517 崇秀プレゼンツ!!クリスマス大作戦!!

 奈緒さんに事情も説明せずに、クリスマスイヴをすっぽかしてアメリカに来た事が判明してしまった俺。

『流石に、これは不味い!!』っと思った崇秀は、このフォローをする方法を伝授する事に成ったんだが……


ありがたやぁ仲居間大明神様ぁ~~~( ´艸`)合掌


***


 ……数分後。

崇秀は、見知らぬハードケースを抱えて戻ってきた。


それで中に入って来るなり、なにも言わず、無言でそれを俺に手渡した。



「なっ、なんだよ、これ?」

「向井さんへのプレゼントだ。取り敢えず、中身を知らないじゃ話にならねぇから、中の確認だけはしとけよ」


これがプレゼント?


一瞬不審に思ったのだが、俺は言われるがまま、ハードケースを開いた。


すると……『PEAVEY・B-NINETY/ACT』と書かれた真っ赤なベースが入っていた。


うん?なんだ、これ?

これって、明らかにベースだよな。

それが奈緒さんへのクリスマス・プレゼントだって言うのか?


なんか釈然としないな。


いや、だってよぉ。

クリスマス・プレゼントって言やぁ、宝石類のアクセサリーとかが定番なんじゃねぇの?



「オイ、崇秀……なんで楽器?」

「バカタレ。楽器だからこそ良いんだよ。まさか、これさえ意味がわかんねぇのか?」

「あぁ、なるほどな。クリスマス・プレゼントで意表を付くとか言う奴だな」

「この蛸助。全然違ぇよ」

「じゃあ、なんなんだよ?それ以外、なにが有るって言うんだよ?」

「んあ?簡単な事だろ。オマエと向井さんの出会った切欠ってベースだろ。その気持ちを思い出させる為にも、敢えて、そこは楽器で良いんだよ」

「おぉ~~~、なっ、なるほど、なるほど」


ほぉほぉ、なるほど。

俺と奈緒さんの思い出を上手く利用した作戦って訳ですな。


中々憎い演出をしますなぁ、仲居間君や。



「それにだ。オマエが知ってるか、どうかまでは知らねぇけど。今現在、彼女の使ってるベースは元彼のベースだ。オマエも、いつまでも、そんなもんを使われてたら気分良くねぇだろ」


へっ?

あぁ、そうなのか?

そんな事実、オマエに聞かされて、今の今で初めて知ったぞ。


……けどよぉ、俺、あんまそう言うの気にしないし、拘りもねぇんだけどな。



「ふ~~~ん。だとしても、奈緒さんが気に入ってるなら、別に良いんじゃねぇの?俺は、あんま気になんねぇけどな」

「馬鹿かオマエは?オマエが気に『する』『しない』の問題じゃねぇの。気にしてるフリをしろって言ってんだよ」

「なんでぇ?なんでワザワザ、そんな女々しい真似をせにゃならんのだ。んな事したら、奈緒さんに女々しいとか思われるだけじゃねぇかよ」

「ホントに、トコトンまで世話の掛かる馬鹿だなオマエは。あのなぁ、女って生き物にとっては、自分の彼氏に『嫉妬される』って事は、自分自身を演出する場合の『最高の調味料』になんだよ」

「はい?」


どういう事?



「ヤッパ、解ってねぇよ、コイツ。……あのなぁ、倉津。天然だけで世の中渡って行けんのは、可愛いってカテゴリーの女だけだぞ」

「なんだ、そりゃあ?」

「ダメだコイツ。遠回しに言ってたんじゃ埒が開かねぇ。……良いか、倉津?今のオマエの状況が芳しくないのは、身に沁みて解ってると思う。それに向井さんは、大小に関わらず機嫌が悪い。さて、これを、どうするかって話をしてんだよ」

「どうすんだ?」


先生わかりませ~~~ん。



「考えずに聞いちゃったよ、コイツ」

「いや、だって、わかんねぇもんは、わかんねぇんだもんよ」

「あっそ。じゃあ取り敢えず、俺の言う事を聞け」

「はい、女誑し先生、なんなりと」

「はぁあぁ~~~、もぉコイツと喋るのも嫌になって来た」


そう言わずに、なんなりと仰って下さいな。


ダメ人間先生。



「まぁまぁ、思う存分喋って下さいな」


俺の為に……



「まぁ良いか。時間がねぇから端的に話すぞ。この『クリスマス大作戦』の概要をな」

「はいは~~い、先生。宜しくお願いしま~~す」


崇秀は、俺の態度に呆れながらも、話を始めた。


***


 ……ったくもぉ、なに考えて生きてるんだ、コイツは?

よくもまぁ、こんなロクデモナイ事を、事も無しにホイホイと思い付くもんだな。


感心するわ。


いや……って言うのもな。

崇秀の言う『クリスマス大作戦』ってのが、女性心理をえぐりこんだ、中々えげつない方法なんだよ。


なにがえげつないってな。

俺の彼女である奈緒さんの心理を完全に読み切ってる所が、まずにして、いやらしいんだよな。


じゃあ、此処からは、そのえげつなさを、更に、解り易く説明するな。


まずは『プレゼント』の件。

これは、さっきも崇秀が言った様に『俺の嫉妬』を表す為の商品なんだがな。

普通に聞いたら『嫉妬』なんて言葉に、余り言い印象は持たない。


けど、崇秀は敢えて、此処をデコイに使う事で、その『嫉妬』を有用化しようとしているんだよ。


―――では『何故、有用か?』って話になるんだけどな。


俺が、この嫉妬をする事によって『クリスマスイヴに居なかった』と言う事実を、完全に消し去ろうって寸法なんだ。


まぁ当然、これじゃあ、意味が解らないと思うんだが。

奴は、此処でも、巧みに奈緒さんの心理を付いているんだよな。


―――どう言う事か?と言うとだな。


①まず、奈緒さんはクリスマスイヴに、1人で機嫌が悪い。


②そこに俺が、無茶苦茶なスケジュールを押してまで帰国して、奈緒さんの家まで行く。

(但し奈緒さんが居ない場合は、帰って来るまで待ち続けなければならないがな)


③そこで家に居る、若しくは帰宅した奈緒さんが『意地でもクリスマスを一緒に過ごしたい』っと言う俺の無茶な行動に、少し感動する。

(この時点で、奈緒さんの機嫌は30%程回復するらしい)


④此処で、つかさずプレゼントを渡す。すると彼女は、俺同様に疑問を持つ。

(クリスマスプレゼントが、ベースと言うのは変だからだ(奈緒さん機嫌:変化なし))


⑤④で起こった事が理解しきれてない奈緒さんは、此処で俺に『何故ベースなのか?』って、必ず質問してくるらしい。


⑥……っで俺は、今使っている奈緒さんのベースが元彼の物だと指摘&ちょっと嫉妬してる事を軽く伝える。

(↑これこそが崇秀の言っていた『嫉妬=調味料』の話だ)


まぁそうは言ってもだ。

俺自身も理解し切れてない部分があるだけに、納得し切れてる訳じゃんないんだがな。

なんでも奴が言うには、こう言う『男の独占欲の絡んだ可愛らしい嫉妬』ってのは、女の子にとっては、自分に対する愛情の深さって感じるらしい。

んで+α『クリスマス』&『無茶な帰国』ってエッセンスが加わって、奈緒さんの機嫌は60%以上に回復するるらしい。


実に練り込まれた上手い作戦だ。

(但し、相手が100%自分に好意が無きゃダメらしいがな)



……っで、まだ、これで終わりじゃねぇんだよ。

トドメを刺す為の続きがあんだよな。


⑦俺の心理に感動した奈緒さんが『クラ、このベース弾いても良いかな?』って言いながらハードケースからベースを取り出すだろ。


するとだな。

ベースの下から、女の子の大好きな『指輪』が出て来るって寸法なんだ。


まぁなんて言うかな『ドラマ』や『漫画』んかでは、如何にも定番で有りそうな演出ではあるんだがな。

相手の女の子にとっちゃあ『キザな演出だなぁ』とか思いつつも、こんな事が自分の身に起こるとは思ってないから、これだけでもビッグサプライズになり、更なる感動が込み上げてくるらしいんだよ。


んでだ。

もぉこの時点になったら、今の『自分を大切に想ってくれてる幸せな感覚』が相手を支配して『クリスマス・イヴを過ごせなかった事実』なんてもんは、頭の中から吹き飛んで行くんだってよ。


奈緒さんが気付かず、事が上手く運びさえすれば、まさに完璧な計画だと言えよう。



……しかしまぁ、なんとも怖い事を考える男だよな。

これえお考えたのって、俺と同い年の中学二年生のガキだぞ。


有り得なくね?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


如何でございましょうか?


まぁ倉津君ほど酷い失態をする人間なんて、早々はいないでしょうが。

男女問わず、相手の性格や、ポイントを抑える事により、こう言った失態を取り戻す事も出来るもんなんですよ。


まぁただ、此処まで相手の心理を読める人なら、そもそもそんな失態はしないでしょうけどね(笑)


……ってな訳で。

崇秀から、プレゼント作戦の全容は倉津君に伝えられましたので。

後は、これを如何に上手く演出できるかが勝負ポイント。


上手く出来ると良いですね(・∀・)ニヤニヤ

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