第25錠 ウィン・ウィンの関係
「光さん……貴女、
口をポカンと開けたまま固まってしまった私を見て、再度同じセリフを口にした佐鳥さん。
……どうやら私の聞き間違いでは無かったらしい。
だからこそ、
正直、これだけ世間に騒がれている今『配信者になるのは逆効果なのでは?』と思ったからだ。
それに──いや、それよりも。
〖夏さんが差し出した対価って、なんですか?私のせいでこれ以上夏さんに迷惑を掛けたくないです。すぐには無理かもしれないですけど、その対価は私が絶対払いますので、教えて下さい〗
そう文字を書きなぐって、佐鳥さんに見せる。
──今回の件は、元々私の失態なのだ。
配信中だと気づかず
「そんなに思い詰めなくても
優しげな声色で、そう明言した佐鳥さん。
ただ、質問に対する明確な回答ではなかった為、不満気な顔でジト目を向ける。
「うふふっ、ずいぶんと夏に
……白雪コーポレーションの信用問題に関わるのなら、これ以上佐鳥さんから聞き出す事は出来ないだろう。
『うふふっ』と意味深に微笑む佐鳥さんに若干
「さて、話を戻しますけれど……光さん、貴女『配信者になるのは逆効果なのでは?』と思ったでしょう?」
(!?)
まるでこっちの考えを見透かしたかのような佐鳥さんの言動に、目を見開く。
「そう思うのも無理かなる事ですわね。
佐鳥さんは私の目を真っ直ぐ見つめながら、矢継ぎ早に言葉を続けた。
「
そこでニヤリと不敵な笑みを浮かべると、テーブルの上に置いていた私の手にソッと手を
「光さんは
佐鳥さんはそこで
「
〖私……〗
メモ帳にそこまで書いて、うつむく。
本当は、佐鳥さんの提案に従ってさっさと契約してしまったほうが良いって、わかってる。
──でも、怖いのだ。
人と関わるのが、期待に応えられず失望されるのが、また私を否定されるのが……死にたくなるほど、怖い。
「光さん、貴女がダンジョンに潜る理由は何かしら?」
(ふぇ?)
そんな事を聞いてどうするのかと
〖人生を、変えたかったからです。自立して、お金を稼いで、おじいちゃんとおばあちゃんに少しでも恩返しがしたかったから──〗
「
(!?)
私の書く手を
「光さん、貴女欲望の解放のさせ方が下手っぴですわ。そうですわね……
(じゅっ……!?ひぇぇ……)
目をこれでもかと見開く私に、佐鳥さんは事も無げに告げる。
「あれは
佐鳥さんのその言葉に、ゴクリと
確かに、10兆円もあればおじいちゃんとおばあちゃんに恩返し出来るだろうし、私を受け入れてくれたこの町にも少なからず還元出来るはず。
探索者を続ける理由だって無くなるのだからウジウジ思い悩む必要も無いし、配信者にならなくても全てまるっと万事解決だ。
──なのに、どうしてだろう。
どうしてこんなに胸がモヤモヤするのだろう?
「うふふ、悩むという事は前に進もうとする現れですわ」
そう言って、どこからか取り出したタブレットをテーブルの上に置く佐鳥さん。
液晶画面にはたくさんの文字が規則的に並んでいるのが見てとれた。
〖これは……?〗
「それは昨夜の動画に対するSNSの反応を軽く
佐鳥さんに
:乙姫様の配信見たけどやべぇ、あの子絶対バズる
:ヒカリちゃん可愛ええのに強いとか最&強では?
:世間に食い物にされる前に私が守護らねば……
:ヒカリだっけ?配信者になってくんねぇかなぁ
:日本はあの子に何かしらの勲章を授与するべき
そこに並んていたのは、私に対する賞賛の言葉。
それが数ページにも渡って書き連ねられていた。
「いかがかしら?世界は神楽光を認識し、こんなにも求めている。大丈夫ですわ、世界は思っているよりも怖くなくってよ」
──世界が私を認識し、求めてる。
胸のずっと奥のほうに眠っていた感情が、
「その
……佐鳥さんは
そんな風に優しくされたら、誰だって頼りたくなってしまうに決まってる。
だから、私は──。
〖サトリさん。私を、配信者にして下さい〗
ネグレクトされた地雷系少女は今日もオーバードーズをキメて無双する めんへらうさぎ @menherausagi
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