三分前
……とは言ったものの、結局俺は、
それは、母さんたちの住む家……ではなくて、その近所にある、ブランコと鉄棒と滑り台くらいしかない小さな公園。
俺は今、その公園を囲っている生垣に隠れている。
「
それも、
「それは大丈夫なんですけど……これ、本当に来てよかったんですか?」
「安心しろ。祐川は、私に無理やり連れてこられたことにすればいい。それに……
「先輩……相当やられたんですね……」
「もとより、こんな暗いところで見つかるとは思えないがな」
今は午後八時の五分前という、 既に夜ご飯を食べ終え、外は真っ暗な時間。
公園に立つ一本の明かりのみが煌々と光っていた。
ちなみに、現在俺と矢鋭咲先輩のいる位置はちょうど木の陰で、本当に真っ暗だ。
ことの経緯を説明すると……
見崎が蒼と会うことなった後、その作戦会議が行われた。
「少しでも長くレンくんのいない生活を送ったほうが、アオちゃんには効果あると思うんだけど~」
という見崎の提案と、家の前はさすがに母さんたちに迷惑だろうという三人の考えによって、午後八時に近所の公園ということになった。
その後、解散してすぐに矢鋭咲先輩から、
『一緒に宮下を見守りに行かないか?もちろん口出しはしないし、姿を見せずに見守るだけだが』
というメッセージがきて、当然俺は承諾。
七時半に矢鋭咲先輩が俺の家に来ることになり、今に至る。
「それにしても矢鋭咲先輩、いつの間に見崎と親睦を深めていたんですね」
今日の朝に三人で話した時の、二人の会話のスムーズさ、そしてそのやり取りに、驚きを感じていた。
「昨日、宮下と二人で遊んだ際に、宮下のことをいろいろ知れてな。おかげで、距離が縮まったというわけだ」
「あの、女子二人だけで腹を割って話そうっていうやつですか?」
「ああ。そんな名目のおかげで、私ばかり恥を晒すことになったがな……」
バキッ!
目の前に生えている草木の枝が思いっきり折られる。
何回も思ったけど、相当ひどい目にあってるよね矢鋭咲先輩……
「……と、そんな余計な話をしている場合ではないぞ」
そんな先輩の指さす方には、蒼の姿が。
今は八時の二分前だ。
蒼はちらっとスマホを見つつ、無表情のままブランコに座る。
「あれが噂の祐川妹か……」
「見崎も来ましたよ」
蒼の来た方とは反対にある入り口から見崎もやってきて、蒼に近づいていく。
何事もなく、すんなり終わればいいが……
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