504 倉津君自ら証明する事に

 突然崇秀が、GUILDランクなる奇妙な物を作った理由。

それはまず『バンド内での実力差をハッキリさせ』『無駄を省く為のもの』だと言い切る。


そして、まだその他にも理由がある……


もぉ、コイツだけは……(;´д`)トホホ


***


「『見知らぬ他者とのセッションする事によって生じる、科学反応への期待』だな」

「なんだ、そりゃあ?」

「これも、なんて事はない話なんだけどな。長期に渡って同じバンドで音楽を演奏してると、同じ様な曲バッカリ書いて、基本的に感性が腐る。その防止策として、他人とセッションさせるのが目的って話だ」


あぁ、そこかぁ。



「なぁ、崇秀」

「なんだよ?」

「オマエってさぁ、前から、その話を良くするけどよぉ。それって、そんなに悪い事なのか?」

「まぁその辺は、聞き手の捉え方にもよるんだけどな。同じ様な曲を『そのバンドの個性』と見る奴も居る以上、全てが悪い事とは言い切れない。けど、俺にはどうしても、そこが『日拠ってる』としか思えない。これは『個性の上書き』ってもんが出来てねぇ証拠だからな。故に、他人の感性をプラスする事によって、新たな個性を見い出させ様としてるだけの事なんだが。……なんか、その辺の俺の感覚は、他人から見たら理解しがたいらしいな」

「まぁ、オマエの感覚は人並み外れておかしいからな。そう言う結果になるんじゃねぇのか」

「かもな」


認めやがったよ。


この辺の自覚だけは有るんだよな。



「っで、終わりか?」

「いや、もぅ一個有るぞ」

「なんだよ、それ?」

「実は、このシステムの最大の目的はな。音楽で、国境って枠を取り除く為なんだよ」

「はぁ?」


来た……とうとう来た。

此処までの話は、比較的、理に適った話だったんだけど、とうとう最大級に、おかしな事を言い出した。


だってよぉ『音楽の国境なし』なんて、世間じゃ、よくそう言われてるがな。

事実は、結構、そうじゃない方が多いんだよな。

国同士の抱えてる問題が多過ぎて、中々、その理想には到達させられない。


そんな当たり前の事実を知ってる筈のコイツが、こんなロクデモナイ事を言い出すって事は『なにか勝算あり』と見越しても、強ち間違いじゃないと思う。


なら、なにを考えてやがる?



「無理じゃね?」

「あぁ、現状じゃ無理だな」

「はぁ?じゃあ、ダメじゃねぇかよ」

「それが、そうでもないんだよな」

「なんでだよ?」


無理なのに、そうでもない?


なんじゃ、そりゃあ?

そんなもん、ただの矛盾じゃねぇかよ。



「あのなぁ、倉津。前も言ったがな。企画ってもんは、ナンデモカンデモ、そう簡単には上手く運ばねぇものなの。着実な方向を、ゆっくり示して行く事によって、改変される事の方が多々あんだよ。その為には、一歩一歩進む計画ってのも作らなきゃイケネェのな」

「だったらよぉ。この先も、これを続けて行きゃ、光明も見えて来るって事か?」

「馬鹿言ってんじゃねぇよ。既に、行き先だけは見えてるんだよ」

「なに!!」


なんて奴だ。

この短期間に、早くも、その光明が差して来てるって言うのか?


どう言う行程で、そんな話が出てきたんだ?



「オイオイ、過度に期待すんなよ。光明が見えてるつっても、まだ、相当、細い線だからな」

「けど、見えてはいるんだろ」

「まぁな。それについては、確実だな」


やけに自信有り気にモノを言ってやがるな。


って事はだ。

明らかに、何らかの確信を持ってやがるな。



「なっ、なぁ、崇秀。オマエには、一体、なにが見えてるんだ?」

「いや、そんな大層なもんじゃねぇよ。GUILDに所属してる連中が『他人に対する興味』ってもんが、明確に見え隠れしてるってだけのこったからな」

「はぁ?『興味』?……なんだよ?そんなもんなら、誰だって持ってるだろうに。意外と期待外れな答えだな」

「オイオイ、そこの考えは、全然違うぞ」

「なにがだよ?」


確かにな、他人に興味を持つ事は、決して悪い事じゃない。

寧ろ『無関心』で居ないだけでも褒めるべき感情だ。


だからと言ってだな。

そんな程度の事だけで『興味を持つ』のと『国境を無くす』が、簡単に繋がる様に思えないんだけどな。


よくわかんねぇな。



「そんな神妙に考えるなっての。この話は、オマエが考える以上に、もっと単純な話だ」

「だからよ。それが、なんだって聞いてんだろ」

「んあ?マジでわかんねぇの?」

「マジでわかんねぇの」

「あぁっそ。じゃあ、これも簡単に説明してやるよ」

「おぉ、頼む」


なにを言うつもりだ?


不安しか残らねぇのは、何故だ?



「じゃあよぉ。敢えて、此処は質問から始めるか」

「また、その質問形式かよ。面倒臭ぇ~~~」


うわ~~~、コイツが、この方式を採用したって事は、相当、解り辛い事が含まれてるって事だよな。


マジ、面倒臭ぇ~~~~!!


聞くの辞めよかな。



「まぁ、そう言うなって、楽しく行こうぜ」

「ちっとも、楽しくねぇし」

「俺、楽しいから」

「俺、楽しくねぇから」

「じゃあ、最初から聞くな」

「じゃあ、今から聞かねぇ」


必殺!!オマエお得意の鸚鵡返し!!


どうだよ?相当、嫌な気分だろ?



「あっそ」


ゲッ!!ヤッパ、堪えてない。


だったら、堪えるまで沈黙してやる。



「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」


……無理だな、こりゃあ。


崇秀の奴、俺の無視なんか気にも留めず。

ご機嫌な様子で、さっき読んでいた『犯罪心理学』の本に集中し始めやがったよ。


それ処か、俺の存在すら無視してやがる。


此処に来て、またしても『透明人間扱い』かよ。


ホント、ヤナ野郎だな。



「わぁかったよ。聞くよ。聞きゃあ良いんだろ」

「んあ?なんの話だ?」


うわっ!!マジかコイツ?

俺との話なんか、完全に忘れてやがるよ。


頭の切り替えが早過ぎんだろ!!

普通の人間なら、もうちょっと話を引き摺るもんだぞ。


ホント、どうなってんだ、コイツの頭の中だけは?



「さっきの話だよ。それを聞かなきゃ、俺は日本に帰れないの」

「あぁっそ。んじゃあ質問な」

「オマエ、解ってて言っただろ。……最低だな」


結局、いつも、これだよ。

トドの詰まり、コイツは、自分の思い通りにならないと気が済まねぇってこったな。


ホント、自分勝手野郎だな!!



「いや、別に解ってて言ってる訳じゃねぇよ。マジで『どうでも良いな』って思っただけだ」

「もっと最悪じゃねぇかよ」

「そうかぁ?オマエが望んだんだから、全然、最悪じゃねぇじゃねぇかよ」

「さよどすか」

「さよどすなぁ」


うん、絶対に、コイツには口では勝てんな。


だからもぉ、や~~めた。

こうなったら無抵抗主義のガンジーじゃ!!



「……っで、質問ってなんだよ?」

「いや、質問って程、仰々しい話じゃねぇんだけどな。このGUILDランキングを始めてから、以前より登録者のCD売り上げが異常な伸びを示してるんだよな。さて、何故でしょう?」

「そりゃあオメェ。ランキングに入ってりゃ、一般人は気になんだろ。そう言う単純な話じゃねぇのか?」

「いや、それで正解だ。そんで、それが全てを表す答えだ」

「はい?なんのこっちゃ?」


わかんねぇ~~~!!

コイツの言う事は、全くわかんねぇ~~~!!



「いや、考えてもみろよ。気になんのは、なにも一般人だけじゃないんじゃねぇのか?」

「他のランカーも、気になって購入してるって事か」

「近いな。後、一捻りしてみろよ」

「ふ~~~む……じゃあ、例えばよぉ。こう言うのはどうだ」

「なんだ?」

「いや、例え話なんだけどよぉ。CDの売り上げが上がってるって事は、CDを出してる、その国だけじゃなくて、他国にもCDが行き渡ってるって事だろ。それ=国境を消し去るって話になるって奴か」

「ほぉ~~。難しい方の見当が先に付くとは、相変わらず、面白い奴だな」


難しい方かぁ。


って事はだな。

もっと単純に考えりゃ良いッて事だよな。



「じゃあよぉ、こう言うのはどうだ?」

「なんだ?」

「これも例え話なんだがな。CDを聞いて、逢ってみたくなるとか言う奴か」

「ハイ、御名答だ。じゃあ序に、その時に起こる心理的な説明をしてみろよ」

「待て待て、そう言う専門的な事は、流石に、わかんねぇよ」

「言葉に惑わされるなっての。その時の『逢いたくなる心理』を上手く話せって言ってるだけだろに」

「あぁ、そう言う事な。なら、簡単じゃねぇかよ」

「ほぉ~~~。して、どう捉える?」


そんな簡単な事を聞くなよ。


馬鹿にしてやがんのか?



「アホ臭ぇ。良い曲を聞けば、どんな奴が作ったのか気になるだろ。それだけの話だ」

「じゃあよぉ、その心理に付け加えて、セールスが上がって、CDの印税が入ってきて、生活に少々潤いが出て来た。さて、そんな奴は、どういう行動に出る?」

「うん?まぁ問題がねぇなら、GUILD上で連絡を取って逢いに行く事もあるだろうな」

「それが他国になったら、どうだ?」

「他国?……う~~ん。そうだな。そりゃあよぉ、国内に比べたら躊躇するだろうが、本気で逢いたいって思ったら行くんじゃねぇの」

「そぅ、そう言う事。あぁ因みにだが、これを立証する良い事例があんだよな」

「ほぉ~~~、そりゃあスゲェな。既にGUILD内の誰かが連絡を取り合って、密かに接触があったのか?」

「オマエが、山中の代理で俺に逢いに来た。オマエは、自ら立証したって事だよ」

「ゲッ!!」


言われてみりゃ、ホントだな。


このGUILDランクには関係ないかもしれないが。

崇秀の載っている雑誌を見た山中の馬鹿が、崇秀の行動が気になって仕方が無くなり、金に糸目も付けずに俺に逢いに行く事を依頼してきた。


これ自体は少々意味は違うかもしれないが、確かに立証はされてる様な気はする。


……って事は、これ自体がコイツの狙いだったのか!!


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


どうやら崇秀は、この案件に関しての実験として、自身を雑誌に掲載させ。

日本の仲間達の動向を窺っていたみたいですね。


本当に恐ろしい男です(笑)


まぁ、そんな崇秀の思惑に、見事に嵌ってしまった倉津君と山中君ですが。

この程度の事で、この男が終わる筈もなく、この話はまだ続きます。


さてさて、何を考えているのやら(笑)


それは次回の講釈。

また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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