会話劇 1.ステージ
「好きなんですよね」
「…俺のことが?」
「何それ違うって。…いや違くないけど」
「違くないんだ?」
「……話戻していいですか」
「んふ、どーぞ?」
「何その顔やめて! はぁ…。ステージ、好きなんですよ。体育館のちっちゃいのでも、ライブ会場のでっかいのでも何でも」
「どうして?」
「『用意された歌う場所』って感じで。ああ、ステージの用途は歌唱だけじゃないけどそういうんじゃなくて」
「うんうん、何となくわかるよ」
「路上ライブとかも好きだけど…なんていうか」
「『みんな自分の歌を聞きに来てくれてるって安心感』。どう、当たり?」
「そうそれ。求められてるってことだし、拒絶されたりしないから。…まあ無理やり聞かせるのも嫌いじゃないけど」
「うわぁ、それは…まあ何? 人魚のヤバい歌的な意味で?」
「……さあ?」
「えこっわ。そういうのは分かんないけど、自分のことを知らない誰かに歌を聞かせて引きずりおろせた時は快感だよね! ファンってそうやって増えてくし」
「そっか、職業だとそういう視点にもなるのか」
「そうそう! だってしかも、俺の歌聞いたらみんな幸せになれるじゃん?」
「あぶないお薬みたいな言い方しないでくれますか」
「いやどっちもどっちでしょ」
「確かに…?」
「まあつまりあれでしょ、むうにゃの曲が楽しみってこと?」
「惜しい、ちょっと足りないです。むうにゃちゃんの曲を、この体育館のステージで歌えるのが楽しみ」
「うん、俺も楽しみ」
「頑張って作曲してくれたんだから、それを最大限活かせるよう歌わないと」
「意気込んでるとこ悪いんだけどさ、ダンス壊滅的なの分かってる?」
「ゔっ……だって仕方ないじゃん、ヒレが二本に裂けてるのって未だに気持ち悪いんだもん…。ま、まあきっと間に合うでしょう。…たぶん」
「えー、ほんとかなぁ」
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