493 求められし者

 アメリカに行った例の奴は、俺達が文化祭で四苦八苦している間に、向こうで大きなフェスを開催していた。

そして更に、美容関係でも世界大会で優勝を果たした上に、MITで『音の講義』なるものまでやってしまう始末。


だが、それでもまだ奴の狂気は終わらない。


もぉ、なんなんアイツは??( ˘•ω•˘ )


***


「ほな、次の話な」

「あぁ、そうだな。但し、さっきみたいに解り難いのだったら、俺が聞く価値はねぇぞ」

「いや、心配せんでも、コッチの話は、滅茶苦茶露骨な話やから、マコでも十二分に理解出来る筈や」

「ふ~~~ん。そんなに露骨な話なのか?」

「まぁ、そう言うこっちゃな。なんせ、MITフェスが終わった後の、アイツに対するオファーの話やからな」

「オファーなぁ。まぁ、あれだけの大それた事をしたんだから、そりゃあ、オファーの1つや2つは掛かるだろうな。その辺は当然だろ」

「そやな。そやけど問題は、その掛かったオファーの数や。……因みにやけど、今現在までに、何個ぐらいオファーがあったと思う?」

「そうだなぁ。多くて10って処か……いや、待て、アイツの事だから、常識外れになるのは必至だな。だったら倍の20って事にして置こうか」


うむ。

いつも通り、俺の解答は完璧だ。


まさにパーフェクトだぞ俺!!


あの変人のスペックを考えたら、多少は多く見積もるのが常識。

だから本来なら10って言いたい所なんだが、それすらも、なんか危うい様な気がしたから、倍の20。


勿論、それ以下のオファー数だったら『なぁんだ』って言えるしな。


ゲ~~スゲスゲスゲス……


惚れ惚れするぐらい、俺は、完璧だな……オイ。



「おぉ、中々えぇ読み筋やな」

「だろ。……っで、結局、幾つなんだよ?」

「208件や。いや~~~、実に惜しかったなぁ。一桁ちゃうけど」

「はい?……ハ~~~~~~~イ!!なっ、なんじゃそりゃあ?」

「そら、そうなるわな。至って、普通過ぎる反応や」


???



「いやいやいやいや、なに言ってんだオマエ?おかしい。オカシイって!!」

「なにがおかしいねん?そんなもん、なんもおかしないわ」

「なっ、なんでだよ?たかが中坊のガキに、そんなに多くのオファーが殺到する訳ねぇだろ」

「アホかオマエは?それが殺到してるからこそ、アイツなんちゃうんか?」

「いや、それにしたってよぉ。ちょっと数が尋常じゃないだろ」

「まぁ、言わんとする処は解らんでもないけどやな。そやけどなぁマコ、これは公表されとる数値に過ぎんのや。水面下では、どれだけの数が動いとるか、解ったもんやないで」

「なんで、そこまで……」


いやな。

そう成っている理由が、全くわかんねぇ訳じゃねぇんだぞ。

あの年で、あれだけの才能を開花させた人間なんざ、早々に存在しない。

いや……寧ろ、世界中を探しても、そんなには居ないだろう。

だから世界中が、アイツにそう言う価値が有ると判断するのは、なにも間違っては居ない。


けどだな……



「まぁまぁ、ちょっとは考えてもみぃや。誰がどう見たかて、あのアホの性能は人知を越えとる。そないな人間を欲しがらへんのは変やろ。これ自体は、そんなに驚く様な事やあらへんで」

「に、したってよぉ。大の大人が、この有様ってのは、些かおかしいんじゃねぇか?」

「そんな事あらへんで。これはアイツが、世の中に発した警告でもあるんやからな」

「なんの話だよ?イキナリ仰々しい話になったな」

「わからんか?」

「あぁ、まぁ、なぁ~~んとなくは、わかんだけどよ。明確な解答を求められると、答え切れねぇな」

「アホや。頭の回転数悪過ぎんぞオマエ。オートバックスに行って、一回、修理してもうて来い」


おぉ、それは名案だな。


けどよぉ山中、俺の脳味噌って、車の修理と同じで大丈夫なんだな。

それで、この悪い頭が治るんなら、一ヶ月点検をしに毎月通うとするわ。


いやいや、本当に名案だ。


……って、ドツイたろかオマエ!!



「オマエねぇ」

「なにが『オマエねぇ』じゃ。マコなんぞが病院に通っても、その頭の悪さは簡単には治れへんやろ。そやから荒療治で『サイボーグにでもなれ』って言うとんねん。そんな事も解らんのか?」

「日本の技術は、そこまで進んでませ~~ん。まだサイボーグなんて出来ませ~~~ん。そんなの夢物語ですぅ~~~」

「子供か!!オマエは一回、公安9課の素子に脳髄焼き切られて死ね」


うん?『功殻機動隊』?



「おぉ、それは本望だな」

「アホやコイツ……」


その代わりオマエは、バトーに撲殺されるか、タチコマにミサイル打ち込まれて死ね。


それが交換条件だ。



「……んな事より、っで、結局なんなんだよ?」

「えぇか、マコ?あのアホはな。『自分の価値は自分で上げるものや』って、世界中の人間に見せ付けた。これによってやな。世の中の活性化を計っとるねん」

「いやいや、そこまで大それた話にゃあなってねぇだろ」

「そうかぁ?ほんだら聞くけどなぁ。こう言う系統の雑誌を、世の中の人間が、どれだけ読んでると思ってるねんな?それに、あのアホが乗っとる雑誌は、この2冊だけやないぞ」

「まぁ、そりゃあ、そうだろうけどよぉ。音楽とカットの雑誌じゃあ、読む人間は限定されてるんだろ。だったら、そこまでの世間への浸透率は無いと思うぞ」

「末期症状のアホか、オマエは?音楽関係の雑誌に載るって事わや=芸能界への大きなアプローチになるから、音楽関係者も、既に、アイツが無視出来ひん存在になってるって言う事や。それにカット関係の雑誌=女子に多大な影響を与えとる。この全く異なる2つの事を同時に動かす事によって、アイツは、世界に多大な影響を及ぼしとるんとちゃうか?」


これは、考え方の違いなのか?

それとも俺にとって、アイツは、ただの悪友だから、そんなに大きく考えないだけなのかは疑問な所だが、今回あの馬鹿が起こした事態と言うのは、そこまで、そんなに大きな影響を世界に与えるとはどうにも思えないんだがな。


それによぉ、こう言う話って、意外と直ぐに忘れ去られるのが現実じゃね?



「まぁなぁ。言いたい事はわかんだけどよぉ。こう言う一過性の話って、今までの傾向からして、直ぐに消えていかねぇか?」

「普通やったら、間違いなく、旬が過ぎたら消えるやろうな」

「じゃあ、問題なくね?」

「なんでやねんな?あのアホが、この程度の事で終わると思うか?きっと水面下では、もっと大きなプロジェクトを用意してるとは考えへんのか?」

「ぐっ!!……確かに」


まだなんかすんのかアイツ……



「まぁ、因みにやけど。次に、アイツがなにを仕出かすかまでは、俺にはわからへんで」

「って事は、対処法も、対抗手段無しかよ?」

「今の所はな。俺も、この衝撃で、完全に思考が停止しとる状態やからな」

「オマエ程の男がか?救いがねぇな。アイツは……」

「救いがないのは、アイツが日本に居る時からそうや。……あぁそやそや、そう言やぁオマエ、もう直ぐ冬休みやったなぁ。マコ。オマエ、どうせ暇しとんねんやったら、一回アイツの動向探りにアメリカまで行って来いや」


はい?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


一切の容赦がないまま、己が信じる道を真っすぐに突き進んでいく崇秀。

そんな彼の今現在の動向が気に成るのか。

山中君が、倉津君に「アメリカ行きの依頼』をしてきましたね。


まぁそんな風に『倉津君が暇だ』と山中君に勝手に決めつけられてますが、実際、冬休みなだけに、倉津君もしなきゃいけない事が満載あるんですけどね(笑)


さてさて、そんな状況の中、倉津君はこの依頼を受けるのか?それとも断るのか?

……は、次回の講釈でございます。

なので良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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