第23話 白

 真っ白な洗濯物が翻る。入ってきたのとは反対側の裏口から出てしまったようだ。マルメイソンは、ゆらゆら飛びながら辺りを見回した。

 人々は忙しく働いている。生首になった魔女や騎士達のことは、全然知らないみたいだった。

 街角のパン屋さんの噂や、季節の果物を売りに来る店の話をしているが、それは酵母を操る魔女ミセルや、果樹園の魔女パカシエルのことだろう。みんな狩られてしまったのではないか。

 止めなくては、とマルメイソンは決意を新たにして、聞き耳を立てる。噂話によると、もう少し北側の塔に、親戚の魔女を従えた、出世したばかりの若者騎士がいて、最近態度が乱暴らしい。

 最初はいい子だったのにねえ、上司に詰められておかしくなっちまったんだよ、優しい子なのになかなか剣の腕もあがらなくて、相談役の魔女にからかわれてカッとなって首を切ったそうじゃない? 頭を冷やせって上司に怒られたけど、混乱した若い魔女が幻惑魔法だか何だかを使って保身に走って、今大変らしいよ。

 みんながたくさん噂話をしてくれるので、事情が分かってきた。マルメイソンはお礼に、洗濯物がキラキラする魔法を振りかけてあげた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る