ここにきて勢ぞろい
「ちょっと電話……」
バチバチの二人にボソっとそれだけ言って、席を離れる。
『お、
「朝から大変な騒ぎに巻き込まれている気分ですね……」
『ははは。その感じだと、
「もしかして
『確実ではないが、おそらくそうなるだろうとは思っていてな。それでなんだが、実は私も今、祐川の家の前にいるのだ。ドアを開けてくれないか?』
「……マジですか?」
ここに矢鋭咲先輩まで来たら、さらに騒がしくなってしまうのでは……
『ドアを開けてみればわかる』
恐る恐るドアを開けると……
案の定そこには、スマホを耳に当てる矢鋭咲先輩がいて。
「助けにきてやったぞ」
「ありがとう……ございます……どうぞ上がってください……」
もう不安しかない……が、ここまで来た先輩を追い返すわけにもいかず、一応入れる。
「あれ~?レオちゃんも来たの~?」
「レオって……えっと、あなたは……」
「祐川妹と会うのは初めてだったな。
食事中の
それを玄関から、少し遠めに見る。
「蒼で大丈夫です。多分、矢鋭咲さんもいろいろ話を聞いてると思いますが……」
「ということは、そっちもいろいろと聞いているようだな」
「はい。まあ……」
あれ?
なんか既に、この二人もバチバチいってるような……
「ところでさ~、レオちゃんが今まで通り、レンくんのことを祐川って呼んでたら、アオちゃんと区別できなくない~?」
「た、確かにそれはそう……だが……」
ちらっとだけ、恥ずかしそうにこちらをみる矢鋭咲先輩。
思わず心臓が高ぶってしまう。
「ほら~、レオちゃんから言いなよ~」
「じゃ、じゃあ……
……
ぼそっとだけ、でもハッキリと。
目を見たり、見なかったりして。
「え、ええっと、なんですか……怜央先輩……」
「……よ、よし!これでいいな!これからはこの呼び方でいくぞ、蓮!」
「は、はい!怜央先輩!」
無理やり声を大きくして、気を紛らわす俺と矢鋭……怜央先輩。
それを微笑ましく見る見崎と……
思いっきり睨むことで、黒いオーラを送り付ける蒼。
なんかごめんなさい……
「お兄ちゃんと矢鋭咲先輩はどういう関係なんですか?」
「だから、さっきも言った通り友達……」
「今はお兄ちゃんじゃなくて矢鋭咲さんに聞いてるの」
「ア、ハイスミマセン……」
そんな顔で睨まれたら、俺としては隅っこで小さくなっているしかないわけで。
女子三人の座る机をさらに遠目で見る。
「今はまだ、蓮の言う通り普通の友達だ。あと、私にとっての恩人だな」
「今は……まだって……」
「ちなみに~、レオちゃんとレンくんはこんなことをする関係だったりして~……」
見崎はスマホの画面を、隣に座る蒼に見せる。
「お兄ちゃん……何してんの……」
「ちょっと待て!見崎は何を見せた⁉」
まさか、あの時に撮られた……
「え~?ただの写真だけど~?」
そう言いつつ、ただの写真とやらの写った画面を俺の方に向けてきて。
そこには、恥ずかしそうに、何かを我慢するように胸を突き出す怜央先輩。
そして、その胸に向かって手を伸ばす俺が映っていた。
つまり、まだ生徒会の問題が解決する前に取られた写真で。
「これは、蓮は胸が大好きなヤツだという決定的な証拠だな」
さすが、加害者である怜央先輩は笑っている。
「誤解だ!見崎と怜央先輩に騙されてこうなっただけだから!」
「ふーん……まあいいや」
「いや俺がよくないから!この写真は本当に誤解だから!」
誤解なのはこの写真であって、胸が大好きなのは否定できなくて……だって胸の嫌いな男子はいないから……って、今はそういう話じゃなくって。
「そんなこと言いつつ、アオちゃんはちょっと嫉妬してたりして~」
「なんでそうなるんですか」
「え~?だって~、この中だとアオちゃんだけ胸ないからさ~。こういう展開に憧れてると思って~」
「確かに私はまな板ですけど、お兄ちゃんはこういうチッパイの方が好きな変態ロリコン野郎なんですよ?宮下さんは知らなかったんですか?」
「ちょっと待てい!いつ俺がそんなこと言った⁉」
見崎を攻撃するついでみたいに俺を攻撃するのはやめてくれ……
ていうか俺、そんなこと言った覚えは本当にないぞ……?
「え~?じゃあアオちゃんは、胸をチラチラ見られたことあるの~?」
「いやだから……」
これに関しては強く否定できないのが、なお俺の心をえぐってくる……
「そういう宮下は、胸を触られそうになった経験はあるのか?蓮は私のようなそこそこある胸を触りたがるのだぞ?」
「怜央先輩まで参戦しないでよ!俺を助けに来たんじゃないの⁉」
見崎がふざけだすと、ノリがいい怜央先輩はいつも乗っかるんだよな……
その結果が例の写真につながってしまったわけで。
「私なんて、お兄ちゃんに胸を見られて鼻息荒くされたけど?」
「それは蒼が裸だったから……じゃなくて自慢げに言うことじゃないから!あとさすがの俺も鼻息を荒くはしてないよ⁉」
実際、そう思われても仕方ないような表情と言動だった可能性は否定できないが。
「じゃあさ~、ここでレンくんに決めてもらおうよ~。チッパイか~、そこそこ大きい胸か~、ちゃんと大きい胸なのか~……私たち三人のどのオッパイに食いついくのかをさ~。最初に触られた人の勝ちってことで~」
「まあ、お兄ちゃんに触られても減るものじゃないし……」
「この際、致し方ないな」
三人は立ち上がって並び、胸を見せつける。
それぞれちょっぴり恥ずかしそうに顔を赤くして、ソワソワしながら。
「ちょ、え?これ、夢か?なにが起こってんだ?」
「夢じゃないよ~。レンくんが触らないことには終わらないよ~?」
「ちょっとだけ、恥ずかしいから……早くしてよ……」
「ま、まあ蓮に触られる程度、私はなんともないがな!」
俺はいったい、どうすれば……
いや、きっとここは漢を見せるとこだ。
そうだ。触ってとお願いされているのだ。
一人の漢として、触らないわけにはいかない。
選ばないわけには……いかないだろ!
必死の覚悟で伸ばした手の先には……
「え、うそ、ちょ、お兄ちゃ」
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