第7話 罠カード発動!……え?そんなのない?①
翌日。
どうやら今日もまた少し早く目が覚めたらしい。
メスガキはまだ来ていなかった。
だが、今の俺にはそれを喜ぶだけの気力はなかった。
「…………」
ツゥーと涙が頬を伝う。
「飛ぶなよ……人間が。そう簡単に……」
ブツブツと虚空に向かって呟く。ショックがまだ抜けきらない。
ハッキリ言おう。昨日は完敗だった。
しかもあんな醜態……思い出しただけで全身をねじ切ってしまいたくなる。
あれほどの恥は職場でうっかり深夜アニメのオープニングを爆音で流してしまったとき以来だ。
あのときはかろうじて「え? 誰のスマホっすか?」みたいな顔して誤魔化せたが……。
しかし、いつまでもこうしてはいられない。
無様な敗戦の記憶は、それを上回る勝利でしか塗り替えられないのだ。
気を取り直した起き上がった俺は、新たな策を練ることにした。
だが。
「ダメだ……浮かばねぇ」
完全に昨日の件がトラウマになってしまっている。いい案どころかなにも案が浮かんでこない。
正直もう何をしても無駄なんじゃないかとさえ思えてくる。重症だ。
どうしよう。こうしている間にもあのメスガキはここへ向かってきているというのに。
というかまたもう空にいるとかないよな……。
と、地面に後ろ手を着いて見上げようとしたときだった。
「痛っ」
指先に走るチクッとした痛み。
「これは……」
何事かと思って地面を見ると、そこには昨日森で拾ってきた木の枝が転がっていた。
どうやら死んだ拍子にちょうど俺の出現位置に落ちたのだろう。そのせいで、身体の再生とともに下敷きになってしまったようだ。
しかし、こんな尖ったものの上で寝てたと思うとちょっとゾッとする。寝返り打った拍子とかに刺さらなくてよかったぁ……。
にしても、拾ってきたものはそのまんまなのか。これは新たな発見だ。
この復活現象、なんとなく俺の中では勝手に時間が巻き戻るイメージだったがそうではないらしい。
起きたら毎回服の血が消えてるものだから勘違いしていた。
血はあくまで肉体の一部だから再生に使われただけ。死ぬ前の行動はちゃんと事実として残るようだ。
まあだからといってその情報がなにか役立つわけではないんだが……。
「……待てよ?」
ふいに、なにか閃きそうな予感がした。
てことは例えばの話、木の枝を集めて地道に家を建てるようなことも可能ってことだよな?
つまり、作戦を練るにあたってメスガキが来るまでのこのわずかな時間に縛られることなく、もう少し広い視野で計画を立てることが可能ということだ。
なるほど。だとすれば……。
「そうだ、罠を作ろう」
次の作戦が決まった。
短時間ならともかく、時間を掛けられるなら話は別だ。
しっかりと手の込んだ罠を、数日かけてじっくり作りこむ。
無論、その間何度か殺されるのは覚悟の上だ。
止むを得まい。勝利を得るためには必要な犠牲だ。
だが、これもすべては勝利のため。
すまんな、今日から数日間の俺よ。仇は取る。
必ずやあのメスガキを罠に嵌め、「え~? こんなのに引っかかるとかだっさ~w 超ウケるんですけどw プークスクスw」と煽り散らかしてやる。
フフ。ヤバい、今から楽しみで笑いが止まらないぜ。
そうと決まれば早速……。
「なにニヤニヤしてんの? 気持ちワル」
「え?」
ザシュ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます