第17話 額縁
きらびやかなロビーには、大きな額縁がいくつも並んでいる。描かれているのは風景や仰々しい貴婦人、紳士の絵。たまに生首。
ホテル首塚のみなさんは、いつも通りだ。みんな首はついていて、誰もが見慣れない形の影を持つ。
客である狼男の後ろを通り抜け、魔女少年のハシバさんは、キャリーバッグをカウンターの前に運んだ。慎重に扱ってと頼むと、中でマルメイソンがそうよそうよと返事をした。おや、とホテルの従業員が一瞬目を見開いて、そういえば何でもありだった、と思い出して、宿帳にサインを求めた。お連れ様のお名前もと言われたハシバさんは、荷物、と書いた。
「勝手に喋らないでって、言ったよね?」
あてがわれた部屋に着くと、ハシバさんは荷物に文句を言った。マルメイソンは親切にされて当たり前のように、だって優しくしてほしかったんだもの、と応える。そうよ、こんなことになって、私、ずいぶんと怖かったし、疲れていたんだ。
ハシバさんは口籠もってから、「まぁ、いろいろあるよね。一休みして、明日は騎士のたくさんいる、城の前の広場を通ってあげる。騒がないで、こっそり見るんだよ。うまくすれば、裏口に放り込んであげるから」
自分では何かを打開する予定もないらしい。それでもマルメイソンはお礼を言って、優しく、布団に寝かせてもらった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます