512 見返りはなんだ?

 ボブの正体は『東海岸を仕切るレーベルのエージェント』だった。

そして崇秀は、そんな彼に対して『自分の何が欲しいのか?』を尋ねる事に。


なんだか波乱の予感しかしねぇな(;゚Д゚)


***


「さて、どう出るボブ?俺のなにが欲しい?」

「直接的だな」

「あぁ、ビジネスの話に、さっきみたいな遠回りは必要ねぇ。率直に必要な意見だけを言え」

「そうか。なら、端的に言うぞ。オマエの作ったアメリカGUILDを、ウチのレーベルに譲って欲しい」

「見返りはなんだ?」

「ウチのレーベルの社長に就任ってのは、どうだ?」


スッ……スゲェ!!

中学生で社長就任とか有り得ねぇし!!


しかも相手は、黒い噂は絶えないが超大手のレーベルだぞ。



「ふん。何を言うかと思えば、クダラネェな。そんなんじゃあ話にもならねぇ。その程度の見返りじゃ、俺の心はピクリとも動かねぇな」


なっ!!なっ、なんで?

馬鹿じゃねぇの、コイツ?

この美味しい話を蹴るつもりか?


だっ、だってよぉ。

ボブの所属するレーベルは、黒い噂があるにしても全米屈指の大手レーベル。

その社長就任でも心が動かないなんて、脳味噌がどうかしてるぞ。



「ちょ、ちょっと良いか崇秀」

「んあ?なんだ?」

「オマエ、今の話を聞いても尚、ほんの、ちっとも心動かねぇの?」

「あぁ、全く話にもならねぇ。こんなもん、上手く見返りって名目を付けてるだけで、実際、俺には、なんのメリットもねぇ糞話だからな」


えっ?


そっ、そぉかぁ?



「なんでだ?オマエが社長に就任すりゃ、レーベルの黒い噂だって消す事は可能なんじゃねぇのか?それに、今にも増してヤリタイ放題になるんじゃねぇのかよ?」

「アホクサ。よくもまぁ、そんな一方的な見方が出来たもんだな」

「なんでだよ?」

「じゃあ、聞くがな。現状で、黒い噂が消えた後の俺の保証はどこにある?」

「あっ……」

「それにだ。それだけの黒い噂が消えるって事はな。それ=分だけ会社の利益が落ちるって話だろ。そこを上手くコイツの大元が突けば『俺の解任』は容易く成立する。故に、コイツの言ってる事はな。全部、自分達の会社を保身する為だけのモノでしかねぇんだよ。……こんなもん、誰が聞いてもリスクのみだ」


あらら、深いのな。

相変わらず、コイツの見解は常軌を逸して深いな。

一見、俺なんかが聞いたら、すげぇメリットが有る様に感じたんだがな。

崇秀の丁寧な解説を聞くと、全くメリットなんかない事に気付く。

寧ろ、これを受ける様じゃ『経営出来無い男』のレッテルを貼られるだけだもんな。


スゲェ……



「じゃあ、適当な説明も付いたし。この話は、ご破算って事で」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。例えば、その保証があるとしたら、どうだ?」

「だとしても、そそらねぇ話だな。寧ろ、前同様、交渉にもなってねぇぞ」

「なんでだ?」

「いや、オマエ……それ以前の問題として、今、GUILDに登録してくれてる人間が、今、何人居るか正確な数を把握してるか?その糞みたいな地位が、それに相応するものだと思ってるのかよ?」

「いや、相応か、どうかは個人の捉え様だから、なんとも言えないが。GUILDの登録者数ならわかるぞ」

「ほぉ、じゃあ、何人だ?」

「『正確に』とまでは言えねぇが、確か500人ぐらいだって話は聞いてる」

「なんだ、そりゃあ?ボブよ、あんま自分の無能さをひけらがす様な馬鹿な事を言うもんじゃねぇぞ。GUILDの登録者は、今、オマエの言った、その8倍。優に4000人を超えている。少し勘違いが過ぎるんじゃねぇか?」

「なっ!!4000だと……」


因みにだが、俺は驚かないぞ。

いや、寧ろ、そんなこったろうと思ったよ。


この馬鹿が、その程度で収まってる筈がないからな。



「そっ、軽く見積もっても4000人。んで、その中でも飛び抜けてる奴等が、オマエの言った500人程、在籍してるってこったな」

「いつの間に、そんな数になったんだ?」

「設立当初から、俺の目を付けた人間が1000人程居た。その後は、レーベルとの兼ね合いで爆発的に人数が伸びている。……さてボブ、この話で、なんか気に掛からねぇか?」

「その異様な数の増え方。まさか西……西海岸の連中か?」

「察しが良いな。ご名答だ」


とうとう出たな。

コイツの予測不可能な行動が……


此処までで、崇秀の馬鹿が、なにをしたかまではハッキリとはわかんねぇけど。

西と東で両天秤に掛けた事だけは、間違いないだろうな。


ガキの癖に、どこまで交渉が上手いんだよコイツ?



「じゃあ、既にGUILDの権利は、西のモノって事か?」

「いいや、そうじゃねぇ。GUILDの権利自体は、未だに俺が有している。西には、その権利はねぇ」

「どういう事だ?」

「なぁにね。俺の気紛れな条件に、西の連中が乗ってくれたから、ちょっとだけ手を貸してやったまでの話だ」

「なっ!!なんなんだよ!!そのオマエの言う気紛れな条件ってのは?」

「おっ……なんだ、なんだ?その質問をするって事は、ボブも話に乗ってくれんのか?」

「えっ?いや、まぁ、兼ね合いが合えばな」

「そっか、そっか。そりゃあ良いや。……あぁけど、確か西から来た奴も、最初は、オマエと同じ様な事を言ってたな」

「うぇ……俺、嵌められてるって事か?」


崇秀の言葉に、ボブが死ぬ程嫌な顔をしてやがるな。


まぁ、そんな表情にもなる気持ちも解らなくもないわな。

なんてたって、今回は嵌められたとしても、全米4000人を誇るGUILD登録者を選抜出来る権利を得れるか、どうかの瀬戸際なんだからな。


成功すれば、文句無しに、これはボブ本人の途轍もない大きな功績になる。


しかしまぁ、この微妙なバランスを持つボブの心理状態を見据えて、なにやら良からぬ条件を付き突けるなんて……コイツは、本当に怖い男だな。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


相変わらず、崇秀はイカレテますねぇ(笑)

普通なら、こんな交渉をするだけでもビビる所なのですが、どうやら彼には、そんな物は存在しない様です。


真正面から、完全に論破してしまいましたね。


そして、バックに西海岸の人間がいる事により、下手な手出しも出来なくしてしまっています。


恐ろしい男なのです。


さてさて、そんな崇秀優位な状態の所。

崇秀は、更なる追い込みをボブさんに掛けて行く様ですね。


そこら辺がどうなるかは、次回の講釈。

少しでも気になりましたら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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