第22話 呪文
「ないって言ったって、なんにもない訳じゃないよ。呪文を一つ覚えるみたいに、簡単だけど面倒くさい手順だけがある。あたしの胴体を説得するか、胴体を操ってる奴を説得するか、だ」
「説得って、殴り倒して縛りつけたらいいの?」
マルメイソンに、名付け親はため息をついた。
「生首だけで、そんなことできないだろう。うっかり屋の騎士に頭突きして、隣の魔女にも一撃くれておやり。それからあたしの胴体を取り戻してくれたら、後はこっちで何とかするよ」
あんなものは大した魔法じゃないのにね、胴体も何で言うこと聞いてるんだか、と名付け親はぶつぶつ言ったが、胴体の方はそういうところが嫌だったのかもしれないと、マルメイソンは考えた。近くの森でマルメイソンを拾って育て、独り立ちの頃には城で雇われ魔女をしていた名付け親は、魔女らしく傲岸不遜なところがあった。
「ところで、先生はどうしてこんなところに隠れているの? 何でもできるんでしょ?」
「できるけどね、この間首を痛めて、飛んだり跳ねたりが難しいのさ。あんたみたいに若いと簡単かもしれないがね」
そんなものだろうか。お守りにと、移動が便利になる呪文と、頭突きの威力が増す呪文を教えてもらった。
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