第17話 林の攻防
「ギャアァァァァッ!!」
突然、血を吐くような悲鳴が響き渡った。
咄嗟に、ジェマもリカルドも離れて、身構える。
「た、助けっ! ひああっ!」
その方向から、初老の男が、緩い坂に足をもつらせながら、駆け込んで来た。
城のふもとで
すぐさまジェマが駆け寄るが、その寸前で、商人は足を取られて倒れ込む。
背中が横一線に斬られていた。
「おいっ! しっかりしろっ!」
リカルドが商人を助け起こし、木の陰に連れて行く。
ジェマは自分の頭にあった
「・・・これはこれは、
その声に、ジェマがゆっくりと振り返る。
商人の弟子と言っていた男が、血に濡れた剣を下げて立っていた。
「お探し申し上げておりましたよ。さぁ、私どもと一緒に来て下さい」
商人の弟子は、仰々しいお辞儀をして見せる。
弟子の背後には、見知らぬ大柄な男が二人ほど立っていた。
男たちの濁った目が、真っ当では無い所業を繰り返してきたと語っている。
この二人が、商人が昨夜出会った「物盗り」であり、木の妖精が見たという、「血の匂いがする者たち」なのだろう。
警護の男の姿が無いが、最初に聞いた悲鳴が、恐らく・・・。
「・・・貴様、師匠を斬ったのか?」
ジェマの問いに、弟子は甲高い笑い声で答えた。
「師匠! 確かに師匠でした! 役には立ちませんでしたがね・・・」
後ろ二人の男も、身体を震わせて笑っている。
「ヴェルテラの城で長く宝飾を商って、族長の信頼も
弟子はジェマを見て、ニヤリと笑う。
「ああ、でもこうして、長姫に会わせてもらえた事は、感謝しなければ・・・さぁ、姫、一緒に来て下さい」
と、血で汚れた手を、ジェマに向けた。
「わたしをどうするつもりだ」
「どうもしません。あなた様の身柄と引き換えに、私どもが欲しい物を頂くだけです。お父上もお母上も、あなた様をそれは大切になさっているようですから・・・」
弟子の男は薄暗い笑みを浮かべて、粘るような視線でジェマを眺める。
「卑怯者めが・・・」
ジェマのつぶやきに、
「・・・その口が言うか」
リカルドが冷静に指摘した。
「リカルド、すまないが一人任せていいか?」
ジェマの小声に、リカルドは目線だけを向ける。
「すぐに済ませて、援護に行く」
言って、ジェマは低い姿勢のまま、弟子へと飛び込んだ。
すれ違いざま、抜き放った腰の短剣で、相手の右手を切り裂く。
「ウワァァァッ!」
手の甲から鮮血が噴き上がり、商人の弟子の手から剣が落ちた。
それを振り返りもせず、ジェマは弟子の後ろの男めがけて、刃を切り上げた。
「チッ!」
物盗りの男は、咄嗟に抜いた剣で辛くも受け止める。
すかさず、ジェマは物盗りの首を狙って、切り払う。
それも寸前でかわされ、
くるっと身体を
「ケッ・・・、とんでもねぇお姫様だ」
吐き捨てるように言って、物盗りの男は、剣を構えなおす。
身体つきに相応しく、
ジェマも油断無く短剣を構え、敵を見据えた。
「けどよぉ、そんな得物じゃあ、威力も届く範囲も俺の剣が勝っているぜ、なぁどうする、お姫様」
頭上から振り下ろされる剣を、ジェマは短剣で受け払って、横へ逃れた。
間髪入れず、ジェマの空いた脇の下をめがけ、剣が振り上げられる。
腕の根元から斬られる寸前、後ろへ飛び退いて、避ける。
それを追って突き出された剣先を、ジェマの短剣が弾いた。
「つっ・・・!」
相手の剣を受け続け、ジェマの手に痺れが走る。
それに気づいた物盗りの男は、縦に横に剣を振り回すようにして、繰り出してきた。
大きく振る事で勢いがついた剣は、威力が増して、ジェマは短剣ごと弾き飛ばされそうになる。
とうとうジェマは、両手で短剣を握っていた。
それを見た相手が、ニタリと笑う。
「死ねっ!」
物盗りの男は、ジェマの短剣ごと胴体を
To be continued.
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