516 愚者にも救済を

 全米トップチャートを自身の曲で埋め尽くした崇秀。

だが、その程度では満足せず、まだまだ何か企んでいる様子なので、そこを追及しようとする俺。


ってか、何を企らんどんじゃコイツは?( ˘•ω•˘ )


***


「……ってか馬鹿秀。話が逸れちまったが、結局、今後はなにする気なんだよ?」

「なんだかなぁ。本当に、わかってねぇんだな」

「はいはい、全く解りやせんよ。だから此処は素直に聞いてやるからサッサと教えろ」

「あっそ。……あぁ、そう言えばオマエ、素直って言えば、アリスとキスしたって本当か?」

「はい?……いやいやいやいや、なんで、そんな事を知ってんだよ!!つぅか、なんで急に、そんな話?」

「あぁ、さっきオマエが『素直』って言ったから思い出しただけだ」


だ~~れ~~~だぁ~~~~~!!

んな余計な事を、崇秀に吹き込んだ奴は?


もぉソイツ、即刻死刑だな死刑!!



「ちょっと待て、ちょっと待て!!ホントに、なんでそんな事をオマエが知ってんだよ?」

「んあ?この間、用事があって、向井さんに電話した時に聞いたからだが」


奈~~緒~~~さ~~~~ん!!


なんであの人は、そんな余計な事ばっかり言うのかなぁ?

コイツに、そんな事をバラしたら、俺がロクでもねぇ事になるって解らないんッスか!!


まったくもぉ!!



「いつ聞いたんだよ、それ?」

「一昨日前だ……あぁ、そう言えばよぉ。向井さん、なんか豪くご機嫌斜めだったけど、オマエなんかしたの?」


あぁ……そう言う事ッスな。

今回の俺のアメリカ行きの件で不満がたっぷりだから、奈緒さん、愚痴が出ちゃったんだな。


まぁけど、普通に考えたら、そうなるわな。


これ、完全に俺の自爆じゃん!!



「いや、あのな。実を言うとだな。なんかしたと言うよりは、なんもしてねぇからこそ問題なのかもな」

「へっ?なんもしてないから問題だと?……って、オイオイ、まさかオマエ……」

「いや、まぁ、その、なんだ。その『まさか』なんだよな」

「オイオイ、幾らなんでも、そりゃあ流石に不味いってもんだろ」

「だよな。俺もそう思う」

「なぁなぁ、仲居間。さっきから『キス』だの『不味い』だの言ってるけど、なんの話だ?」

「あぁっと、率直に言っちまうとな。どうやら、この馬鹿、なんの相談も無しに、自分の彼女を放っぽらかしてアメリカに来ちまったんだよ」

「う~~~わっ、クリスマスイヴに、そりゃあ不味いわ」


誰が聞いてもそうだよな。

普通は『初のクリスマス・イヴ』に、彼女を放ったらかしにするなんて愚行、絶対しねぇよな。


いや、こうなる事は十分に解ってたんだけどさぁ。

奈緒さんの事だから、山中との約束を『出張みたいに考えてくれるかなぁ』……なんて、甘く考えたのが間違ってた様だな。


そりゃあ、機嫌も悪くなるわな。


どうすっかな?



「ホントに、どうしょうもねぇなオマエだけは。取り敢えず、オマエ、急いで一旦は日本に帰れ」

「へっ?」

「いや、流石に俺も、これだけは、向井さんに申し訳が立たなくなっちまう。NYで彼女への2つ目のクリスマス・プレゼントでも買って、早々に日本に帰れ」

「いっ、良いのかよ?」

「良いも、悪いもねぇだろに。この状況で引き止めたんじゃ、俺が向井さんに一生恨まれそうだからな」

「マジか!!恩に着る」


あらら。

崇秀って『ビジネス』と『恋愛』を、もっとドライに考えてるもんだと思ってた。


意外と優しいんだな。


まぁけど、折角、そんな有り難い言葉を頂いたんだから、急いで帰るか。



「ちょっと待て、真琴!!」


俺が慌ててるのにも拘らず、何故か、ボブが、俺を引き止めて来た。


なんだ?

まさかコイツは『ビジネス・ライク』な人間なのか?



「なんだよ?急いでんだよ」

「いや、急ぐのは構わねぇけど。……今の時間からNYに行っても、もぉプレゼントを買う店が開いてねぇぞ」

「あれ?そうなのか?そりゃあ、確かにヤバイな」

「それによぉ。飛行機のチケットにしたって、取れるか、どうか微妙だぞ」

「たっ、確かに」


『急げば、なんとかなる』なんて甘い考えを持っていたけど、現実的に見れば、帰国するのでさえ絶望的だなオイ。

それに奈緒さんとの『初のクリスマス』で『プレゼントも無し』なんて無粋な真似も出来ねぇよな。


これは終わった……全てが綺麗に終わったな。



「……ったくもぉ、オマエだけは。本気でなんも用意してなかったのかよ」

「いや、まぁ、その、なんだ。用意したかったのは山々なんだがな。時間がなぁ。なんつぅか、時間が無かったんだよな」

「もぉコイツだけは、どうしようもねぇな。最後の最後まで、世話の焼ける野郎だな」

「うん?……って、オイ。まっ、まさか、その言い様。なっ、なんか良い手が有るのか?」

「あぁ、1つだけ取って置きの手がある。それもクリスマスが終わるまでに、必ず日本に着くって取って置きの手がな」

「マジかよ!!」

「但し、これを使うには条件付きだ」

「なんだよ?なんでもするから言ってくれ!!」

「オマエ……年始の全米ツアーに付き合え。まずは、それでOKだ」

「なぁ~~~んだ、そんな事で良いなら全然OK!!これが上手く行くんだったら、もぉ、全米中駆け回っちゃうよ俺!!」

「はぁ~、なんとも調子の良い野郎だな、オイ。……まぁ良い。ちょっとそこで待ってろ」


そう言い残して崇秀は、携帯電話を片手に、一旦、別の部屋に移動した。

そんで、隣の部屋で誰かに電話をしてるみたいなんだが、なにをする気だアイツ?


なんか嫌な予感がするんだが……気のせいだろ、きっと。

(↑この状況にあってもお気楽な俺……嘘、マジでこえぇ!!)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


呑気に崇秀の思惑を聞いてる場合じゃなかったですね。

どうやら倉津君は、彼の何気ない一言で、現実に引き戻されたようです。


相変わらずのアホですね(笑)


さてさて、そんな中。

年始から始まるアメリカ横断ツアーに参加する事で、この最悪な状況を覆してくれると言い出す崇秀。


一体、彼は、何をする気なんでしょうね?


それは次回の講釈なのですが。

とんだもない計画を打ち出しますので、良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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