は字の違いもあって、前者は濃緑、後者を若緑色としている。

 その姿に見惚れながら、ウィラミナは己れの考えの正さを実感していた。柱にもたれる身体の力も抜けていく気がする。

 なんと美しいのだろう! あの静けさ。あの力強さ。彼が自覚と共に己れの魔性に目覚めれば、どれだけの人間が心酔していくことか。彼こそは生まれながらの英雄、天性の王者なのだ。ウィラミナが勝利を確信してぐっと拳を握り、この千載一遇の好機をものにせんと柱の影から動きだした時、向こうから響く透き通った声が彼女の耳を突いた。

「陛下―――っ」

 サラサラサラサラと衣擦れの音もにぎやかに、スキエルニエビツェが髪をゆらめかしながら走ってくる。その黒く長い髪が舞う様は、黒い虹が幾重にも重なったかのような幻を垣間見せる。

「―――――」

 ウィラミナは好機を逸した。スキエルニエビツェの登場で出ていく呼吸を失ったというのと、邪魔者が現われたという二つの理由からであったが、どのみちこの瞬間ウィラミナがスキエルニエビツェに対して凄まじい敵意を抱いたということは動かしようのない事実であった。

「お前か。どうしたずいぶんにぎやかだな」

 息を切らし、微かに顔を上気させて、スキエルニエビツェはきらきらと汗の光る顔を向けて笑った。

「だって随分探してしまいましたわ。黙っていなくなってしまうのですもの」

「そうか。庭があまりに静かだったものでな」

「それよりいいものを見つけました」

 そんな二人の会話を聞いて、ウィラミナは悔しさのあまり血が滲むほど唇を噛みしめていた。あの女……! どうしたことだあの国王の笑顔! あんな穏やかで安心した、慈愛に満ちた笑顔は? 魔王は冷酷だからこそ魔王、魔王は、あんなに人に対する愛情を見せ付けるような顔をしてはならない!

 ウィラミナは悔しくて悔しくて、地団駄を踏みたい衝動に駆られた。それをしなかったのは、廊下で誰が見ているかわからないという、彼女のプライドである。ぎゅっと拳を握るその手から、薄く血が糸のように引いているのにも気が付かなかった。だから、アスンシオンが今まで誰にも見せたことのない穏やかで幸福そうな表情をしているということにも気が付かなかった。

 ウィラミナは二人が仲睦まじく庭から本宮へと入っていくのを、いつまでも見ていた。


 スキエルニエビツェは、例えば酒場で世界の美女を三人挙げようという話題になったときにその中に入ったり候補になったりすることは、まずない。しかし五人挙げようと言われれば、最後の適当な一人が浮かばない時など、その中に数えられることはある。彼女は絶世の美女というわけでは決してない。人は何に対しても極端なものを求めがちだ。

 彼女を最高に美しいといえば賛辞には聞こえるが、実際彼女より美しい女は世に大勢いるし、彼女自身そんな女性を幾度となく見てきている。好みの問題でこちらが美しい、いやあちらの方がというのではなく、「彼女より」美しいのだ。凄まじいほどの美女というのはその場に現われただけで空気を緊張させ、人の口を開けたままにさせ、異性も同性も身体が痺れるほどに圧倒してしまうのだ。本当にそういう美しいひとびとはいるのだ。スキエルニエビツェは彼らとは一線を画している。彼女は確かに美しい。どれくらいかと聞かれればやはり人並み以上のずっと上なのだから歩けば人が振り向くし、ため息もつかれる。しかしウィラミナのように、例えば道に現われた途端にざわめいていた人々がさーっと波のように静けさが広がっていくようなことはないし、買物にいって少年に恋を期待させるようなこともない。見惚れていて釣銭を忘れさせれる程度である。しかしそれは翻って言えば、スキエルニエビツェが自分の容姿を何とも思っていないからなのだ。これで自分にとっては普通、これで当たり前だと思い特別美しいともこれで一国を傾けようとも思っていないのだ。特別美しいことに変わりはない。彼女以上に特別美しい女がいるだけのことだ。

 彼女は楽師である。生活の糧を歌うこととし、そして滞在するだけで国の誉と言われるほどであるから、それに相当する報酬を払うことのできる王族や、ごく一部の上級貴族が日常の相手であるわけだ。そして今のようにほとんどを国王だけを相手だとか、妃に呼ばれたりして歌うことはあっても、大体は宴で歌うことが多い。だから逆にいうと、歌っているときの彼女は気配を隠す余裕すらなく全力を歌に傾けるため非常に美しい。人が我を忘れる。美しい声で鳴く鳥は鳴いている時が一番美しいのと同じで、彼女もまた、歌っている時こそが一番美しいのだ。

 だからといってスキエルニエビツェが楽師をやっていることを非常に好きだとか、そういうことではまたない。好きかといわれると好きだが、そう言われると彼女は首を傾げたくなる。好きだとかそういうレベルではなく、「歌っている自分」が当たり前、それが素の自分で、歌っていない自分は考えられない。好きだけではやっていけないほど旅は辛いし、一所におさまればいいのにそうしないのは一所におさまるのが好きではないからだ。そうはいってもスキエルニエビツェが人目を引いて美しいということに変わりはない。 

 ウィラミナと並べば―――――ウィラミナの方が数倍美しい。

 スキエルニエビツェは「普通の」美女だが、ウィラミナは「とびきりの」美女だと思えばいい。ウィラミナにはそれが気に入らない。どうしてどうでもいい人間はあれだけ構われて国王だけが私に無関心なのだ?

 私は美しくないのか? 否。それではあの楽師の方が美しいのだろうか? それもまた否。それでは国王があの楽師に惹かれ自分には一瞥もくれないのはどうしたことだ?

 これが自分より美しい女であれば、彼女も納得しすんなり事実を受け止めただろう。しかし違うのだ。だからこそ余計に悔しい。自分のどこが悪くて自分より劣った女が何故国王に気に入られるかが、今のウィラミナにとって最大の関心事であった。

 そんな春のある日ウィラミナとスキエルニエビツェが廊下ですれ違った。相手は高位の女官である。スキエルニエビツェは立ち止まって恭しく一礼し、そしてまた歩きだそうとした。

「―――」

 ウィラミナのプライドが強烈に刺激された。スキエルニエビツェに非はない、ただ悔しくて悔しくて、ウィラミナが癇癪を起こしただけの話だ。

「―――お待ち」

 冷たい、ぞっとするほど低い声だった。側の侍女が思わずびくりとしたほどだ。

「――― はい?」

 スキエルニエビツェも立ち止まってこたえる。非礼はなかったはずだ。ああそれとも、部屋で一吟を所望するというのだろうか?

「なんのつもりで陛下に取り入っているかは知らぬが……」

 これには側の侍女も仰天した。日頃のウィラミナは、決してこのようなことを言う女ではない。一体何があったのだ?

「―――」

「あまりいい気にならない方が良い。あの方は琳藍に君臨するお方。お前のような者が本気で相手にされているわけがないのだ。慎みなさい」

 言うだけ言うと、ウィラミナはサラサラと衣擦れの音も小気味よく、歩み去ってしまった。ウィラミナに付いていた侍女も、思わず立ち止まって、戸惑いがちにスキエルニエビツェと顔を合わせ、そして慌ててウィラミナの後を追って行った。


 無論スキエルニエビツェはこのことをアスンシオンには言わなかった。

 ウィラミナがアスンシオンと男女の関係にあるという事実は、過去にも未来にも、そして今現在も当然のことながらない。

 平生のウィラミナにはちょっと考えられない言動に侍女・女官たちは動揺し、先程の事はあっというまに侍女の間に広まった。そし結論づけられた事実はただ一つ、ウィラミナは「ぶっていた」ということだ。言い方がそぐわなければ、「できる女」、「美しい女」であることを、「鼻にかけていないふり」をしていたというのが妥当だ。気が付かなかった自分たちに女官たちは悔しがったが、彼女たちが悪いのではなくウィラミナが一枚も二枚も上手だったということだ。またウィラミナ自身、自分のそういった内面に気づかなかったということもある。彼女はこのことをきっかけにして初めて自分の隠された内面に気づき、抗うことなくそれを受け入れたということになる。しかしウィラミナが美しく仕事のできる人間だということに変わりはないし、女官たちが彼女に何か不愉快なことをされたという訳でもない。結局、女官たちの間では、あの方にもそんなところがあったのね、欠点のない人間なんてそうそういなものなのだわ、という結論に収まった。それは日頃スキエルニエビツェの身の回りの世話をし、特に彼女とも親しい、アスンシオンとその母との確執を話してくれた侍女の耳にも当然入っていた。

「……あまり気にされていないようですわね」

「まあね。何をされたってわけでもないし、あんなことは珍しいことじゃないわ」

 スキエルニエビツェは苦笑した。今までは言われた嫌味は事実無根のことだったが、今回はそうもいえないということだ。

 彼女のように旅の空に暮らしていれば、たいていの事に怒りや苛立ち不安を感じたりすることはなくなってしまう。スキエルニエビツェ自身の性格も手伝ってはいるが、明日何があるかわからぬ放浪の身は、いちいち今ある不安材料に心を砕いていても仕方がないのだ。

「今宵も?」

「多分ね」

 スキエルニエビツェは髪を解き、櫛で梳りながら静かに答えた。

 今宵も、とは、今夜もまたアスンシオンの部屋に行き、乞われるままに歌を吟ずるのかということだ。そしてたいていはそのままアスンシオンの部屋でアスンシオンと共に時には肌を重ねないまま朝を迎える。最初はアスンシオンの部屋に着替えがあるわけでもなく、大分に困ったものだったが、今はこの侍女が朝アスンシオンの着替えと共に持ってきてくれる。今はもう、ウィラミナのような高位の女官が彼の着替えを手伝うということもない。

「明日はいかがいたしますか」

「……そうね……梅(表白・裏蘇芳)にするわ」

 そんな会話が交わされる。そうすると、彼女は次の朝指定した襲を持ってきてくれるのだ。部屋を入ってすぐ衝立があるので、スキエルニエビツェはそこで受け取り、そこで着替える。それからアスンシオンを起こすのだ。国王の身辺は、今や世話する女官の手がいらないほどにまでなっている。女官たちは恐ろしさと緊張の連続である国王の世話から解放されたことを喜び、また気立てもよく話のしやすいスキエルニエビツェと、彼女の口から聞かされたアスンシオンの意外な一面を知り、そんなスキエルニエビツェとアスンシオンがそうした関係になったことを喜んだ。

 それを聞いたウィラミナの怒りがますます膨れあがったことは、言うまでもない。女官たちが用無しになったということは、自分もそれに含まれるということなのだ。憤怒の表情でその話を聞くと、怯える侍女も気に留めず、持っていた鏡を床に叩きつけて割ってしまったほどだ。

 そんなことをしていたらアスンシオンの魔性がますます損なわれてしまう! 早く人から離さなければ、早く自分が覚醒させなければ! 

 ウィラミナは行動に出た。今まで周囲を気にして何もしなさすぎた。向こうに自覚がないのなら、こちらが持たせるまでのこと。アスンシオンは毎夜スキエルニエビツェを召喚するらしい。その前に部屋に行くのだ。

 アスンシオンは一人で窓辺に座り、水で割った酒を飲んでいた。月に照らされ、その姿がなんとも美しい。

「……ウィラミナ……? なにをしている」

「陛下……」

 ウィラミナはため息まじりで呟いた。

「陛下は、やはりそういう器の方なのですわ」

「?」

「まるで魔王のようです、陛下……氷のように、月のように。 冷たく恐ろしくそして何より魅惑的で……お手伝いをさせて下さい陛下。貴方が魔王になるお手伝いを」

「……」

 深い緑の瞳が一瞬スッと細められた。無造作に束ねた銀髪が、さらりと音をたてて広がる。紐をゆるくしていたので顔をそちらに向けた途端に外れたのだろう。

「―――」

「陛下……?」

「退室してくれ」

「!……・陛下」

「何も言うことはない。出て行ってくれ」

「―――――」

 屈辱で身体が小刻みに震えた。アスンシオンはまた窓の方へ目をやり、自分など最初からいないようにふるまっている。唇を噛んで、ウィラミナは走るようにして退室した。

 アスンシオンは眉根を寄せ……・額に手をやった。

 魔王。冷たくて恐ろしくて。氷のように。

 所詮自分はそのようにしか見られぬのか……・どのように歩み寄っても通り一辺の評価しかされないのが悲しい。理解しているつもりで晒される無邪気な無理解ほど深く食い込む刃だということを、本人たちはわかっていない。

 この苦しみはいつまで続くのだろうか……自分が解放されるときは来るのだろうか?

「陛下?」

 柔らかい声。窓にさす光が届かない場所にスキエルニエビツェがいる。途端に心が和らぐ。張りつめていた糸がゆるむようだ。歩み寄ったスキエルニエビツェを、それ以上放っておくことができず、アスンシオンは強く抱き締めた。抱き締めてそのまま、春の夜に溶け込んでいった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る