陰謀だって、衝動であって。

 一方、誰もいなくなった夜の公園では、一人、戻ってきた人と、一人、隠れていた人が出てきていた。


「レオちゃ~ん、どこいるの~?」

「……気づいていたのか」

「ふふふ、まあね~。レンくんはもう帰った~?」

「帰ったが……祐川ゆうかわがいることにも気づいていたのか?」

「あ、やっぱりいたんだ~。聞かれてたって思うと、結構恥ずかしいな~」

「……すまん。私が誘ったのだ。祐川に非はない」

「そうだろうね~。レオちゃんったら~、どこでやるかとか、何時にやるのかとか、しつこく決めようとしてたから~、な~んか怪しいと思ってたんだよね~」

「そんな時から疑われていたとはな……まったく、宮下みやしたに隠し事は通用しないか」

「も~。ウソは泥棒の始まりだよ~?」

「……それを宮下が言うのか?



 こうして私と仲良くしているのも、嘘だというのにか?」



「……ふふふ。レオちゃん、それをわかっている割に怒らないね~」

「やはりな。祐川妹と祐川を少しでも引き離すために、私を利用したのだろう?」

「どうして、そう思ったのかな~?」

「宮下が私に声をかけたのは、祐川妹が引っ越してきた次の日だ。

 そして、生徒会の問題を祐川一人に解決させ、私と祐川の関係を築くと同時に、祐川妹との時間を減らす。

 腹を割って話そうなどと言ったのも、私と親睦を深めるためなどではなく、私が祐川へ恋心を抱いているかどうか……ライバルかどうかの、明確な答えを知りたかった。だからこそ、その部分はやけに多く質問してきたのだろう?」

「へえ~……ふふふふ。まったくさ~、レオちゃんは頭がいいから困っちゃうよね~。

 でも~、一つだけ間違ったとこがあるよ~。それはね~……」



 眼が、開いて。

 一本だけの街灯が、現れた二つのエメラルドに光を送り。

 吸収し、反射して、キラキラと煌めいて。



「私、最初からレオちゃんのこと、ライバルだと思ってないんだよね~」



「……そうか」


「正直、レオちゃんはササキくんのことが好きだと思ってたんだけどね~。

 まあ~、もしもそれが勘違いだったとして、レオちゃんがレンくんのことを好きになっても~、私に勝てるとは思ってないけどね~」

「私は、近くの人よりも、突然現れたヒーローの方を好きになる人だったというだけだ。

 そして、宮下になんと言われようと、私は祐川の事を、私を救ったヒーローを諦めたりはしないさ」

「それ~、私の思うツボだけどね~」

「わかっている。

 だがな、宮下。



 それで終わる恋心なら、とっくに祐川妹や宮下に譲っている」



「……あ~……本当に~……まったくさ~、レオちゃんはカッコいいね~。それでいて可愛いよ~。

 それにしても、そこまでわかった上で、よく私の前でそんな顔ができるよね~」

「確かに、宮下は最悪なやつだ。

 しかし、ヒーローと私をつなげたのは宮下だ。

 それに、私のことを心配した気持ちや、祐川が私を気にしていたことを知った上で、祐川のためにやったという思いが、少なからず宮下の中にあると信じているからな」

「そっかぁ~……な~んか、レオちゃんがまぶしいな~……



 ……こんなに嘘まみれで嫉妬まみれの私とは、正反対にいるみたいだよ~……ほんとに……」



「一つ疑問なのは、そんな宮下が同棲を諦めたことだ。よくは知らないが、同棲には重要な意味があったのだろう?」

「諦める~?ふふふ。諦めてなんかないよ~。人生は長いし~、ここは一旦アオちゃんに譲るのが最善だよ~。

 それに同棲はできなくても~、家には入れてもらえると思うんだよね~。だから、今はいいかな~って」

「はは……まったく宮下というのは、最悪なやつだ………



………羨ましい限りだがな……」

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