503 GUILDシステムってなんぞや?

 山中の依頼で、崇秀の動向を知る為にアメリカまでやってきた俺。

そして、そのアホンダラァに話を聞いてみると……年始からフェスを3つと、アメリカ横断ツアーをすると言い出す。


俺、啞然( ゚Д゚)アホや……


***


「なぁ、オイ、因みになんだが。その3つのフェスとやらの準備は万端なのか?」

「勿論。なに1つとして見落としは無いな」

「場所の確保と、出場者の出演依頼は?」

「当然、最高の場所を確保してるし、出演者は全員了承済みだ」

「じゃあ、最後に聞くけどよぉ。チケットの売れ具合ってのは、どうなんだ?」

「オール・ソールドアウト。……完売だな」


この用意周到なキチガイに、こんな事を聞くだけ野暮だったか……


じゃあ、ツアーの方を……



「そっ、そうか……っで、全米ツアーってのは、誰とやんだよ?」

「そんなもん、言わなくても決まってんだろ。全米に散らばってるGUILDの連中とやるんだよ」

「うん?また奇怪な事を言うなぁ。それ、どういう事だよ?その言い分じゃ、固定メンバーじゃねぇってのか?」

「あぁ、地域に居る『1位から100位までのGUILDランカー』とセッションするだけのこった。まぁ言うなれば、既成のバンドに、俺が単身乱入するって処だな」

「ちょっと待て!!なに考えてんだオマエ。そんなの無茶苦茶じゃねぇかよ。……それによぉ、今言った『GUILDランカー』って、なんだよ?」


またまた、おかしな言葉が出て来やがったな。

つぅか、この馬鹿は、なんで、いつもこうやってロクデモナイ事バッカリ、直ぐにしやがるんだろうな。


この分じゃ、きっと……間違いなく……とんでもない事を言い始めるぞ。



「あぁ、それか。それって言うのはな。GUILD登録者の楽器別ランキングのこった。早い話、人気や実力を計る物差しみたいなもんだな」

「なんでまた、そんな露骨なもんを作ったんだ?」

「なんて事はねぇよ。バンドのメンバーから、ツマラナイ拘りを無くさせる為だ」

「はぁ?」

「これじゃあ、わかんねぇか」

「あぁ、悪ぃが、良くわかんねぇな」


以前コイツが、そんな事を言っていた様な気がするが……あれ、なんつってたかな?


多分、その辺りの話だと思うんだがな。



「そっか。……まぁそうだな、今より噛み砕いて言えば。より良い環境を作る為には『バンドから、早急に下手糞を排除していかなきゃ成らない』って事実を突きつけるのが、まず第一の名目だな。これが出来無い様じゃ、メジャーには上がれねぇからな」

「なんでだよ?毎日演奏してりゃ、楽器なんざ、ある程度までは上手くなんだろうが」

「アホか?ある程度の上手さでメジャーに上がれるのは、ミーハーな日本の糞音楽業界だけだ。それを証拠に、アメリカで成功した日本人は、殆ど居ねぇ。故に、このアメリカって国じゃあ、もっとシビアにモノを考えないと、メジャーデビューなんて夢のまた夢って訳だな。それこそが完全実力主義と言われる所以なんだよ」

「日本と、アメリカじゃ、それ程までに事情が違うって事か?」

「まぁ、短絡的に考えても、そう言うこったな」


う~~わっ、思ってた以上に、アメリカの音楽業界の事情は厳しいんだな。

それに、コイツの言う通り、日本の音楽業界は、かなり甘いってのも否めない話だしな。


特に女子に対しては、その甘さが顕著に出てる。

メインである『歌の上手さ』よりも、歌が下手でも、見た目が『可愛い子』の方が売れるんだから、基本的な部分で『ビジュアル重視』に成ってやがるからなぁ。


だったら、そう言う意見が出ても、おかしくはねぇよな。


……確かに日本は『実力主義』とは言い難い面が多岐に渡って見え隠れしてるしな。



「けどよぉ『成功する為に仲間を排除する』ってのは、流石にどうかと思うぞ」

「はぁ~~~、あのなぁ、倉津。仲良し子吉だけで成功出来るんだったら、誰だって『友情パワー』で成功するっての。実際は、そうじゃないからこそ、このシステムを作ったんだろうが」

「けどよぉ。そこまでして成功したいもんなのか?」

「さぁな」

「『さぁな』って、オマエ。なんで急に投げっ放しなんだよ?」

「んあ?そんなもん簡単な話だ。メンバーの技量を引き上げる技術があれば、この話自体は問題にもならねぇ。この『メンバーチェンジ』って言うのは、それが出来無い奴の為の保険みたいなシステムだからな。俺も投げっ放しにせざるを得ないんだよ」


いや……それってよぉ。

オマエは、そう言う事が出来るからって自慢か?



「だったとしてもだな。みんなで試行錯誤しながら、バンドの絆を深めて行くのが、正当なやり方ってもんじゃないのかよ?」

「んな悠長な事してたら、ジジィやババァに成っちまうつぅの。オマエ、ドンだけ気長なんだよ」

「けどよぉ……」


確かにな。

確かにメンバー全員のレベルアップを試みていたら、年月の経過に伴ってジジィには成っちまうな。


だからと言ってだな、見ず知らずの奴とバンドがしたいか?

それに『そいつ等と本気で成功したい』って思えるものなのか?


なんか違くね?



「『けどよぉ』じゃねぇの。……良いか、倉津?バンドってのはな。売れる年代ってのが、ある程度限定されてんだよ。その中で呑気に過ごしてる時間なんざ1秒足りともねぇ。要するにだ。カットすべき事を、早急にカットしねぇと、実力が有っても消えて行く運命にある訳だ。それらの哀れな実力者を減らす為には、この『カットシステム』が必要になってくる。その為に『GUILD内ランキング・システム』を採用したんだよ」

「そうなんだろうけどよぉ。なんか、イマイチ納得出来ねぇんだよなぁ」

「まぁ、無理に納得しろとは言わねぇがな。現実的な話で言えば、それでポシャったバンドも世の中には数が知れないぐらいある。結局な、このシステムを使うも使わないも、本人達次第って訳だな」

「そこも投げるのかよ?」

「当たり前だろ。自分の身の振り方つぅもんは、基本的に自分で考える処だ。俺は手助けはするが、個人の感情にまでは口は挟まない主義なの」


結局は、そう言う事か。


コイツは、いつも、そうやって他人に解り易い選択肢を提示する。

そんで、その後は、変に介入せずに、基本的に全部投げっ放しにしてしまう。


早い話、取れる責任は、自分で取れって事だな。


解っちまえば、なんとも解り易い話だな。



「全てが自己責任って訳か」

「当然」


やっぱりな……



「っで、それだけの為に、このシステムを作ったのか?」

「いやいや、まさかまさか。そんな単純な理由だけで、こんな面倒臭いもの作るかよ。理由なら、まだまだ他にも有るぜ」

「『まだまだ』って……因みに、なんだよ?」


もぉホント、コイツだけは……


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


まぁとんでもない事とは言え。

崇秀が相手ともなると、3つフェスを開催する事や、アメリカ横断ツアーをする事ぐらいまでなら納得出来なくはないでしょうが。

またなにやら『GUILDランカーシステム』とか言う、ややこしいシステムを作って来たみたいですね。


そして、それを作った1つ目の理由が『バンド内の実力を測るもの』だと言い。

更にまだまだ、その理由があると言う。


さてさて、そんな訳で次回は。

その辺りにスポットを当てて物語を進めて行きたいと思いますので。

良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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