514 見てる世界の違い

 珍しくも、崇秀が認める様な100%の解答を口にした俺だったが。

その実、今回の解答に至っては『100%以上の答えが存在する』と言われる。


ってか!!

なんやねん、その100%以上の答えって?(;゚Д゚)?


***


「100%以上の解答かぁ。……あぁ、なるほど、そう言う事か。今の真琴の話をベースにしろって事だな」

「そういうこった」

「だとしたら、思い付く部分は1つだけだ」

「なんと見る?」

「印税って話だ。多分、そこに仲居間の話は集約されてる」

「はい?」


えっ?印税?


いや、印税って言っても、曲を売り出さなきゃ、全く貰えないよな。

だったら崇秀には、なんのメリットないじゃん。



「いや、俺も想定でしかモノを話せない状態なんだがな。仲居間、ひょっとして、楽曲提供を条件に加え様としてないか?」

「それだ。それがビンゴだよ」

「やっぱり、そうか。それなら、この話も合点が行く」


楽曲提供?


そんなもん、以前からやってるじゃん。

今更、なんでそんな話が出て来るんだ?



「いやいやいやいや、ちょっと待て、ちょっと待て。なんで今更、楽曲提供で、崇秀が儲かるんだ?今まで通りなんじゃねぇのか?」

「アホだコイツ」

「なんでぇ?」

「ボブ、理解したんなら、この蛸助に説明してやってくれ」

「はいよ。OK」


あり?

結局は、俺だけがアホの子なのか?


ヤッパ、このまま『蛸助』の称号は外れないのか?



「真琴、これは非常に簡単な話なんだがな。売れてる奴に楽曲提供するのと、売れてない奴に楽曲提供するのでは、どちらのメリットが大きい?って単純な話なんだ。どっちだと思う?」

「オマエ、馬鹿にしてんのか?んなもん聞くまでもねぇよ。俄然、売れてる奴に決まってるだろ」

「だったら、なんで、この話の重要なポイントが掴めないんだ?」

「なにおぉ?」

「売れるラインを作る仕事を俺に投げてしまえば、自分は楽曲製作に精を出せる。仲居間にとっちゃあ、無駄を減らせて一挙両得って話なんだよ。だからさっき、俺が印税計算の話をした時に、仲居間はキッチリ管理しろって言ったんだよ」

「うわっ!!もしそれが事実なら、軽蔑すべき最低さだな」


ステラの真似。



「まっ、殆ど正解だな。けど、これ以上はなにも教えないぞ」

「オイオイ、まだ有るって事は、俺に予想の範疇で動けって事か?」

「当然、オマエ等ギャングに全てを種明かしをする程、俺は、お人好しな人間じゃねぇよ。この時点で、契約を『する』のか『しない』のかは自分で判断しろ。俺は出来る限りの譲歩はしたつもりだからな」

「そっか。……けど、悪いがな。少々即答するのは難しいな。会社との兼ね合いも有る事だし。時間を貰わないと、俺の一存では決められないな」

「じゃあ、ダメだ。交渉を遅らせる様な間抜けとは組めない。……御破算だ」


ゲッ!!

このアホ、なんの躊躇も無しに商談を決裂させやがったよ。


オイオイ、相手は東海岸を仕切ってる様な奴等だぞ。


そんなんで大丈夫なのか?



「待て待て。そりゃあねぇだろ」

「日拠った事を抜かしてんじゃねぇぞ、ボブ。こうやってる間にも、西海岸の奴等は、確実に力を付けて来てるんだぞ。なのに、そんな間の抜けな事が、よくも言えたもんだな」

「だからと言って、即答出来る訳ねぇだろ」

「間抜け過ぎる。これから人を管理しようって奴の言葉じゃねぇな。オマエの言ってる言葉は、聞くに堪えない戯言だ」

「そこまで言い切れるなら、オマエなら即決出来るって事だよな」

「当然。駆け引き無しに解答してやるよ」

「じゃあ、どう答えるんだ?説明を付けて言ってみろよ」

「あぁ、良いぜ」


ボブ……やめとけ。


基本的にコイツは、正真正銘、頭がイカレテやがるから、相手に質問を構成させてる時点で、自分の明確な回答を持ってる。


だから間違いなく、即答してくるぞ。



「じゃあ、なんだよ?」

「簡単だ。考える間もなく答えは『NO』だ。これ以外は考えられない」

「『NO』だと……なんでだ?」

「バカタレ。俺は基本的に、人が作ったものなんぞには興味はねぇの。自分で作るからこそ価値が有るんだよ。それが例え、どんな苦労が待ち構えていてもな」

「ゲッ!!」

「それにだ。人に施しを受け様とすれば、それ相応の対価を払わなきゃいけなくなる。そんな無様な真似、俺は御免だね。『貸し』は作っても『借り』は作りたくねぇ。これが俺の流儀だ」

「そっ、そう言う見解か……」


可哀想に……この崇秀の言った意見ってのは、ボブの様なサラリーマンには、結構、堪える話なんだよ。


なんでかって言うとな。

『雇われてるだけの人間』と『自ら金を動かす人間』じゃ、心理的な面で雲泥の差があるからなんだよ。


……って言うと、自ずと、この2つに『どんな差が有る』って話になるよな。


けど、此処は、さっきも言ったけど、明らかなまでに『雲泥の差』なんだよ。


まず解り易くする為に、先持って崇秀みたいな『金を動かす人間』について話すとな。

『金を動かす人間』ってのは=関係に置いた場合『ある程度は自由に動ける人間』の事を指すんだ。

これは持ってる金銭の額にもよるんだが、持ち金如何では、自分の好き勝手に動けるって話にも繋がって行く。

勿論、モラルなんてものが存在する以上、完全に自由に出来る訳じゃない。

先程の言った様に、ある程度の規制が掛かるのも否めないからな。

けど、基本的な部分では言えば、自己責任さえ取れれば、全てがヤリタイ放題だし、崇秀の様な無駄に熱い事も出来る。


対して『雇われてる人間』ってのはな。

自分が在籍している会社と言う基準が有るので、必要以上に個性は持てない。

寧ろ、大きく利益を出して会社に貢献でもしない限りは、会社は、社員に全くと言って良い程、個性を求めていないからな。

この辺は、雇われてる人間の辛い所なんだけどな。

サラリーマンってのは、意外と融通が利かないし、決まった給料しか入って来ないから、この馬鹿みたいな無茶な思考には中々行き着かないんだよな。


それにだ。

他人の金で金儲けをしてるだけにサラリーマンってのは、どこか冷めてるんだよな。


この『2つの異なる思考』こそが、今のボブと崇秀の違い。

幾ら、高い地位で雇われているボブでも、ナンデモカンデモ自分で切り開く崇秀の思考には追い付けないって話だな。



「まぁ、そういうこったな。俺と、オマエじゃ、見てる場所が違うんだよ」

「そうか。……なら、残念だけど、この話は御破算だな」

「いいや、違うな。そうじゃねぇ」

「なにが違うんだ?まだ、なにか方法が有るって言うのか?」

「勿論。但し、それもオマエ次第だけどな」

「俺次第?」

「あぁ、オマエ次第だ」


来たな。

予想に反する事無く、やっぱり来やがった。


此処は、崇秀の特性と言っていい所なんだがな。

コイツ……自分の知り合った人間を成功させる為に、必ず一回突き放してから助言するんだよな。


まぁ、世間で言うお節介だな。



「どうするんだ?どうやれば、この交渉が成立する?」

「なぁに、簡単な話だよ。さっきの話を踏まえた上で、オマエが、俺と同じ側の人間になりゃあ良いだけのこった」

「へっ?」

「余計な事を考えず、管理する側の人間になりゃ良いんじゃねぇの、って言ってんの」


出た!!

ついに出たよ!!

金を持ってる奴の傍若無人な振る舞いが。


って事はだ。

この後、絶対に馬鹿みたいな事を言い出すぞ。



「『管理する側』って……結局、俺に、今のレーベルを裏切れってのか?」

「違ぇつぅの。勘違いも甚だしいぞ。俺は『会社に、もっと大きな利益を齎す人間になれ』って言ってんの」


なっ、言った通りだろ。


無茶苦茶だろ。



「無茶言うなよ。俺には、そんな才覚もなければ、会社を立ち上げる金もねぇよ」

「あのなぁ、ボブ。才覚がねぇとか言う暇が有るんだったら、少しは足掻いて、自分を磨く方向で、それを身に付けろよな。それは他人が、どうこうして得れる問題じゃねぇだろ」

「確かにそうだな」

「けどまぁ、もし、自分を磨く気があるって言うなら協力はするぞ。勿論、金に関しては、俺がなんとかしてやる」

「オイ……出逢って間もない俺に、それだけの大きな出資するって言うのか?正気の沙汰じゃないぞ」

「いや、出資先は、オマエの勤めているレーベルだ。会社を通して、無償で、オマエの為の子会社を設立してやる。それと、この話に乗るなら、この交渉自体も引き受けてやる」

「オマエ……なんで、そこまでするんだ?なんの為に、そこまでする必要がある」

「別になんもねぇよ。これは、俺にとっての、ただの使命感みたいなもんだからな。オマエが気にする話じゃない」

「使命感だと?それに気にすんなつっても」

「いや、ホントに、なにも気にする様な事じゃねぇんだ。これは、俺の身勝手な振る舞いに過ぎねぇからな」

「けどよぉ。使命感や、身勝手さだけで、此処までする理由にはなってねぇよな」


正しい言い分だな。


けど、そんな正当な理屈は、コイツには通じない。

自分でも言ってる様に、コイツの身勝手さは折り紙付だからな。



「なら、こう言うのは、どうだ?オマエの才能ってのは、ギャング共なんかの為に埋もれさすには勿体無い。そう俺が判断したから、この出資しようと思っただけだ。それに……」

「それに?それになんだよ?」

「それに俺達、もぉ『ダチ』だろ」


結局は、そう言うこったな。


俺達はもぉ赤の他人じゃねぇ「ダチ」なんだよ、ボブ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


「蛸助」の称号は、倉津君から外れる事はありませんでしたが。

実際の話で言えば、倉津君の視点は、非常に崇秀の考えを理解した視点だったりします。


なんせまぁ、実家が『全国にフランチャイズ展開してる様な大きな会社の跡取り(広域ヤクザの組)』ですからね(笑)

こう言う面での倉津君は、矢張り強いです♪


……っでまぁ、綺麗事な部分は、これ位にして。

今回の崇秀の思惑、っと言う物を説明させて頂きますと。


ボブさんを本気でダチだと思ってるのは間違いないのですが。

その裏では、レーベルを内部からボブさんに食い破らせて、彼をこの会社のCEOにしようと企んでいます(笑)


要するに、GUILDを今以上に発展させる為に、彼を自身の協力者にしようとしている面がある訳ですね。


これこそが、崇秀が自身の口でもよく言う『利潤を与える関係』

権力や地位っと言うものは、非常な甘美なものなので。

一度でも、崇秀の手で成功してしまったら「自ら抜け出せないメビウスの輪に嵌まり込んでしまう」って感じですね♪


まぁ言うて、崇秀自身は、そんな利益なんて、何にも求めてないんですがね。

ただ単に、このイカレポンチは『自分と出逢った知り合いを成功させてあげたい』だけなんで(笑)

(因みにですが、西海岸のレーベルは、この時点で、ほぼ手中に収めてます)


さてさて、そんな感じで、次回もボブさんの説得が続く訳なのですが。

ボブさんが、どうなって行くのかは、次回の講釈。

また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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