第7話 金槌坊 緊急会議①

 ミコト生徒会長は、少年の姿をじっと見つめていた。

 彼女の顔は真剣な表情をしていた。



「やっと君に会えたわ。君のことをもっと知りたいの…。 ねえ、教えてくれる?」


 生徒会長の声がした。

 それを聞いて、少年は戸惑いながら答えた。



「えっと…、生徒会長も、あやかしの魂のことをご存知なんですか?」

「もちろん!」


「そうなんですね…」

「さあ、スクイ君、私と一緒にいましょう!!」



 ミコト生徒会長は力強く言った。



 生徒会長が近づいてくる。

 少年は、どうしてこんな状況になったのか、混乱していた。反射的に、生徒会長から距離を取ろうとした。危険な状況かもしれない。そう思うと、不安が少年を襲っていた。


 

 その時、野球部の生徒が声をかけてきた。

 生徒は恐る恐る尋ねていた。



「あの、すみません、生徒会長……。グラウンドの利用についての話はまだですか?」


「ああ、ごめんなさい。じゃあ、これから話しましょう。スクイ君、ちょっとそこで待っていてね!」



 ミコト生徒会長はそう言っていた。


 野球部との会話が始まると、少年はすぐにその場を離れることにした。


 これ以上彼女と関わるわけにはいかない。少年は学校の裏手にある秘密のダンジョンへと向かった。

 ダンジョンに入ると、誰にも見つからないだろうと思った。



 少年はダンジョンの下の方に歩いていくことにした。

 すると、金槌坊かなづちぼうの声が聞こえてきていた。



あるじ様、これから緊急会議が始まろうとしています…」

「何かあったの? ダンジョンのこと?」


「はい、そうです。詳しいことは会議でご説明できるかと思います……」

 と、金槌坊かなづちぼうの声がした。



 ダンジョンの中を進んでいく。


 暗闇の中を歩いていき、大きなドアを開けることにした。

 そこには金槌坊かなづちぼうの6人の幹部たちの姿があった。



 ダンジョンで何かが起きたらしい。



金槌坊かなづちぼうA「おお、あるじ様、来ていただけるとは思ってもいませんでした。さあ、これから会議が始まりますぞ!!」


金槌坊かなづちぼうB「まったく、分析もできていないというのに、こんな会議をしたって意味があるということなのか……」


金槌坊かなづちぼうC「馬鹿を言うな。お前は全てを理解できるまで動かないとでも言うのか。そんなことはあり得ない。私たちは問題を解決させなくてはならないのだ!」



金槌坊かなづちぼうD「まあまあ、良いじゃないですか。あるじ様が来たのです。お茶でも飲みながらゆっくりと解決策を決めていきましょう……」


金槌坊かなづちぼうE「ふん、ダンジョンに入った人間なんて殺してしまえばいいんだよ……」



 金槌坊かなづちぼうたちは言い争いをしているらしい。

 会議の大きなテーブルの奥に向かって歩いていく。


 少年は椅子に座ることにした。



金槌坊かなづちぼうF「皆さん、落ち着いてください。言い争いはやめてください。あるじ様が来たのですよ。これからダンジョンで起きたことを話し合わなくてはなりません。突然、ダンジョンを訪れる人間たちに私たちの姿が見えるようになってしまったのです……。その対応策を私たちは考えなくてはならないのです」


 数日前から、ダンジョンにきた人間たちが金槌坊かなづちぼうの姿が見えるようになったらしい。その問題をどうするかという話をしていた。



金槌坊かなづちぼうC「原因? そんなこと、お前だってわかっているだろ?」

金槌坊かなづちぼうF「はて、何のことです?」


金槌坊かなづちぼうC「黒い石だよ。あの黒い石を壊した時、世界には妖力が満ちた、そのことぐらい知っているだろ。あれがすべての原因だよ!!」


金槌坊かなづちぼうA「ああ、黒い石か……」


金槌坊かなづちぼうB「待て、憶測で話をしないほうがいい。むしろ、すべてのことに原因があると考えることのほうが間違っているかもしれないのだからな……」



金槌坊かなづちぼうF「まあ、そうですね。いま、私たちが抱えている問題の話をしましょう。私たちの姿が人間に見えるようになってしまったこと。その対策を練らなくてはならないのです」


金槌坊かなづちぼうE「その問題はどうしようもないだろ…。人間達を追い出せばいいんだよ!」


金槌坊かなづちぼうF「いえ、そんなわけにはいきません。ぼくから一つの提案があります。あやかしは人間たちを騙してきました。だからこそ、妖力を使ってモンスターを作るのはどうでしょう? ダンジョンをモンスターで埋め尽くすのです」


金槌坊かなづちぼうB「そんなにうまくいきますかね?」


金槌坊かなづちぼうF「わかりません…」


金槌坊かなづちぼうA「あるじ様、いかがでしょうか?」


 とっさに振られて、少年はびっくりした顔をしていた。

 何て答えたらいいんだろうか……。


「え、まあ、モンスターってカッコいいと思うけど……」



 その声が聞こえて、金槌坊かなづちぼうが拍手をしていた。

 金槌坊かなづちぼうたちの喜んでいる姿を見ると、ちゃんと聞いていなかったとは言えなかった。

 

 

 少年は金槌坊かなづちぼうたちを見つめていた。

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