502 崇秀は、何処に行っても崇秀(笑)

 ニューヨークでの道案内をしてくれているボブ。

そんな彼の洞察力が鋭い事に気付いた俺は『変人同士が共感するのでは?』っと思い、ボブを伴って、崇秀の居るマサチューセッツを目指す事に。


さてさて、どうなる事やら(笑)


コイツ等2人を逢せたら、なんか面白そうじゃん٩( ''ω'' )و


***


 あれ?……思った以上に近いんだな。

俺は世界地図……いや、アメリカの地理なんぞカラッキシわかんねぇから、電車なんて適当な選択をしたんだがな。


俺が思ってた以上に、マサチューセッツ州ケンブリッジ市は近かった。


なんせ、時間にしても、電車の中で飯を喰ってる間の数時間で、ほぼ移動も済んだし、食後からの到着までの残り時間も、異国の景色を見てるだけで全然気にならなかったしな。


それ程、距離が短かったって話だな。


まさに、あっと言う間の出来事だ。


***


……ってな訳でだ。

やってまいりました、最終目的地、マサチューセッツ州ケンブリッジ市。


この街の景観の特色と言えばだな。


なんて言いましょうかねぇ。


……びっ、微妙。


いやいやいやいや、なんでもない、なんでもない。

本当は『微妙』って言う程、決して悪い街じゃないんだぞ。

ちょっと片田舎で、変人が集まるには、丁度、良い街っぽいってだけなんだぞ。

ワザワザ『こんな片田舎に住む奴の気が知れない』なんて、微塵も思ってないからな。


ははっ……ははっ……思ってないからな。

(↑けど『変人を隔離するには、中々好都合な場所だなぁ』と思った俺)


……ってな訳でだ。

景観なんて、余計な事は気にせず、シッカリと気を取り直した上で、崇秀の住むアパートを目指して街の中を歩き出す。


***


 駅から15分程歩いた所に、奴のアパートは存在した。


けどな、そのアパートってのがな。

なんとも古臭い赤レンガ造りのボロいアパートでだな。

見た目だけで判断すりゃ、お化けでも出て来そうな勢いのオンボロさ加減なんだよな。


潔癖症のアイツが住んでるとは、とても考えづらいアパートの様相だった。


そんなボロアパートに疑念を抱きつつ『ギシギシ』っと軋む階段を、勝手に3階まで上がり、305号と書かれた奴の部屋の前まで辿り着く。


本来の俺の性格なら、このままなにも気にせず、勝手に部屋にズカズカ入って行くんだが。

此処に学校のツレや、若しくはルームメイトなんかが居たら厄介。

そんな心境もあって、取り敢えず保険を掛ける為に、如何にも壊れて鳴らなさそうな呼び鈴を押してみた。


『ブガァガーーーブガァガーーー』


オイオイ、なにこれ?

電池切れを起しかけてるみたいだし、音が掠れて、なんとも無様な音が鳴るじゃねぇかよ。

なんちゅうミットモナイ呼び鈴だよ。


しかもよぉ、この分じゃ、普通に鳴ったとしても『ブーブー』って音が鳴るだけだろ。


アイツにしちゃあ、やけにセンスのねぇ呼び鈴だな。


ひょっとして部屋を間違えたか?



「はいよ。誰か知んねぇけど、鍵なら掛けてねぇから、勝手に入ってくれ。今、手が離せねぇんでな」


あっ……今、奥から聞こえてきた声は、間違いなく崇秀の声だ。


だったら、遠慮なんかイラネェよな。


勝手に入ろ。



『ガチャ!!ギィ~~~~』

……っと言う、途轍もなく、不快な音と共に扉を開く。


俺は、それに反応して、怪訝な表情を浮かべながら部屋の中に入る。



「なっ!!なんじゃ、こりゃあ!!」

「うぇ、マジで、なんだよ、これ?」


部屋に入るなり、俺とボブの目に飛び込んで来た光景は、余りにも酷いものだった。


入って直ぐの廊下中に、本が無造作に置かれ。

俺の視界に有る限り、360度、何処を見ても本だらけな状態。


見ただけでは既に、何冊有るのかさえ解らない程の悲惨な状況だ。


しかも、この無造作な置き方。

綺麗好きで、几帳面な崇秀からは考えられない様な、杜撰な光景だとも言えよう。



「2人?誰だ?」


奥の部屋から2人の気配を察知したのか、そんな間の抜けた声が聞こえて来る。


どうやら奴は、この奥の部屋に居るらしい。


俺は、ボブをその場に待機させ、なんの躊躇も無しに、その部屋の扉を開けた。


あぁ、因みにだがな。

ボブを、その場に待機させたのは、俺と崇秀のやり取りを観察させる為だ。


直接会わすより、一テンポ置いた方が面白そうだろ。


そんな理由だ。



「オイオイ、崇秀。なんだよ、この汚い部屋は。マジで汚ねぇな」

「おぉ、誰かと思えば、倉津かよ」

「いやいやいやいや『倉津かよ』とか、そう言う問題じゃなくてだな。なんでこんな惨状になってんだよ?」

「あぁ、悪ぃ悪ぃ。掃除する時間も、暇もなくてな。読んだ本を部屋の外に出してたら、そんな感じになっちまったんだよ。マジで悪ぃな」

「はぁ?オマエ、今『読んだ本』つったけど。まさか、此処に有る本を、全部読んだって言うんじゃねぇだろうな?」

「まぁ、軽くだが、一通りは目を通したな」


出たよ出た。

逢って直ぐに、早速、不可解な行動が出やがったよ。


……って言ってもだな。

此処に置かれている本の量が尋常じゃないのは、左程、問題じゃないんだよな。

この馬鹿の場合、これを読んだと言っても大して驚きは無い。


問題なのは……その本のジャンルの多種多様さ、これこそが、最大の問題なんだよ。


一見しただけで『音楽関係』や『美容関係』の本が在るのは、勿論わかるんだがな。

『物理学』『進化論』『考古学』『人類学』『心理学』『量子力学』『統計学』『遺伝子工学』etc……そんな、多種多様な学問系の本も置かれている。

更に驚くべき事に、音楽や美容関係を除いた、その他のホビー関係の本まで見事に取り揃えられている。


これには規則性も無ければ、全く方向性も見えない。


なにがしたいんじゃ、コイツは?



「オマエ、馬鹿じゃねぇの?」

「あのなぁ、倉津。いっつも、ちゃ~んと説明してるが『俺は馬鹿じゃねぇ』。それに、馬鹿代名詞はオマエだってのも説明済みだと思うが」

「いやいやいやいや、確かに、俺も馬鹿かも知んねぇけどよぉ。オマエも大概だぞ」

「ほぉ、馬鹿だと認めれる様になったとは大した進歩だな。ちょっと見ない間に、オマエも大人になったもんだな」

「うるせぇつぅの!!近所のオッサンかオマエは!!……っで、さっきから、なに読んでんだよ?」

「あぁ?あぁ、今か。今は『犯罪心理学』の本を読んでいた所だが」


ホント、わかんねぇ奴だなぁ?

なんの為に、そんな本を読んでるんだ、コイツ?



「オイオイ、崇秀。んなもん読んで、どうする気だよ?なんの役に立つって言うんだよ?」

「うん?歌詞を作るのがメインの理由なんだがな。その他にも、カットする時に、客の心理状態を考察する為でもあるな。まぁ、この辺は常識の範疇だろ」

「はぁ?ちょっと待てよ。歌詞の話は少し考えりゃ解らなくもねぇが。なんでカットする相手に『犯罪心理学』なんだよ。そっちは全く意味わかんねぇぞ?」

「あのなぁ、倉津。一方的な見解で、あんま当たり前の事ばっか聞いてんじゃねぇぞ。そんなもんも、わかんねぇのかよ?この単細胞が」

「解るか!!」


解る?


普通、解んねぇよな?



「ボケが……あのなぁ、倉津。通常、学校で教えられてる心理学って言うのはな。基本的な部分では、マウスを使った動物実験なんかがメインで成り立ってる部分が多い学問なんだよ。故にだ、心理学ってのは、統計学に良く似た学問なんだよ。そんなもんじゃ、本当の人間の心理なんざ解り難い。だから敢えて、もう一歩踏み込んだ『犯罪心理学』に目を付けたって事だよ、ボケ」

「がっ!!……アホだ。マジモノのアホだ」

「誰がアホだ。……まぁつっても、そこは個人の捉え方の問題だから。実際は、この2つの学問に優劣は付けがたい面もある。だがな、物は知ってて損はねぇってのも事実だろ」

「アホ過ぎるぞ、オマエ。……そんなアヤフヤな自分の意見の為に、そこまでやるなんざ変人の極みじゃねぇかよ。オマエもぉホントに頼むから即座に死んでくれ」


コイツ……アメリカに留学してから、更に、頭のイカレテル度に磨きが罹ってないか?


既に病的も、末期の域を超えてるじゃねぇかよ。



「いや、だから、以前にも言ったがな。『まだ死なねぇ』って……あぁ、それはそうとよぉ。オマエ、なんの用があって、ワザワザアメリカくんだりまできたんだ?」

「旗色が悪くなったから、急に話題を変えやがったな」

「なんも旗色悪くなってねぇつぅの。……ってか、ホントに、なにしに来たんだオマエ?」

「なんて事はねぇよ。山中に頼まれて、オマエの動向を探りに来ただけだよ」

「うわっ!!マジかよ!!相当な暇人だな、オマエ!!よくもまぁ、そんな暇な事に時間が使えたもんだ。感心したぞ」

「うるさいわ!!俺も好き好んで、こんな事してる訳じゃねぇつぅの!!」

「『好き好んで来てない』……あぁ、なるほど、そう言う事か」

「オイ……また、なに悟った様な事を言ってんだよ、オマエは?」


早くも、本質がバレたか?


まぁしかし、あれだな。

『心理学』とか、なにやらヤヤコシイ本バッカリを読んでるんだから、そう言う人の思考を読むのが、更に磨きが掛かってても、おかしかないわな。


ハイハイ、読心術モンスターさんには敵いませんな。



「あぁ?どうせ、他の奴が忙しいからって、山中あたりが、オマエに押し付けてきたんだろ。この時期に、わざわざアメリカに来るなんぞ。その程度の理由としか考えられねぇからな」


ハイ!!正解で~~~しゅ!!



「序に言っちまえば、オマエは『早々に、この任務から解き放たれたい』と思ってるのも事実だろうな」

「なんでだよ?」

「アホかオマエは?彼女が居る奴が、この時期に、ワザワザ彼女と離れて過ごしたいなんて思う訳がねぇだろ。もし、そう思うなら、その時点で、そのカップルは終わってる」


ですよね~~~。


仰る通り、全く持って、その通りでゲスよ。



「じゃあ、なにか?優しいオマエは、早々に、この忌まわしい任務から、俺を解き放ってくれるって言うのか?」

「やだね。お断りだ」

「なんでぇ?」

「なぁ~に、折角来たんだ。今、俺がやってる事を100%理解するまで付き合って貰うぜ。ゆっくりしていけよ。終わったら、ディズニーランドに連れて行ってやるからよ」


嫌過ぎる……


そんな不可解なもんを理解しようと思ったら、冬休みが終わっちまう処の騒ぎじゃねぇよ。

寧ろ、アメリカの市民権を取得しても無理な気がするぞ。


だから簡潔に話せっつぅの!!



「早急に帰らせろつぅの!!オマエとディズニーなんぞ行きたくもねぇわ!!」

「じゃあ、しょうがねぇな。即刻理解するしか逃げ道はねぇな」

「無理だ」

「なら、諦めろ」

「この鬼糞野郎だきゃあ」


こんなもん、ただの嫌がらせじゃねぇかよ。


この鬼畜生め!!



「まぁまぁ、そうは言ってもだ。この押し迫った年末年始に、そんな大層な事をする訳じゃねぇから安心しろ。オマエでも、直ぐに理解出来んよ」

「じゃあ、なにすんだよ?簡潔に言ってみろよ」

「まぁそうだな。単純に言っちまえば、年始にフェスを3個ほど予定してるのと、同じく年始に全米ツアーを1本組んでるだけ。その程度の話でしかねぇよ」


ハイ?……なにを言うとんじゃね、この子は?


アホちゃうか?


この年の瀬が迫った時期だと言うのに、年始にフェスを3個も用意してるだと?

それに、全米ツアーってなんだよ?


もしこれが本当だとすれば、冗談にしても、悪い冗談が過ぎるぞ。


大体して、そんなもん、どうやってこなすつもりなんだ?



コイツは……やっぱり狂ってやがる。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


崇秀は、どこに居ても崇秀ですね♪

相も変わらず、トンデモナイ事を平然とかましてきますです。


そりゃあ、こんな話を聞かされたんじゃ、倉津君もビビっちゃいますよね(笑)


……っでまぁ、次回からは、その概要をお話していきたいと思いますので。

また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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