第2錠 御社ダンジョン
『無人の神社には近づくな』と言って近所の人は誰も近づこうとしないけど、
だからこそ気づけた、異変。
「……え?」
いつものボロっちい御社は、黒い
「これって……」
ダンジョンだよね。
その言葉を飲み込む。
ダンジョンについて、そこまで詳しくは知らないけど、世の
お宝を守るのは、
そして、そこに巣食うモンスター達だ。
だいぶ前の話だけど、テレビの
『ダンジョンの中でモンスターを倒した人は、神の
ギフトとは、
その種類は千差万別で、魔法使いのように火を操る、目からビームを出せるようになる、動物と会話が出来るようになるなど、様々。
……若干アタリ・ハズレはあるみたいだけど、そもそもの話ギフトというのは誰も彼もとホイホイ賜れるモノでは無いらしい。
ギフトを賜れる唯一のチャンスははじめてモンスターを倒したときだけで、あとはどれだけモンスターを倒したとしても
そういったギフトのチカラを
70年前、ダンジョンが誕生してすぐのときは、まるでゲームのようなその事象の数々に、人類一同
ただ、歓喜は束の間だった。
法の制定や利権争いによってゴタゴタしている間に、ダンジョンが人類に牙を剥いたからだ。
世に聞く【
ダンジョンは休まずモンスターを生み出し続ける。
その為、モンスターを討伐しないで放置していると、モンスターの数はダンジョンの許容量を超えて、溢れ出てしまう。
その溢れ出たモンスター達は狂ったように暴れ回るので、海外では小国がまるまる一つ飲み込まれてしまった、なんて事もあったみたい。
【群獣大暴走】は今も人類史に残る
(昨日までは無かった、よね?)
あらためて、目の前にある御社っぽい小さなダンジョンを注視する。
もっとも、小さくてもダンジョンはダンジョンだ。
嫌な想像をして、身震い。
「おじいちゃんに知らせないと……っ」
そう呟いて
『人生を変える、チャンスでは?』
そんな言葉が、頭を
途端、体が石のように固くなって、足が止まる。
今の日本の法律では、16歳未満の者はダンジョンに入れない。
それは名目上、未成年者を守るために制定された法律だと言われている。
ダンジョンの中に
だからこそ、16歳以上であってもダンジョンに入る為には探索者である事を
もっとも、試験自体は原付バイクの免許証を取得するくらい手軽なモノらしく、適性検査などの決定講習をササッと受けた後、筆記テストに合格したら1日で取得出来るって、テレビでは言っていた。
とはいえ、今の私は満15歳。
誕生日まで、あと3週間近くある。
もちろん、ダンジョンに入る資格なんて無いのだから、早くお家に帰っておじいちゃんに知らせたほうが良いってわかってる。
だからこそ今、このダンジョンに入るべきなのだと、気づいてしまった。
まず、
私は
そのせいでまともなコミュニケーションもとれない私に、普通の社会生活を営むなんて正直言って無理かなる事だ。
小学校すらまともに通えなかった私の人生なんて、すでに詰んでいると言っても良い。
そこで【ギフト】だ。
私のようなチビで痩せっぽちの女には探索者なんて不向きな職業かもしれないけど、ギフトさえあればなんとでもなる。
だって、ギフトを賜れた人達はもれなく『人生において成功したも同然』なんて言われているのだから。
自販機のルーレットにすら当たった試しの無い私だけど、もしも便利なギフトを賜って探索者として
もしギフトを賜れなくても、おじいちゃんにダンジョンを見つけた事を伝えて、国に連絡してもらえば良い。
未登録のダンジョンを発見した場合『発見しましたー』と国に連絡したら【
……とはいえ、それらは私らしくない【前向きなメリット】を並べただけ。
確かに人生を変えるきっかけにはなるかもしれないけど、今このダンジョンに入るべき理由にはならない。
私が今、このダンジョンに入るべきだと思った最大の理由は……【
本来、ダンジョンでの生死は自己責任だ。
ただ、ダンジョンというのは時も場所も選ばず、至るところに出現する災害のようなもの。
だからこそ、未登録のダンジョンで亡くなった場合の責任の所在は
弔慰金をおじいちゃんとおばあちゃんに
私の命に価値を
──パサリと、御社の近くにがま口財布を落とす。
私がダンジョンに入るような性格じゃないのは近所のみんなも知っているので、これなら調査の末ダンジョンの出現時に巻き込まれた不慮の事故として扱われる、はず。
……本当は、おじいちゃんとおばあちゃんを悲しませたく無いけど……。
でも、いつかきっと、遠くない未来。
私は私の命を、簡単に捨てていると思う。
なら、
「ふぅ……」
アルミ缶のプルタブを起こして、だいぶ
甘ったるい、幸せだったころの味に、ちょっとだけ笑顔になれた気がした。
「よし、行こう」
死にたい。
死ぬのは怖い。
でも、生きているのはもっと怖くて、苦しい。
『人生を変える、チャンスでは?』
だから私は、私の
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