第2話

 ──どうも皆さんこんにちは。先日、自分で自分をツッコんで腕を折ったシクルです。しばらくギプス生活を強いられることとなりました。

 そんなことはさて置いて。今この瞬間にも、魔王の手先である上級悪魔の侵攻は止まらない。僕は信頼できる友人とパーティを組み、旅に出て魔王を討伐することを神に誓った。

 僕が最初にパーティに誘ったのは勿論、我が親友にして脳筋こと、ツァーリ・ヴェルマである。身体どころか、かなり脳味噌もムキムキしてやがるが、戦力としては非常に優秀だ。

「──おーい、ツァーリ。いるか? 僕だ。勇者になったシクルだ」

 我が家のすぐ近くにあるツァーリの家の扉を叩いて呼べば、ツァーリはすぐに現れた。

「なんだシクル? ……ああ、もしかしてあれか」

「お、察しがいいな、珍しく。そうだ、お前を魔王討伐の旅のパーティに──」

「ダンゴムシ探しだな」

「全然違うわ! 何なんだそのジメジメした発想! 一緒にダンゴムシ探しなんてしたことないだろ!」

 ベシュラリッとツァーリにツッコむ。

「痛ってぇ……じゃあなんだ? お泊まり会でもすんのか」

「尚更違うわ!」

 見当外れなことばかり言うツァーリをツッコミで一度黙らせ、僕の用件を告げた。

「ほら、僕は勇者になっただろ? それでお前に、魔王討伐のためのパーティに入って欲しいんだよ」

「お、そうなのか。それならいいぜ! じゃあその時は、相棒のハンマーも持っていくな」

「おう、頼んだ」

 ツァーリはハンマーを好んで武器とする戦士だ。

 ただし、僕はコイツがまともにハンマーを使って戦うところを見たことがないが。


テッテレーテッテーテッテー

シクルは戦士ツァーリを仲間にした


「よし、次は僧侶でも仲間に入れるか……」

 ツァーリと別れて、道を歩きながらポツリと独り言を呟くと、後ろの方から足音が聞こえてきた。振り返る前に、ガッと肩を組まれる。

「よぉ〜シクルゥ〜。俺も仲間に入れやがれぇ〜」

「……よう、ゼリオ。今ちょうど、お前に会いに行こうとしていたところだ」

 コイツの名前はゼリオ・ルード。一応、と言っては何だが、コイツも僕の友人である。

 神職者なのに口は悪いし歯はギザ歯で、性格なんかも非常に凶暴なのである。僧侶という職業柄か、十字架をあしらった銀のネックレスを掛けているので、服装も何だかチャラチャラしている。

 しかし、戦闘能力だけを見れば、ツァーリと同等かそれ以上なのは間違いなく、魔王を討伐するパーティに入れない選択肢なんてない。

「勿論パーティにお前を入れるよ。だけどゼリオ、僕の言うことはちゃんと聞けよ? 一応勇者だし、パーティのリーダーでもあるし」

「はいはい、分かってますよっと。魔王討伐は任せておけ。俺がお前の剣になってやるぜぇ〜」

 ゼリオはポンポンと僕の肩を叩き、またフラフラと道を歩いていった。


テッテレーテッテーテッテー

シクルは僧侶ゼリオを仲間にした


 あとは勇者パーティで定番なのは魔法使いだが、こんな小さな村にはいなかった。

 まぁいいか、戦力は十分過ぎるほど集まったし。

 それから僕らは村を出る支度を済ませ、旅の前に心身を休ませるべく深い眠りについた。

 翌朝、出立の前に村長に呼び出された。何を言われるかと少しそわそわしたが、死ぬかもしれないけど頑張っての一言で済まされた。他人事とは言え、適当な村長だ、全く。勇者ってもんは大変だ。

 そんなわけで。僕とツァーリとゼリオの3人組のパーティは、魔王討伐のための旅に出た。10日分の食料と、1つの剣、1つのハンマー、1つの十字架のネックレスと──3つの勇気を抱いて。


 ──この時はまだ、10日分の食料がたった1食で消えてしまうことを、僕達は知らなかった。

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