499 これは正当防衛です!!

 道案内をしてくれてるボブが、ニューヨークの不良であるハッシュに道端で衝突。

そんな彼から慰謝料を請求されボブが困っている様なので、助け船を出した俺は、ボブ共々、人気のない裏路地へ連れて行かれてしまった!!


でも、そんな状態にあっても、場慣れしている俺はお気楽モードなんだけどな(笑)


こんな奴等、余裕余裕( ゚Д゚)=〇シュシュ!!


***


 全く人気のない路地裏の奥に付くや否や、ハッシュとか言う蛸助は、俺の方に向き直して言葉を掛けてくる。

その際には、やや睨みを利かしてる感じではあるんだが……イカン、あまりの定番のパターンに笑ってしまいそうだ。


いや、まぁ良いや、まぁ良いや。

如何にこの蛸助の行動は笑えるとは言え、取り敢えず、此処までは、なんの狂いも無く予定通りだしな。



「オイ、チャイニーズ。此処なら、もぉ誰も人は来ねぇからサッサと言い分の金を出せよ。今更、無いとか言って泣き付いて来てもダメだからな。約束通り1万ドルだぞ1万ドル」

「はいはい、そんな怖い顔までして心配すんなって、金なら、ちゃんと有るからよ。……ほらよ」


俺は札束を、無造作に地面に放り投げた。


するとハッシュ君はだな。

慌てて、それを拾う為に、片膝を付いて座り込む。


しかしまぁ、金の受け渡しをしてる際に片膝をつくなんて、コイツ、まさにアホの極みだな。


ただ、此処で言って置くけどなぁ。

此処じゃあ、まだこの蛸助に手は出さないんだぞ。

こう言う手合いに世の中の厳しさを教えるには、もっと最高のタイミングって奴が有るからな。


それまでは、ジッと我慢だ。



「マッ……マジかよ」

「あぁ、好きにしろよ。それは『アンタの治療費』なんだからな。遠慮せずに持って行けよ」

「そっ、そうか、俺の恐ろしさが解ってんな、オマエ。こう言う素直な奴が世の中では一番だぜ」


そんな事を言うハッシュ君を尻目に、俺は、ボブと、その場を立ち去るフリをする。


するとハッシュ君は、その俺の行為を確認し。

危険が無いと判断したのか、俺から目を切って、即座に札束を拾い上げ。

その場で馬鹿面を晒しながら、嬉しそうにペラペラと金額を確認し始めた。


来た来た……これが、さっき俺が言ってた『最高のタイミング』って奴ですよ。

至福の時間から、訳も解らず一気に全身血まみれになって、不幸のどん底に落とし込める瞬間。


アホが……金を稼ぐ事の厳しさを思い知れ。



『ガコ~~~ン』



「がはぁ!!」

「一回死んでこいや……この糞カスが」


『ガスガスガスガスガスガス……』

「がっ!!がっあ!!がぁああぁぁ~~~」

『ボキボキボキ……」

「ぎゃああぁぁ~~~」


―――うん?なにをしたかって?


いや、まぁ、その、なんだな。

完全に気が抜けてる状態みたいだったから、まずは後頭部に渾身の蹴りを入れてやっただけの事だ。

んで、その序に、前のめりに地面に倒れたから、またまた後頭部を、数回、思い切り踏みつけただけだ。


勿論、死なない程度には手加減してやってるんだから、その辺は優しいだろ。


あぁ、けど、その後にモノのはずみで、顔面と顎を集中的に何発か殴った様な気もするなぁ。


この辺は良く憶えてねぇけど。


おっと、そうだそうだ。

最後にハッシュ君がフラ~~っと立ち上がったもんだから『このままじゃ何をされるか解らない!!』って恐怖感を感じて、再度、地面に転がした上で、腕と指の骨を全部折った様な気がしなくもないな。


まぁ、この辺に関しては、俺の防衛本能が勝手に反応したんだから、しょうがない、しょうがない。

喧嘩なんかでは、よくある事、よくある事。


んでまぁ、今現在のハッシュ君の状態はと言うとだな。

軽く見積もっても、全治三ヶ月って処だけは間違いないだろうな。


お可哀想に。



「テッ、テメェ!!なっ、なにしやがんだ!!」

「はぁ?いや『なに?』って、このアホが俺に治療費請求分の怪我をさせただけだが。なんか問題あるか?これって、俺との示談の話じゃないのか?」

「ふざけんなよ!!その金は、ボブの野郎が、ハッシュさんにブチ当たった請求金額だろ!!」

「はぁ?さっきから、なに言ってんのオマエ?俺とボブは、今さっき知り合ったバッカリだぞ。なんで俺が、そんな金を払う必要がある?馬鹿じゃねぇのか?」

「ふざけんなコイツ!!ぶっ殺してやらぁ!!」


雑魚っぽい男は、簡単に頭に血が登って、とうとう拳銃を抜きやがった。

こう言う恐ろしい光景を直で見るとは、流石、銃社会のアメリカと言った所だな。


けど、こう言う手合いが拳銃を抜いた所で、何も怖くは無いんだぞ。

だってよぉ、拳銃つっても、そんな小口径じゃ当たった所で致命傷にもなりゃしねぇ。

それ処か、そんな震えた手で発砲したとしても、当たる確率なんて5%未満だ。


それになにより……俺の目の前には、ハッシュ君ってデカくて立派な盾があるじゃねぇかよ。

これさえ奴等の前面に押し出しちまえば、俺に弾が当たる可能性なんて、もぉほぼ皆無に等しい。


まぁ仮にだ。

今、俺に銃を向けてる奴が、ハッシュ君って大きな盾に向って銃を撃ったとしても、この頑丈な盾は、早々に貫通なんてしねぇつぅの。


んな訳で、俺はハッシュ君を起し上げて、ソイツとの間に、デカくて頑丈な盾を構築する。



「なっ!!」

「さぁ、どうしたよ?準備が出来てるなら、さっさと撃てよ。そうやって銃を出された以上、コッチも正当防衛でオマエをぶちのめす権利があるんだからな。だから、さぁ、さっさと撃てよ。じゃねぇと今度は、テメェが死ぬ事に成るぞ。さぁどうした、どうした?ハリー!!ハリー!!ハリー!!」

「キッ、キタネェ野郎だ!!ハッシュさんを盾にしてんじゃねぇよ!!この卑怯者がぁ!!」


あらあら、銃を撃つ事にビビッちまってるのかして、急にガキの言い分だねぇ。


けど、そんなガキの理屈が、この場で通る訳ねぇだろ。



「はぁ?今更、何を生ぬるい事を、ぬかしてんだテメェは?マフィアのやり方に、綺麗も、汚いもあるかよ。勘違いしてんじゃねぇぞ」

「マッ……マフィア」

「あぁ、マフィアだ。……あぁ、それとよぉ。オマエにも、一応、忠告して置くがな。今、俺をキッチリ撃っておかねぇと、一生後悔する羽目になるぞ。両親共々、テメェのケツの毛まで毟り取ってやるからな。十分に覚悟して置けよ」

「そっ、そんなもん、家が解らなきゃ、どうしようもないじゃないかよ」

「アホかテメェは?オマエ等が逃げた後に、この動けねぇハッシュ君とやらに、ゆっくり、オマエ等の居所を聞き出しゃ良いだけじゃねぇかよ。オマエ、馬鹿じゃねぇの?」

「ハッシュさんは、口なんて割らねぇよ」

「割るさ。100%割るさ」

「なっ……」

「人間ってのは酷い尋問をされりゃあ、自己防衛本能が働いて、嫌を無しに口を割るもんだ。そんでよぉ、そん時に優しい言葉の1つも掛けりゃあ、もっとイチコロって奴だな。ましてや、学生なんぞこの尋問が堪え切れるとは思えねぇけどな」

「こっ、この汚いやり口、コッ、コイツ本物のマフィアだ……かっ、勘弁して下さい」


あぁそぅ、そんなに簡単にビビッちまうんだ。

……って事はあれだよな。

マフィアや、ギャング、それにヤクザってのは、万国どこに在っても関わりたくない厄介な存在なんだな。


ふ~~~ん、意外とチョロイなNYも。



「はぁ?なめてんのか、オマエは?そんな謝罪が、今更、通る訳ねぇだろ」

「どっ、どうすりゃ、勘弁してくれるんですか?マジで勘弁して下さいよ」

「チッ、しょうがねぇ野郎共だな。まぁつっても、ガキの喧嘩に、これ以上、首を突っ込むのも時間の無駄だな。オマエ等よぉ、今日からボブの舎弟になるつぅ事で勘弁してやるよ。異存ねぇな」

「へっ?」


ボブ……なんか奇妙な表情を浮かべてるが、此処で変にボケるんじゃねぇぞ。

オマエがボケた事を言ったら、今までの苦労が、全てが水泡に帰すんだからな。


マジでボケた事は言うなよ。



「ボッ、ボブの手下になったら、今回の事は勘弁してくれるんですか?」

「あぁ?今、オマエ、なんつったよ?」

「えっ?」

「今からボブの舎弟になるくせに、ボスに向って、その口の利き方は頂けねぇだろ。ちゃんと『ボブさん』って言えよな。口の利き方に気を付けねぇと、マジ、家族を崩壊させんぞ」

「すっ、すみません。以後気をつけます」

「おいおい、ホントにわかってんのか、オマエ等?」

「もっ、勿論です。じゅ、重々承知してます。だから勘弁して下さい」


アホが。

そんな金にもならねぇ事を、マジでやる訳ねぇだろ。


おつむが弱ぇなコイツ等。



「良し、じゃあよぉ。最後にオマエ等の手で、そのハッシュ君の両足折って、ボブに忠誠示せや」

「えっ?」

「んでよぉ。そのハッシュとか言う、俺にタテを付いた生意気なクソガキを、学校中のパシリとして一生使え。良いな?」

「いや、けど、そんな事をしたら。コイツが元に戻った時、今度は、俺等がやられちまいますよ」

「アホかテメェは?そんなもん容赦なくバラバラに折っちまえば、どうやっても元の体になんか戻りゃしねぇよ」

「うっ……」

「それによぉ、オマエ等も、嫌々コイツに付いてたんだろ?なら今こそ、復讐のチャンスなんじゃねぇのかよ?」


これはヤリスギか?


うん、ヤリスギだな。


そうッスな、反省。



「かっ、勘弁してやって下さいよ。もぉ十分じゃないですか」

「はぁ?今、オマエ、なんか言ったか?」

「いや、あの、勘弁してやって下さいよ。これ以上やったら、本当に死んじまいますよ」

「チッ……根性ねぇなぁ。まぁつぅっても、オマエ等みたいな糞ガキにゃあ度台無理な話か。しょうがねぇから勘弁してやるよ」

「マッ、マジっすか?」

「あぁ。けど、これだけは言って置くぞ。今度ボブに手ぇ出しやがったら、ただじゃ済まねぇからな。その辺はキッチリ肝に免じとけよ」

「あっ、はい。以後気をつけます」

「おっ、そっかよ。なら、問題ねぇ。……ボブ、行こうぜ」

「あっ、あぁ」


俺は、一旦、放り投げたお金をハッシュ君から奪い取り。

社会勉強の授業料として、更にハッシュ君の財布及び、雑魚共の財布も回収。


んで、ボブと立ち去る。


見事に『ニューヨーカーから土産代を稼ぐ』ってイベントをクリアした。


『コイツ鬼みたいだな』って思うかも知れないけどな。

こう言う特殊な社会勉強の授業料は、古今東西『高い』と相場が決まってるんだよな。


だから、これバッカリは仕方がないと思って欲しいものだ。

(↑ただのカツアゲ)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


これは、サブタイトルにもあった様に『正当防衛』なのです。

相手から吹っ掛けてきた喧嘩な上に、銃まで抜かれたのでは、正当防衛としか言いようがないのです。


まぁ、本人は、これを狙ってた節はあるみたいですがね(笑)


さてさて、そんな窮地を脱した倉津君とボブさん。

再び駅に向かって歩き出すのですが、もぉこれで、この手のイベントは終了なのでしょうか?


それは次回の講釈。

また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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