494 そう言う事情で俺な訳ね

 アメリカの空の下で、次々とトンデモナイ事を仕出かし続けている崇秀。


それ故に、次に崇秀が何を仕出かすか解らないので、俺に、その動向を調べる依頼する山中なんだが……


なんで俺やねん!!( ゚Д゚)


***


「いやいやいやいや、ちょっと待て!!ちょっと待て!!なんでワザワザ俺が、アイツの動向を調べる程度の事で、アメリカくんだりまでなんぞに、お使いに行かにゃならんのだ?それによぉ、冬休みに入るとは言え、今はバンドの事も放ったらかしに出来ねぇ状態なんだぞ」

「オマエに頼む理由は、それでもオマエが一番暇人やからや。それとなぁ、オマエが懸念しとるバンドの件は、俺にバッチリ任せとけ。カジグチのアホ共は、スパルタ方式再開で根性入れ直しといたるさかい」

「けどよぉ……」

「えぇから、えぇから、兎に角、俺に一任せぇ。オマエの生ぬるいやり方やったら、あのアホ共のレベルは、何年経っても上がらん。俺とステラで、シゴキ倒しといたるわ」


いやいや、どんな好条件を出されても、行きたくねぇもんは、行きたくねぇし。


それにだな。

奈緒さんとアメリカに遊びに行くならまだしも、アイツの動向を探る為だけにアメリカなんぞ行きたくねぇし。


だからこそ此処は、難癖つけて必至に言い訳しよ。



「ってもよぉ。ベース・パートは、どうするんだよ?」

「心配すな。そんなもん大丈夫や」

「オイオイ、なんの根拠が有って、そんな事を言ってんだよ?」

「なんもない。けど、リズムを正確に刻ませるだけやったら、ドラム同士の方が正確に教えたる事は出来る。そう言うのは、奈緒ちゃんが、オマエにベースを教えた時に立証済みやからな。基本の大事さは、オマエも身に沁みてわかってる筈やろ?」

「そっ……そうだけどよぉ」


煮え切らねぇ態度続行!!


俺だって、冬休みを満喫したいんだよ!!



「わかった。ほんだら、建前無しに話するわ。マコ、あのアホの動向をマジで探って来てくれ。正直言うたら、俺が気になってしょうがないんや」


あれ?そっちか?

オマエが気になってしょうがねぇ方向なんだな。



「じゃあよぉ、そこまで気になってるなら、オマエ自らが、アメリカに出向けば良いじゃねぇかよ」

「アホ……行けんねんやったら、今直ぐにでも飛んで行くわ!!」

「じゃあ、言葉通り、アメリカまでフッ飛んで行けよ」

「オマエはホンマにアホなんか?これから俺は、年末のライブや、イベント事が目白押しに成ってるから、こうやってオマエに頼んでんねやろうが!!」


あぁそうか。

そう言えば、コイツって、意外と忙しいんだったな。


忘れてた。



「けどなぁ」

「全額旅費出すから頼むわ、マコ。マジで行ってきてくれ」

「へっ?金まで出すの?それって、オマエが全額負担するって言うのか?」

「しゃあないやろ。これバッカリは、背に腹は変えられへん。金なんかよりも、アイツの行動が気になって、仕事が手に付かへん方が、よっぽど問題やからな」


なんか、凄い意気込みなんだな。


・・・・・・


あぁもぉ、しゃあねぇなぁ。

もぉそこまで覚悟が有って頼まれたんなら、断りきれねぇよ。


それに去年、ウチの組(ヤクザ)の幹部連中で、東南アジア旅行に行った時のパスポートが、まだ期限が切れずにあるから申請に行かなくても良いしな。


不本意では有るが、冬休みに入ったら、ひとっ飛びアメリカにでも行って来てやるよ。


但しだ!!旅行の手続きから、チケット、及びホテルの手配まで全部しろよ。

この年末になって、自らでチケットの手配をするのは面倒だからな。



「わぁったよ。その代わり、旅行の手続きは、オマエが全部しろよ」

「マジか?マジでか?マジで行ってくれるんか?」

「まぁよぉ。芸能人じゃなくて暇なのは俺ぐらいなもんだしな。これバッカリはしゃあねぇだろ」

「よっしゃ、よっしゃ。ほんだら、膳は急げや。早速、手続きに行って来るわ」


言うや否や、飛び出して行きそうな勢いの山中を、慌てて引き止める。


俺は、この局面に置いて『一番重要』な事を言い忘れてた。


此処を忘れちゃイケネェ処だった。



「いや、ちょっと待て!!」

「なんや?なんぞまだ用か?」

「いや、あのよぉ。序と言っちゃあなんだが、バンドの件……本気で頼んで良いのか?」


うむ、これだよこれ。

俺がアメリカに行ってる間に、バンドの事が上手くいってりゃ儲けもの。


此処だけは、絶対に忘れちゃイケネェよな。



「おぉ、なにかと思えば、そんな事か。そんな事やったら全然任せとけ。オマエが帰ってきた時には、キッチリ新生カジ&グチにしといたるわ」

「おぉ、マジかよ」

「マジもマジ、大マジや。オマエの抱えとる問題なんぞ、全部解消しといたるわ」

「そっか、そっか。んじゃま俺も、心置きなくアメリカに旅立てるってもんだよ」

「さよか。ほな、シッカリ頼んだで。007張りの情報を期待してんで」

「おぉ、和製ジェームス・ボンドと言われた俺に全て任せとけ」

「なんとも頼もしい言葉やな。まぁ『ボンド・ガール』が付けたられへんのが、偶に瑕やけど、取り敢えず、そこだけは我慢してくれ」


あぁそうか。

山中同様、奈緒さんも、年末にライブやイベントで引っ張りダコになってるから、一緒にアメリカには行けないよな。


初の2人きりの旅行になると思っただけに、ちょっと残念だな。


けど、これバッカリは仕方が無いよな。

芸能人の忙しい彼女を持った者の運命だからな。



「気にすんなよ。どうせ奈緒さんは、元々忙しいから一緒に来れねぇのは百も承知の上なんだからよ」

「さよか。その懸念が無いんやったら、ほな、マジで旅行の手続きして来るで。冬休みに入ったら、いつでもえぇねんな」

「おぉ、構わねぇよ。その辺は全部任せる」

「OKや、ほなな」


……ってな訳でだ。

本当は、そんなスパイみたいな真似なんぞした事もないくせに、大見得を切った以上、後にも引けなくなってしまい。

冬休みに入り次第、何故か、俺はアメリカ行きが決定してしまった。


けどなぁ、この話って、それとは別の所で、なんか引っ掛るんだよな。

なんか違う意味で『ボンド・ガール』って言葉だけが、俺の心の中でやけに引っ掛るんだよな。


なんつぅかな。

この場合『ボンド・ガール=奈緒さん』って意味なんだけどよぉ。

これについて、なんか重要な事を忘れている様な気がしてならないんだが、何故か、なにも思い付かない。


そして、妙な違和感だけが残る。


本当に、なんだっけかな?



まぁ良いか……どうせ考えた所で、なんも出て来ねぇし。


そんな能天気な脳内会議をしながら、第二音楽室に向うのだった。

(↑一応、練習はする俺)


***


 ……そして次回。

こんなお気楽な気持ちで山中の依頼を引き受けた俺に、冬休みが始まると同時に良くない事が起こる。


それは当然、良く考えなくても『オマエはアホか?』って話なんだが。


それは次回の講釈。


サラバだ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>

これにて第一章・第十八話『際限なく悪夢を魅せる者』はお終いなのですが……如何でしたでしょうか?


一応、序章を含めて、崇秀の動きにも違和感を感じない様に細心の注意を払ったつもりでしたが、上手く納得して頂けたでしょうか?(笑)


まぁまぁ、その辺については、此処で1人で悩んでても仕方がないので、次話に目を向けて行きたいと思います。

だって、一度書いて発表したものって、人生と同じでやり直しがききませんからね(笑)


ってな訳で、次回から『アメリカ上陸な俺』をお送りしたいと思いますので。

また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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