第21話 飾り

 マルメイソンは燭台の炎や通りすがりの人の寝癖などの中から、あらゆる目印を見つけ出した。

 やがてたどり着いた、入り組んだ城の一部屋。

「やっと来たかい、待ちくたびれたよ」

「先生!」

 名付け親の老いた顔が、口ほどでもなく楽しそうに笑っていた。

「お元気そうで何よりです、その、胴体はどこかへ行っちゃってるけど」

「お互い様さ」

 首だけの名付け親は、火のない暖炉の上で、最初からそういう飾りだったみたいにくつろいでいた。

「一体、何がどうしてこうなったんですか?」

 問いかけたマルメイソンに、名付け親は答えた。

「あたしは確かに、功績をはやる連中に言ったもんだよ。なまじか頭がついてるせいで、魔女は人の言うことなんか聞きやしない、だからときどき手を借りるだけにしな、人間のことは人間でやるべきなんだよ、って。それをどう聞き違えたものだか、頭をズバンと取り始めたってわけ」

「先生のせいなんですか、これ」

 マルメイソンが呆れると、こんなことになるなんて思わなかったんだよ、と誰でも言いそうなことを名付け親は言った。

「とにかく、大した連中じゃない。ただちょっと、意味も分からないで能力を発揮する胴体が味方についてるくらいで──」

「もしかして先生、最初に、そのうっかりした騎士に首をはねられて、胴体を使われてるから、他の魔女達もどんどん簡単に狩られてるってことですか? みんな、先生と戦ってるってこと?」

「戦ってなんかいないよ、みんな気づかないうちにやられてるんだろうから」

 無責任な名付け親に、そういえばこういう魔女だったと思い返しつつ、マルメイソンは聞いてみた。

「それで、事態の解決方法の案はあるんですか?」

「ないね」

 あまりの即答ぶりに、マルメイソンは名付け親に頭突きをした。

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